〔医薬品一般〕
Q:糖尿病の診断基準が新しくなったのか?(一般) |
日本糖尿病学会は新たな糖尿病の分類と診断基準を策定し(2010年7月1日施行),糖尿病型の判定基準にHbA1c値の基準が設定され,積極的に取り入れられるようになった。判定基準は,初回検査で@ 空腹時血糖値≧126mg/dl,A 75gOGTT2時間値≧200mg/dl,B 随時血糖値≧200mg/dl, C HbA1c≧6.5%(HbA1c(JDS)≧6.1%:従来のJapan Diabetes Society (JDS)値に0.4%を加えた値)のうちいずれかを認めた場合は,「糖尿病型」と判定する。別の日に再検査を行い,再び「糖尿病型」が確認されれば糖尿病と診断する。但し,HbA1cのみの反復検査による診断は不可とする。また,血糖値とHbA1cの同日測定を推奨し,同一採血で両者(@〜BのいずれかとC)が確認されれば,初回検査だけでも糖尿病と診断可能で,より早期からの診断・治療が促されることとなった。 |
Q:強迫神経症で向精神薬を服用している。最近,水を1日4L以上飲み,体重も増え,また朝と夕方では体重が2〜3kg違うが,なぜか?(一般) |
多飲傾向(多飲症)は精神疾患患者にはしばしば見られ,水中毒を生じる。原因として,@ 向精神薬(とくに定型抗精神病薬)による副作用の口渇により飲水が習慣化し,強迫的に飲水が増える,A 精神疾患の病態(不安,焦燥等)から飲水が習慣化して多飲傾向となり,さらに精神症状が悪化して悪循環となる,B 向精神薬の副作用により抗利尿ホルモンの分泌機構が障害される(SIADH)等が考えられる。多飲により電解質バランスが崩れて低ナトリウム血症が生じると,軽症では疲労感,嘔吐,浮腫,重症では痙攣,錯乱,意識障害等が起こる。 |
Q: 加工ブシ末が帯状疱疹後神経痛の患者に1日6g処方されているが,多くないか?(薬局) |
ブシ(附子)はキンポウゲ科オクトリカブトまたはハナトリカブトの塊根で,鎮痛作用,温熱作用,強心作用,利尿作用,新陳代謝賦活作用等を有し,減毒したブシ(加工ブシ末,修治ブシ末,炮附子末)が多くの漢方処方に加えて用いられる。常用量は1日0.5〜1.5gだが,症状に応じて漸増し,効果・副作用がなければ1日4.5〜6gまで用いられる。ただし,加工ブシ末等は減毒されてはいるが,過量投与や誤投与の場合は,心悸亢進,体の火照り,のぼせなどが起こり,中毒症状としては口唇・舌のしびれ,悪心,不整脈等が服用30分前後で出現するので注意する。 |
Q: 耳鳴りの治療法でTRTとは何か?(薬局) |
TRT(Tinnitus Retraining Therapy:耳鳴り再訓練療法または耳鳴り順応療法)は,医師のカウンセリングと補聴器様のノイズジェネレータTCI(Tinnitus Control Instrument)を用いて行われる療法である。TCIから発生する治療音「心地よいノイズ」を耳鳴りが消えない程度に保ち,耳鳴りへの意識を下げ,自然なものとして体に順応させることで,大脳辺縁系における耳鳴りに対する過敏性を減らすことが可能となる。耳鳴りをなくすのではなく気にならなくする治療法で,効果がでるまでに6ヶ月くらい要する。 |
Q:検査項目のKL6とは何か?(薬局) |
KL6(シアル化糖鎖抗原KL6)は,呼吸細気管支上皮細胞,気管支腺細胞に発現する。特に間質性肺炎ではK型肺胞上皮細胞の過形成のため,KL6の発現量が多くなり,血中で高値を示す。KL6は活動期の間質性肺炎と非間質性肺炎の鑑別,間質性肺炎,過敏性肺臓炎,放射性肺臓炎などの活動性の評価,肺の線維化をきたす一部の感染症の診断に有用なマーカーで,肺癌(腺癌,扁平上皮癌),膵癌,乳癌などでも増加する。 |
Q:Mohs(モーズ)軟膏の適応と調製法は?(薬局) |
