赤痢アメーバ症(Amebiasis)は人体寄生原虫の赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による消化器症状を主症状とする腸管感染症。E.histolyticaには栄養型と嚢子型の2つに分けられ,ヒトは成熟嚢子型を経口摂取して感染し,栄養型では感染しない。経口摂取された嚢子型は小腸で脱嚢し,大腸で栄養型が2分裂によって増殖する。
〔症状〕
・腸アメーバ症:下痢(アメーバ赤痢の時はイチゴゼリー状の粘血便,アメーバ性大腸炎の時は血便,粘液便,水様便など多様),腹痛,回盲部の圧痛など。通常ゆっくりと発症し,全身状態は比較的良好で,発熱,末梢血中の白血球増多もない。急激な発症で,脱水症状を伴い重症化することもある。
・腸外アメーバ症:腸壁から侵入した栄養型虫体が肝臓,肺,脳等に血行性移行して病巣を形成したもの,ほとんどは肝膿瘍。
〔感染経路〕
糞便とともに排出された嚢子型で汚染された飲料水や食品,手指などを介して経口感染する。発展途上国への旅行者,男性同性愛者での感染者が多い。感染者の約90%は無症状で糞便中に嚢子型を排出するいわゆる嚢子保有者。
〔治療法〕
メトロニダゾール(フラジールTM内服錠:塩野義)が第一選択薬。アメーバ赤痢・肝膿瘍には1.25〜2.0g/日,分3 毎食後,7〜10日間。アメーバ性大腸炎には1g/日,分3 毎食後,7〜10日間。いずれも保険適応外使用。重症アメーバー赤痢には,メトロニダゾール注射液250mg,その嚢子型駆除にはフロ酸ジロキサニドが「熱帯病に対するオーファンドラッグ開発研究」班より供与される。