〔医薬品一般〕
Q:腎機能の指標に使われる血中シスタチンCとは?(薬局) |
シスタチンC(Cystatin C)は122のアミノ酸からなる分子量13kDの低分子蛋白で,酵素による細胞質や組織の障害を抑え,細菌・ウイルスの増殖を抑制する Cysteine Proteinase Inhibitor のひとつである。全身の有核細胞から細胞内外での環境変化に影響を受けずに一定の割合で産生される。このため血中濃度が一定で,疾患,年齢,性別,筋肉量,運動等の影響も受けにくい。血中シスタチンCは,糸球体で完全に濾過された後,ほとんどが近位尿細管で再吸収されアミノ酸に代謝されるので血中には戻らず,血中シスタチンC濃度は基本的にGFR( glomerular filtration rate:糸球体濾過量)にほぼ依存し,GFRの低下により血中シスタチンC濃度は上昇する。クレアチニン値は高度の腎障害で上昇するが,シスタチンCは軽度〜中等度で上昇するので,腎機能障害の早期診断に有用である。 |
Q:アレルギー性肉芽腫性血管炎[Churg-Strauss(チャーグ・ストラウス)症候群]とはどんな病気か?(一般) |
アレルギー性肉芽腫性血管炎( allergic granulomatous angiitis:AGA)は,発症の数年前から先行症状として気管支喘息やアレルギー性鼻炎がみられ,末梢血好酸球増多を伴って血管炎を生じ,末梢神経炎,紫斑,関節痛・筋肉痛,腹痛・消化管出血(胃・腸の潰瘍),脳硬塞,脳出血,心筋梗塞,心外膜炎などの臨床症状を呈する特定疾患で,何らかのアレルギー性機序により発症すると考えられる。またロイコトリエン受容体拮抗薬の使用後や副腎皮質ステロイド内服剤の減量・中止時に生じることもあるが,明らかな因果関係は証明されていない。症例の50%に好中球に対する抗体が検出され,この抗体が病因に関与していると考えられている。副腎皮質ステロイド内服・パルス療法や,免疫抑制薬で治療するが,治療抵抗性の神経障害に対して高用量ガンマグロブリン静注療法が行われる。約80%は6ヶ月以内に寛解するが,20%は治療抵抗性で,副腎皮質ステロイド単独による完全寛解は難しく,寛解・増悪を繰り返す。このうち10%は重篤で,重症後遺症を残すか死に至る。寛解例でも単神経炎による末梢神経症状の遷延や,血管炎が再発する。 |
Q: 受傷時の破傷風トキソイドと抗破傷風ヒト免疫グロブリンの使い分けは?(薬局) |
破傷風トキソイドは能動免疫で,抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)は受動免疫で直接抗体を与えて生体の抗体価を高める。使い分けは創傷の程度,受傷者の破傷風トキソイド接種歴により異なる。きれいな傷はガラスやナイフによる切傷や擦過傷で,汚染創は土壌や汚物などで汚染された挫創,挫滅創,熱傷,凍傷,銃創,動物による咬創などで,受傷後6時間以上経過したものも含まれる。
*最終接種から5年以上経過していれば投与。 |
Q: インドに出張する患者が腸チフスの予防接種を受けたいらしい,市販品はあるか?(医師) |
腸チフスワクチンは海外では広く接種され,その安全性は確立しているが,国内は未承認で市販はない。一部の医療機関で海外から輸入したワクチンを使って予防接種が行われている。厚労省検疫所のホームページで接種可能な医療機関(検疫所で把握分)を検索できる。 |
Q:周期性ACTH-ADH放出症候群の予防にデパケン™(バルプロ酸)を使うことはあるか?(薬局) |
周期性ACTH-ADH放出症候群は,一定の周期(2〜3週間隔)で長期にわたり嘔吐発作,抑うつ状態,傾眠傾向,唾液分泌亢進を反復する疾患で,発作は数日間持続し,間欠期には異常は認められない。発作に一致して下垂体より副腎皮質刺激ホルモン(ACTH:adrenocorticotropin),抗利尿ホルモン(ADH:antidiuretic hormone)の放出があり,血中コルチゾルが上昇し,高血圧と乏尿,時に低Na血症を起こす。原因は不明だが,ノルエピネフリンおよびドパミン分泌の制御機構の障害による周期的なノルエピネフリン過剰状態の関与や,片頭痛の亜型・Caチャンネルの異常等が関与していると推測される。予防には,抗てんかん薬のバルプロ酸,カルバマゼピン,ゾニサミド,抗ヒスタミン薬のシプロヘプタジン,抗うつ薬のイミプラミン,発作時には抗セロトニン受容体拮抗薬のオンダンセトロン,片頭痛治療薬のスマトリプタン,抗ドパミン作用薬のクロルプロマジンなどが有効である。 |
〔安全性情報等〕
Q:骨粗鬆症でエビスタ™錠を服用しているが,血栓の副作用についてどのような症状に注意しておく必要があるか?(一般) |
静脈血栓塞栓症の初期症状は,深部静脈血栓症では片方のふくらはぎが赤く腫れる(浮腫),ふくらはぎを押すと痛む,肺塞栓症では急に息苦しく感じる(呼吸困難),息切れ,胸痛,全身倦怠感,網膜静脈血栓では急な視力の低下である。このような症状が発現したらすぐに医師・薬剤師に相談する。また,手術後や長期安静期等に入る3日前には本剤の服用を中止し,完全に歩行可能になるまでは投与を再開しない。長時間の航空機等での旅行をする際は,血流のうっ帯を防止するために適度な水分摂取や運動等を行う。 |
Q:フェロミア™を服用する前後にコーヒー等のタンニン含有飲料を飲んでも良いか?(薬局) |
タンニンの鉄吸収への影響は否定されないが,鉄剤の鉄含有量は鉄必要量に比べかなり多く,潜在的に鉄欠乏状態にある患者では,鉄吸収能が亢進していることなどから,同時摂取しても臨床効果への影響は問題にならないと判断されている。ただし,あまり濃いものは避けた方が良い。 |
Q: 健康食品のギョウジャニンニクと医薬品との相互作用はないか?(薬局) |
ギョウジャニンニクは日本で昔から山菜として食された植物で,北海道,東北に多く,行者がこれを食べて修行したという伝承からこの名が付いている。ユリ科ネギ属に属し,ニンニクの仲間ではないが,強いニンニク臭が有り,ニンニクと同じアリインやアリシンを含む。ギョウジャニンニクと医薬品の相互作用の報告はないが,ニンニクには降圧作用,血糖降下作用,抗血栓作用があるので,降圧薬や糖尿病治療薬,抗血栓薬は相互作用が現れる可能性がある。 |
〔行政・保険〕
Q: 改正薬事法(平成21年6月1日施行)で,薬局における一般用医薬品の販売に関する制度に関する事項の掲示事項に「その他の必要な事項(苦情相談窓口等)」があるが,苦情相談窓口はどこか?(薬局) |
一般用医薬品販売制度の実効性を高める観点から,販売方法等について購入者からの苦情を処理する窓口を設ける必要があり,業界団体や医薬品販売業の許認可権限を有している都道府県(薬務課,保健所等)に設置されている(法第9条の3,施行規則第15条の15)。ただし,既存薬局(平成21年6月1日以前開設)は平成24年5月31日まで経過措置期間。 |
close |