薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2004年1月)

〔医薬品一般〕

Q:高マグネシウム血症の症状は?(薬局)

A:
四肢の弛緩麻痺,疲れ,傾眠等の精神神経・筋症状,嘔気・嘔吐等の消化器症状,低血圧,徐脈,不整脈等の循環器症状などがあらわれる。

Q:予定生理がなくても,妊娠検査薬の結果が陰性となるのはどのような時か?(薬局)

A:
妊娠初期で尿中hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)が十分でない場合,胞状奇胎などにより尿中hCGが大量となり反応が起きない場合,胎児異常の場合(胎内死亡等),子宮外妊娠,生理周期が不規則な場合など。

Q:12歳児。以前犬にかまれて,破傷風トキソイドを注射したらしいが,第II期DT(ジフテリア・破傷風)二種混合ワクチンの接種は必要か?(医師)

A:
三種混合ワクチンDPT(百日咳・ジフテリア・破傷風)のI期初回接種とI期追加接種を規定通り済ませていれば,破傷風トキソイドにより,破傷風に関しては15歳くらいまでには十分に免疫状態になっていると推定される。II期の予防接種としてDTの追加接種を行う場合(小学6年時),日本にはジフテリアのみのワクチンはないので,破傷風に対する抗体が非常に高くなるが,超免疫状態になっても問題はなく,DTワクチンの接種が勧められる。ただし,過剰免疫による局所反応などの副反応に注意する。

Q:キサラタンTM(ラタノプロスト)点眼液の用法で寝る前の指示があるがなぜか?(薬局)

A:
キサラタン点眼液はプロスタグランジン2α誘導体で,緑内障,高眼圧治療薬である。ぶどう膜強膜流出経路からの房水流出量を増加させることにより,眼圧降下作用を示す。1日1回の点眼で効果があり,点眼後8〜12時間で眼圧降下は最大となる。ヒト日内眼圧変動のピークは午前10〜12時なので,この時間に薬の効果がみられるよう,夜就寝前の点眼が最も良いと考えられている。

Q:赤痢アメーバ症とは,治療法は?(薬局)

A:

赤痢アメーバ症(Amebiasis)は人体寄生原虫の赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による消化器症状を主症状とする腸管感染症。E.histolyticaには栄養型と嚢子型の2つに分けられ,ヒトは成熟嚢子型を経口摂取して感染し,栄養型では感染しない。経口摂取された嚢子型は小腸で脱嚢し,大腸で栄養型が2分裂によって増殖する。

〔症状〕
・腸アメーバ症:下痢(アメーバ赤痢の時はイチゴゼリー状の粘血便,アメーバ性大腸炎の時は血便,粘液便,水様便など多様),腹痛,回盲部の圧痛など。通常ゆっくりと発症し,全身状態は比較的良好で,発熱,末梢血中の白血球増多もない。急激な発症で,脱水症状を伴い重症化することもある。
・腸外アメーバ症:腸壁から侵入した栄養型虫体が肝臓,肺,脳等に血行性移行して病巣を形成したもの,ほとんどは肝膿瘍。

〔感染経路〕
糞便とともに排出された嚢子型で汚染された飲料水や食品,手指などを介して経口感染する。発展途上国への旅行者,男性同性愛者での感染者が多い。感染者の約90%は無症状で糞便中に嚢子型を排出するいわゆる嚢子保有者。

〔治療法〕
メトロニダゾール(フラジールTM内服錠:塩野義)が第一選択薬。アメーバ赤痢・肝膿瘍には1.25〜2.0g/日,分3 毎食後,7〜10日間。アメーバ性大腸炎には1g/日,分3 毎食後,7〜10日間。いずれも保険適応外使用。重症アメーバー赤痢には,メトロニダゾール注射液250mg,その嚢子型駆除にはフロ酸ジロキサニドが「熱帯病に対するオーファンドラッグ開発研究」班より供与される。

〔副作用・安全性情報〕

Q:タミフルTM(リン酸オセルタミビル)と解熱鎮痛薬との相互作用は?(薬局)
A:
相互作用の報告はない。ただしタミフルTMが処方された患者はインフルエンザなので,以下の薬については注意を要する。

・ アスピリン等のサリチル酸系製剤:15歳未満の水痘,インフルエンザの患者には投与しないことを原則とするが,やむを得ず投与する場合は慎重に投与し,投与後の患者の状態を十分に観察する(ライ症候群との関連性)。
・ メフェナム酸:小児のインフルエンザに伴う発熱に対しては原則として投与しない(インフルエンザ脳炎・脳症との関連性)。
・ ジクロフェナクナトリウム:インフルエンザの臨床経過中の脳炎・脳症の患者には投与禁忌。また小児のウイルス性疾患の患者には投与しないことを原則とするが,投与する場合には慎重に投与し,投与後の患者の状態を十分に観察する(ライ症候群との関連性)。

Q:注射薬(ペニシリン系,セフェム系等)によるアナフィラキシーショックの予知のための皮内反応試験は,行う必要があるのか?(病院)

A:
(社)日本化学療法学会臨床試験委員会の皮内反応検討特別部会報告書では次のように提言している。
「有用であるというエビデンスは存在しないため,アナフィラキシーショックの予知に用いられている注射用のペニシリン系,セフェム系,カルバペネム系,モノバクタム系,キノロン系およびペプチド系抗菌薬の皮内反応試験の中止を求める。ただし,極めて低頻度であるがアナフィラキシーショックが発現するので,事前に抗菌薬によるショックを含むアレルギー歴の問診を必ず行い,静脈内投与開始20〜30分間における患者の観察とショック発現に対する対処の備えをしておくことが必要である。」
(日本化学療法学会雑誌51(8),497,AUG.2003.より)

Q:厚労省に医薬品による副作用発生の報告をしたいが,報告用紙の入手先は?(薬局)

A:
平成15年度の薬事法改正で,医療機関等は医薬品または医療用具等について,副作用等の発生を知り,必要があると認める時は,厚生労働大臣に対し直接に副作用等を報告することが義務付けられている(薬事法第77条の4の2第2項)。報告用紙は,自治体および保健所に配布し常備されているが,その他に医療関係団体が発行する定期刊行物への綴じ込みも行われている(日本薬剤師会雑誌付録 医薬品情報1月・7月号の巻末)。
なおインターネットによる入手も可能である。
   
医薬品情報提供ホームページ
http://www.pharmasys.gr.jp/info/houkoku.html

〔保険・行政〕

Q: PPA(塩酸フェニルプロパノールアミン)を含有する薬局製剤を作っていたが,製造自粛の通知が出たので,廃棄処分したい。何か手続きは必要か?(薬局)

A:   
PPAは覚せい剤原料に該当するので,「覚せい剤取締法第30条の13」に基づき,当該覚せい剤原料保管場所の所在地の都道府県知事に事前に「覚せい剤原料廃棄届出書」を提出し,覚せい剤監視員の立会いのもとに廃棄を行う。

〔健康食品・その他〕

Q:W/W%とは何か?(薬局)

A:   
重量パーセントのことで,ある物質の全質量中で,目的の成分が占める質量をパーセントで示したもの。また溶液の濃度を示すのにも用いられ,100gの溶媒中に何gの溶質が含まれているかを示す。
Q:食用油の酸化度を簡単に測定する試薬や試験紙はあるか?(薬局)

A:
食用油の酸化の程度を評価する指標として酸化(AV)と過酸化物価(POV)の2つがある。AVテスターにはAV−CHECK(味の素)等,POVテスターにはPOV試験紙(柴田科学)等がある。


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