薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2004年3月)

〔医薬品一般〕

Q:アスピリンをうがいに用いることがあるのか?(薬局)

A:
口内炎による疼痛緩和に用いられることがあるが,保険適応外使用である。

Q:水銀中毒に使用されるDMSA,ALAとは何か?(薬局)

A:
DMSA(2,3 meso DiMercapto Succinic Acid :2,3-ジメルカプトコハク酸,通称:Succimer,商品名:Chemet)は,子供の鉛中毒を治療するためにFDAが認可している処方薬で,水銀に対しても効果があり,キレート剤として欧米では広く使用されている。毒性が低く水溶性で安定,経口投与できる等の利点がある。
ALA(Alpha lipoic Acid:αリポ酸,一般名:チオクト酸)は栄養剤で,水銀排出に効果的なキレート剤であることがわかっている。脂溶性で血液脳関門を通過するため,脳から水銀を排出できる。


〔副作用・安全性情報〕
Q: マクロライド系抗生物質の肝薬物代謝酵素P-450系阻害における相互作用について,活性阻害の程度の差は?(薬局)

A:
肝薬物代謝酵素P-450系の活性阻害が一番強いのはエリスロマイシンで,それに比べてクラリスロマイシン,ロキシスロマイシン,ジョサマイシン,ミデカマイシン,ミカマイシンは弱く,アジスロマイシン,ロキタマイシン,アセチルスピラマイシンは活性阻害はない。

Q:ツベルクリン反応検査を行った日に入浴してもいいか?(病院)

A:
ツベルクリン反応は,特にBCG既接種の場合には注射後数時間後から発赤,硬結の反応が出現し,徐々に大きくなり,ほぼ48時間頃に最も強い反応を示す。入浴中に注射部位を強く刺激すれば反応は修飾され,正確な判定が難しくなるが,強くこすったりしない限り,特に入浴やシャワーに問題はない。

Q:副作用で「羞明」と書いてあるが,何と読むのか,どういう副作用か?(薬局)

A:
シュウメイと読む。まぶしがり症。眼が光によって強く刺激されるため,光をまぶしく感じ,光を受けることを嫌う状態をいう。眼痛や流涙を伴う。


〔行政・保険〕

Q:院外処方せんで注射針のみを投与することはできるか?(薬局)
A:
注射器,注射針又はその両者のみを処方せんにより投与することは認められない(平成14年3月8日 保医発0308001号)。

Q:塩酸メチルフェニデート(リタリンTM散,錠)の廃棄には,何か届け出が必要か?(薬局)

A:
向精神薬の廃棄については,許可や届出の必要はないが,第1種及び第2種向精神薬を廃棄するときは,品名,数量,年月日を記録し,記録の日から2年間保存しなければならない。塩酸メチルフェニデートは第1種向精神薬に属する(薬局における麻薬・向精神薬管理マニュアルより)。


〔食品・健康食品など〕

Q:糖尿病でオイグルコンTM(グリベンクラミド)を服用している患者さんが,膝の関節の痛みに健康食品のグルコサミンを飲んでいるらしいが,影響はないか?(薬局)

A:
グルコサミンはブドウ糖とアミノ酸から構成されるアミノ糖の一種で,関節軟骨を構成するムコ多糖類の構成成分である。軟骨の健康維持に深く関与し,変形性関節症の痛みなどに利用されている。動物実験(高用量・注射)でインスリン抵抗性を悪化または血糖値上昇の可能性を示唆する報告があるが,ヒトでの3年間のコントロールトライアル試験では,血糖値への影響は認められなかった。十分な相互作用のデータはないが,糖尿病患者は血糖値をモニターする必要がある。

Q:牛乳に酢を入れると固まるのはなぜか?(薬局)

A:   
牛乳の蛋白質カゼインは,中性pH付近ではコロイド状に分散して小さな球状の粒子のカゼインミセルを形成している。ミセルの外側には電荷を持ったK -カゼインが存在し,集まろうとすると静電反発が起こり,安定性を保っている。電荷の本質はカゼインのアミノ酸(セリン)に付いたリン酸だが,酢を入れると酸性となって,リン酸は電荷を持たなくなるので,カゼインが凝集してゲル化(凝固)する。

Q:クランベリーという果実が膀胱炎に効果があるらしいが?(薬局)

A:   
クランベリー(学名:Vaccinium macrocarpon)はツツジ科ツルコケモモ属の小果樹で,和名はコケモモと言う。原産地はヨーロッパ,北アメリカの寒冷地で,アメリカにおいて品種改良が加えられ,広く栽培されている。果実は直径1cm程度の大きさで,熟すと赤くなるが,酸味や渋味が強いので生食には適さず,ジュースやシロップ,ジャムにして用いられている。伝統的にはアメリカの先住民が尿道炎や膀胱炎等の尿路感染症の民間薬として用いていた。尿路感染症には酸性物質で抗菌作用を有する馬尿酸が有効だと言われているが,クランベリーはそのもとになるキナ酸という成分を含有する。キナ酸は肝臓で代謝されると馬尿酸に変化し,尿中に排泄されるので,その抗菌作用と尿のpHの酸性化により感染菌の増殖を防止する。また成分の凝縮タンニンとプロアントシアニジンが感染菌の尿路上皮への付着を防止することが報告されている。その他に,尿pHの酸性化により,尿がアルカリ性の状態でできる尿路結石(リン酸カルシウム結石やシュウ酸カルシウム結石など)の予防にも効果があるという報告もある(酸性尿の時にできる尿酸結石やシスチン結石には逆効果)。

〔その他〕

Q:Do.処方の「Do.」とは何の略か?(薬局)

A:
ditto(前と同じ,繰り返す)の略。
Q:飲酒後,体内に残っているアルコール濃度を簡易にチェックできるものはないか?(薬局)

A:
吐いた息でアルコール濃度をチェックできる製品が市販されており,「ひとふきアルコールチェッカー(旭電機化成)」や「飲みすぎチェックブレススキャン(大誠商事)」等がある。

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