上手な手洗い方法
皮膚表面の細菌
手指に存在する細菌は,皮脂腺や汗腺の常在細菌であるStaphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌),プロピオバクテリウム,Micrococcus等と,一過性細菌であるKlebsiella,SerratiaおよびPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)等に分けられる。
常在細菌は皮膚組織に定住しており,約10~20%は皮膚表皮のみならず内部(皮脂腺や汗腺)で生息・増殖している。一般に弱毒性であるが,術後,静脈・導尿カテーテル装着時や免疫機能が低下している時には感染症を引き起す危険性がある。除菌は石けんと流水による手洗いでは不十分なので,消毒薬を用いて殺菌する必要がある。
一過性細菌は皮膚表面に外界から数時間だけ付着する細菌であり,接触により他に移行することもあり,医療従事者を介して院内感染を引き起す危険性がある。一過性細菌の皮膚上生存期間は,通常,24時間以内であり,石けんと流水による20~30秒間のもみ洗いでほとんど取り除くことができる。
図1 洗い損ないやすい部分(Taylor,L.J)
上手な手洗い方法
目的に応じて流水のみ,流水と石けんや消毒薬,消毒薬のみによる手洗いがある。日常生活における食事の前やトイレの後などは,市販の石けんでもかなりの除菌効果が得られる。特に病原微生物の汚染の可能性がある時や,易感染患者に接触する時などには消毒薬を使用する。
上手に手を洗うには,指間など洗い損ないやすい部分には特に注意して(図1),もみ洗いの基本に従って少なくとも10~20秒間行う(図2)。手洗い後は使い捨てのペーパータオルなどを用い,布タオルなどからの逆汚染を防ぐことも大切である。
図2 もみ洗いの基本
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