薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2010年3月)

〔医薬品一般〕

Q:性器クラミジア感染症,新生児のクラミジア結膜炎の治療薬は?(薬局)

A:

クラミジアは細菌とウイルスの中間にあたる微生物で,細菌と同じDNAとRNAを有し,ウイルスと同じく細胞寄生性である。

(性器クラミジア)
性行為により感染し,男性では尿道炎や精巣上体炎,女性では子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患を発症する。マクロライド系,フルオロキノロン系,テトラサイクリン系が用いられるが,確実な服薬履行とパートナーが感染陽性であれば同時に治療をしないと治療は不完全となり再発する。処方例は下記の通り。

アジスロマイシン(ジスロマック)1,000mg 1×1日間
レボフロキサシン(クラビット
)    500mg 1×7日間

(新生児クラミジア結膜炎)
子宮頸管にクラミジア感染を持つ母親からの産道感染によって起こる。潜伏期間は5〜12日で,眼瞼腫脹,結膜充血,多量の粘液膿性〜膿性眼脂などで発症する。
マクロライド系(エコリシン™),フルオロキノロン系(タリビッド™)の眼軟膏を1日5回,6〜8週間投与する。点眼薬なら1時間毎の頻回点眼。有効薬剤でも1日4回,2〜3週間の投与では治癒しない。

Q:マイテラーゼ™が処方されている患者に抗コリン薬を併用することがあるか?(薬局)

A:

マイテラーゼ™(臭化アンベノニウム)はコリンエステラーゼ阻害薬であり,重症筋無力症に使用される。副作用としてムスカリン様作用症状による下痢,唾液分泌亢進,腹痛などが起こることがあり,予防のために硫酸アトロピンなどの抗コリン薬を併用することがある。

Q: 帯状疱疹後神経痛(PHN)にアンプラーグ™を飲んでいるが,効果があるか?(一般)

A:

アンプラーグ™(サルポグレラート)はセロトニン5-HT拮抗薬で,血小板凝集抑制作用・血管収縮抑制作用等を有し,末梢循環改善作用により慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍,疼痛,冷感の改善等に使用される。PHNの多くは入浴や温めることである程度は軽快し,寒冷暴露により悪化することから,疼痛部位の血流を改善することにより鎮痛効果を発揮すると考えられている。サルポグレラート200〜300mg/日で改善した報告がある(保険適応外使用)。

Q: 円形脱毛症の治療で,SADBEやDPCPのアセトン溶液を用いた治療方法とは?(薬局)

A:

円形脱毛症の発症機序の詳細は不明であるが,自己免疫疾患と言われており,治療のひとつとして局所免疫療法が行われている。かぶれを起こしやすいSADBE(Squaric acid dibutylester)やDPCP(2,3-diphenylcyclopropenone-1)のアセトン溶液を1〜2週間に1回脱毛部に直接塗布し,人工的に接触皮膚炎を繰り返し誘発させ,病変部に浸潤するリンパ球の機能を抑制し発毛を促す方法である。難治な場合でもかなりの有効率を示しているが,中止すると再び脱毛し,治療を繰り返し何年も行うこともある。また,小児の全頭型や全身型には効果が低い傾向がある(保険適応外使用)。

Q:ジギトキシン錠0.025・0.1mgからジゴシン錠などへ切り替え時の対応量は?(薬局)

A:

(局)ジギトキシン錠0.025mg,0.1mgは薬価基準に収載されているが,ジギトキシン錠「シオノギ」0.025mg・0.1mgは2010年3月31日で経過措置が終了したため,市場には存在しない。ジギトキシンの半減期は4〜6日と長いので,血中濃度を測定しながら,ジゴキシン錠などを少量より開始し,用量を調節する。

Q:アトピー性皮膚炎とセラミドの関係は?(一般)

A:

