質疑応答
質疑・応答をご覧になる方へ
福岡県薬会報に掲載している「情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介」事例です。
回答はその時点での情報による回答であり、また紹介した事例が、すべての患者さんに当てはまるものではないことにご留意ください。
県民の皆様は、ご自身の薬について分からなくなったなどの場合には、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。相談しやすい“かかりつけ薬局”を持っておくのがよいでしょう。
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心房細動でワルファリン服用中にPT-INRが急激に上昇した。その要因は?(医師)
検査値・検査方法 |
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年月 | 2024年5月 |
PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)の至適治療域は「2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」において、以下のように設定されている。
・脳梗塞の既往がない一次予防かつ血栓症リスクの低い患者:年齢によらず1.6~2.6
・脳梗塞の既往を有する二次予防の患者やきわめて血栓症リスクが高い患者:70歳未満 2.0~3.0、70歳以上 1.6~2.6
ワルファリン服用中にPT-INRの上昇は、以下の要因が考えられる(表)。また、ワルファリンの増量、飲み間違いによる過量服用、ワルファリンと相互作用のある医薬品や食品・健康食品の摂取、下痢や腸における脂肪吸収不全(ビタミンKの吸収低下)なども上昇の要因となる。ワルファリンは血中アルブミンとの結合率が高いので、血中アルブミンが減少するとワルファリンの血中濃度が高くなるおそれがある。
肝疾患 | 以下の理由によりワルファリンの感受性が増加していると考えられる。 1)肝で産生されるビタミンK依存性血液凝固因子の合成能が低下している。 2)ワルファリンの代謝は肝で行われるため、肝疾患ではその代謝が低下する。 3)閉塞性黄疸、胆道瘻では、胆汁中へのワルファリンの排泄障害や胆汁分泌不全による消化管からのビタミンK吸収障害を伴う。 |
腎疾患 | ワルファリンは体内からの排泄速度が遅いため、腎障害があるとさらに排泄が遅延し、作用が長時間持続するので出血の危険が増大する可能性がある。 |
うっ血性心不全 | 肝代謝酵素活性低下により、また肝のうっ血が進行し凝固因子の産生が低下することによりワルファリンの感受性が亢進する。 |
悪性腫瘍 | 血液凝固能の亢進により血栓傾向となる一方で、腫瘍関連出血を生じることがある。また、全身状態や摂食状況の変化に伴う血液凝固能の変動を生じることがある。 |
甲状腺機能亢進症 | 病態の変化又は治療過程で甲状腺機能が正常化し、血液凝固能が変化することがある。甲状腺ホルモンはプロトロンビン、第Ⅶ因子、第Ⅹ因子の代謝回転を促進するため、甲状腺機能の変動は抗凝固薬の効果に影響すると考えられる。 |
CYP2C9の遺伝子多型 | ワルファリンは光学異性体(S-ワルファリン、R-ワルファリン)のラセミ体で、S-ワルファリンは主にCYP2C9で、R-ワルファリンは主にCYP1A2、CYP3A4により代謝される。CYP2C9の遺伝子多型などの場合は、クリアランスが1/3~1/10などとなることがある。 |