Mohs軟膏は切除困難な皮膚悪性癌等の出血や感染,浸出液や悪臭に対しQOLを改善するための緩和治療に用いられる(保険適応外)。主成分は塩化亜鉛で,塩化亜鉛が潰瘍面の水分でイオン化し,亜鉛イオンのタンパク凝集作用により腫瘍細胞や腫瘍血管および2次感染した細菌の細胞膜硬化作用を有する。 処方例(北里大):塩化亜鉛(試薬特級)50g,蒸留水25mL,亜鉛華デンプン(局方品)25g,グリセリン適量。 調製法: ビーカーに蒸留水25mLを入れ,徐々に塩化亜鉛50gを加えていき,溶解するまでスターラーを用いて撹拌する。溶解放冷後,ビーカー中の塩化亜鉛溶解液に亜鉛華デンプン25gを少量ずつ加え,よく混和する。ある程度硬度がでてきたら,乳鉢に移し,亜鉛華デンプンを徐々に加えて,軟膏状にする。調製は保護マスク,保護メガネ,手袋を装着し,塩化亜鉛は腐食性があるので金属は用いない。 |
〔安全性情報等〕
Q: ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬で下肢浮腫が起こったが,なぜか?(薬局) |
下肢浮腫は,ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の末梢動脈における血管拡張作用が静脈での作用に比べて強いため,細動脈の拡張に細静脈の拡張が伴わず,細静脈が拡張する事なく細動脈が拡張して毛細血管血内圧が上昇し,血液成分が血管外に漏出し血管拡張性浮腫が発現すると考えられる。各薬剤に頻度差はなく,継続投与により消失することが多い。症状が継続する場合には減量するか,あるいは細静脈を拡張させるACE阻害薬や反射性の交感神経活性亢進を抑制するβ-遮断薬を併用する。 |
Q: 毛虫に触れてしまったが処置は?(薬局) |
チョウやガの幼虫で一般に目立って毛の多いものを毛虫,毛が目立たないものをイモ虫と称している。大部分の毛虫は無毒だが,有毒毛を有する一部の毛虫に触れた場合に皮膚炎を生じる。有毒毛には毒針毛(どくしんもう)と毒棘(どくきょく)があり,前者はドクガ類(ドクガ,チャドクガ等),後者はイラガ類(イラガ,ヒロヘリアオイラガ等)の幼虫にある。毒針毛は長さ0.1〜0.2mmの微細で,数十万本以上が密生しているため,これに触れると激しい痒みを伴う蕁麻疹様症状や赤いブツブツが多発し,不用意に掻くと毒針毛を更に擦り込み,数が増えて症状を悪化させるので,粘着テープで付着した毒針毛をそっと取るか,水洗いしてから抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬を塗布する。毒棘はトゲが刺さった部位に強い痛みを感じるが,通常は局所を冷やすと1〜2時間で軽快する。翌日以降から赤く腫れてきたらステロイド外用薬を塗布する。 |
〔行政・保険〕
Q:肝炎医療費助成制度で,平成22年4月からの変更点は?(薬局) |
肝炎治療の医療費助成は平成20年度から開始されたが,平成22年4月から事業の拡充が図られた。@自己負担限度額が引き下げられ,世帯の市町村民税課税年額が235,000円未満は1万円,以上は2万円,AB型肝炎に核酸アナログ製剤(ラミブジン:ゼフィックス™,アデホビル:ヘプセラ™,エンテカビル:バラクルード™)での治療を追加,B制度利用回数の制限が緩和され,インターフェロン治療において,医学的に効果が高いと認められる人は2回目の利用が認められるようになった。 |
Q:一般用医薬品のリスク分類の区分リストはどこを見たら良いか?(薬局) |
厚生労働省の一般用医薬品販売制度ホームページに掲載されている。 |
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