アトピー性皮膚炎の患者の皮膚は保湿成分や角質層の脂質(特にセラミド)が減少している。セラミドは炭素数16〜20の長鎖アミノアルコールであるスフィンゴ脂質の一種で,皮膚角質層の細胞間脂質の主成分として40〜60%存在し,特に皮膚表面において内部からの水分蒸発を防止する保湿や,外部からの刺激を阻止するバリア機能を有する。セラミドが減少してドライスキンとなりバリア機能が低下すると,アレルゲンや微生物が侵入して炎症が起こりやすくなる。

〔安全性情報〕

Q: 偽膜性大腸炎を起こしやすい抗菌薬は何か?(薬局)

A:

偽膜性大腸炎は,直径2〜5mmの丘状から半球状の透過性ないし白色調の偽膜を形成する腸炎で,抗菌薬の投与により正常腸内細菌叢が破壊され菌交代現象が起こり,腸管内の Clostridium difficile(CD)の増殖が加速し,放出される毒素(Toxin A,B)により発症する。CDは偏性嫌気性グラム陽性桿菌で芽胞を有し,この芽胞は胃酸にも強く,口から容易に腸まで到達することが知られており,偽膜性大腸炎は院内感染のうち最も頻度が高い疾患とも考えられている。Toxin Aは腸管毒でサイトカインを遊離し,水分の過分泌や腸管の出血壊死を起こし,Toxin Bは細胞毒で細胞骨格を破壊する。偽膜性大腸炎は全ての抗菌薬が原因となりうるが,広域ペニシリン,第2 ・ 3セファロスポリン等の広域抗菌薬や,複数の抗菌薬を使用している場合に発症リスクが高くなる。

〔行政・保険・その他〕

Q:HIV感染患者が身体障害者手帳を取得して受けられる医療費助成制度は何か?(薬局)

A:

(国の自立支援医療)HIV感染症の治療における抗HIV療法,免疫調節療法,その他合併症(日和見感染症)の予防や治療などHIV感染に対する医療に限り,所得に応じた自己負担がある。18歳以上は更生医療,18歳未満は育成医療となり,18歳未満は手帳は不要である。自立支援医療の利用は都道府県が指定した医療機関および薬局に限られる。

(都道府県の重度心身障害者医療費助成制度)ある一定級以上の障害者手帳を持ち,所得要件がある。すべての病気の治療に適応され,医療費が無料あるいは軽減されるが,助成システムは都道府県により異なる。

Q:麻薬の注射をアンプル剤のまま処方せんにより患者に交付できるか?(薬局)

A:

麻薬注射剤を患者に交付する時,患者または患者の看護にあたる家族等に直接手渡す際には,薬液を取りだせない構造で麻薬施用者が指示した注入速度(麻薬施用者が指示した量および頻度の範囲内で患者が痛みの程度に応じた追加投与を選択できる「レスキュー・ドーズ」として注入できる設定を含む)を変更できないものにする。ただし,患者等の意を受け,さらに麻薬施用者から医療上の指示を受けた看護師等が患者宅へ麻薬注射剤を持参し,患者に施用を補助する場合(麻薬小売業者が患者宅へ麻薬注射剤を持参し,麻薬施用者から医療上の指示を受けた看護師に手渡す場合を含む)はこの限りではない。なお,麻薬小売業者が患者等の意を受けた看護師等に麻薬を手渡した時点で,患者へ麻薬を交付したことになる。不正流通等防止のため,患者等の意を受けた看護師等であることを書面,電話等で確認する。

Q:湿布をひとりで背中に貼る時の道具はあるか?(薬局)

A:

「ひとりでペッタンコ」という製品が1,000円前後で市販されている。また,社会福祉法人北九州市福祉事業団福祉用具プラザ北九州では,プラスチック製の布団たたき,スポンジ,マジックテープを使用した手作り湿布貼り具の作り方を紹介している。

Q:ドーピングの2010年禁止表国際基準(日本語版)は何を見たら良いか?(薬局)

A:

日本アンチドーピング機構(JADA)のホームページに掲載されている。
http://www.anti-doping.or.jp/downloads/prohabited_list/2010_ProhibitedList_JP.pdf


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