薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2004年9月)

〔医薬品一般〕

Q:味覚障害の治療で亜鉛を補給する場合,1日にどのくらい摂取したらよいか?(薬局)

A:

味覚障害の治療には通常,試薬の硫酸亜鉛(ZnSO・7HO)を自家製剤としてカプセルに充填(100mg/C),あるいはオブラートに包み,1回1個,1日3回,消化器症状を防ぐために毎食直後(または食事中)に服用する。その他,グルコン酸亜鉛(158mg/C),酢酸亜鉛(100mg/C),ピコリン酸亜鉛(137mg/C)や,亜鉛を含有する胃潰瘍治療薬ポラプレジンク(プロマックTM)が用いられる(いずれも保険適応外使用)。

Q:風邪の時に用いる解熱鎮痛薬について,何か基本とする指針はあるか?(薬局)

A:

日本呼吸器学会が2003年6月にまとめた「成人気道感染症診療の基本的考え方」によると,@解熱鎮痛薬は症状が激しい場合にのみ頓服として使う,アセトアミノフェンなど作用が穏やかな薬が推奨される,A十分な食事が摂れない時や消化性潰瘍がある人,アスピリン喘息,腎不全の人はアスピリン,イブプロフェン,ナプロキセンなどの解熱鎮痛薬は飲んではいけない,となっている。

Q: シンバスタチン(リポバスTM)を腎臓の薬として飲んでいるらしいが,腎臓への作用はあるのか?(薬局)

A:

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬)は本来有する強力なLDL-コレステロール低下作用の他に,血管内皮機能改善作用,心筋保護作用,抗炎症作用,骨形成促進作用,免疫抑制作用,糖尿病の発症リスク減少などの多面的作用(pleiotropic effects)を有することが報告されている。シンバスタチンの大規模臨床試験HPS(Heart Protection Study)の患者に焦点をあてた糖尿病サブ解析によると,糖尿病・非糖尿病患者ともに血清クレアチニン濃度上昇が有意に抑制されたとの報告があり,糖尿病性腎症に対する有用性が示唆されている。

Q: 伝染性単核症とはどのような病気か?(薬局)

A:

伝染性単核(球)症(Infectious Mononucleosis:IM)は,ヘルペスウイルス群に属するEBウイルス(エプスタインバーウイルス Epstein-Barr virus :EBV )の初感染による疾患で,大部分は小児期に感染するが,ほとんどは無症状あるいは軽症のことが多く,予後は良好である。主な臨床症状は,2週間前後持続する発熱,のどの痛み,全身のリンパ節腫脹(主に頸部)で,白血球の中にリンパ球(単核球)が特に多く出現するので伝染性単核症と称されている。また脾臓や肝臓が腫れたり,急性肝炎の原因となることもある。大半のヒトはEBV に感染し,長期にわたり持続感染を維持しており,EBVはのどや血液中の細胞の中で潜伏・休眠状態に入っているが,ときどき再活性化する。再活性化は通常は無症状で起こるが,感染者の唾液中に出てきたEBVは,ヒトからヒトへ唾液を介して経口飛沫感染する(別名:kissing disease)。特異的治療法はなく,合併症がない限り,自然治癒するまで対症療法を行う。

Q:微量元素のセレンが欠乏すると,どのような症状が現われるか?(薬局)

A:

セレン欠乏症はヒトではまれであるが,慢性栄養障害やTPN(完全静脈栄養法)長期施行中,経腸栄養剤の長期投与などによって起こる可能性がある。セレン欠乏症の症状は下肢筋肉痛,歩行障害,爪床の白色化,皮膚炎,心筋症,甲状腺機能低下などである。


Q:カロリー病(Caroli disease)とはどのような病気か?(薬局)

A:

肝内胆管の部分的な嚢胞性拡張を特徴とする,まれな先天性の胆道拡張症である。胆石形成や胆管炎を度々合併する。


Q:臨床検査項目でLAPとあるが,何か?(薬局)

A:

LAP(ロイシン・アミノ・ペプチダーゼ)とは,ペプチドのN末端を切ってロイシンまたは他のアミノ酸を遊離する蛋白質分解酵素の一種で,肝,腎,小腸,膵などに分布している。ほとんどが肝臓か胆道に障害がある場合に血液中に流出して高値を示すので,臨床的には主に肝・胆道などの閉塞状態を知るのに利用されている。しかしLAPの値だけでは確定診断はできず,他の肝機能検査のGPT,A/G,GOT,γ-GTPの検査結果と併せて総合的な判断が必要である。その他に,ウイルス感染症,悪性リンパ腫などのリンパ球系の疾患,白血病,妊娠時(5ヶ月以降)でも上昇する。


Q: 腋臭症で,ホルマリンアルコールというのを処方されたが,効果があるのか?(一般)

A:

ホルマリンは蛋白凝固作用を有しているため,汗の蛋白を凝固し,汗孔を塞いで防臭・止汗作用を現す。3%あるいは5%ホルマリンのエタノール溶液として,腋臭症や多汗症に用いられる(保険適応外使用)。


Q:酢酸親水ワセリン軟膏の調製方法と用途は?(薬局)

A:

酢酸親水ワセリン軟膏は,水疱性疾患における難治性MRSA感染症やアトピー性 皮膚炎患者のMRSA感染症に用いられている。酢酸は皮膚収れん作用と静菌作用を有する。施設によって3%,6%製剤が調製されている。3%濃度500gの調製法 は,親水ワセリン(局方)を加温溶解し,酢酸(試薬)15mLを加え溶解させ(全量 500g),固まるまで攪拌する。次に軟膏板上で練合し全質均等とする (保険適応外 使用)。

〔その他

Q:吸入薬でCFC製剤,HFA製剤とは何か?(薬局)

A:

エアゾル剤の噴射剤として特定フロンのCFC(クロロフルオロカーボン)を使用しているものをCFC製剤,代替フロンで塩素を含まないHFA(ヒドロフルオロアルカン)を使用したものをHFA製剤と言う。オゾン層破壊の問題から,特定フロンは使用されなくなっており,最近では代替フロンを使用した製剤や,噴射剤を使用しないドライパウダー製剤が主流となっている。


Q: PPDとは何か?(薬局

A:

精製ツベルクリンのこと。洋名はPurified Protein Derivative of Tuberculinで,Purified Protein Derivative(PPD)とは精製蛋白誘導物質を意味する。



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