薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2004年10月)

〔医薬品一般〕

Q: 慢性関節リウマチにチオラTM錠を使用することがあるか?(薬局)

A:

チオラTM錠(成分:チオプロニン)は慢性肝疾患における肝機能改善や初期老人性皮質白内障等に用いられる薬だが,ペニシラミンと同様にSH基を有し(SH基はリウマトイド因子をはじめ免疫複合体の分子内S-S結合を解離する),慢性関節リウマチに対して免疫異常を是正するDMARDs(Disease Modifying Antirheumatic Drugs:疾患修飾性抗リウマチ薬)として用いることがある。1日30〜50mgから開始し,維持量は100〜300mg,不応例では増量してもあまり効果がない。最近ではあまり使用されない(保険適応外使用)。

Q:肝臓が悪い人はしじみを食べてはいけないのか?(一般)

A:

肝臓が悪い人の食事療法は,病気の種類と病期により異なる。C型肝炎の患者のなかには鉄制限食が有効なことがあり,しじみは鉄を多く含有するので制限されることがある。鉄は血液(赤血球)に次いで肝臓に多く貯蔵され,肝臓の中ではフェリチンと結合している。C型肝炎の肝臓組織には鉄の過剰蓄積が認められ,細胞内で鉄が増加すると,フェリチンと結合せずフリーの鉄が増加し,活性酸素を産生して細胞障害の原因となる。したがって除鉄療法(瀉血による肝組織からの貯蔵鉄の汲み出しと鉄制限食)を行うことにより,過剰鉄を減らして炎症を軽減させ,肝硬変への進展を遅らせることができる。また,肝がんの発がん抑制効果も期待されている。

Q:軟膏剤の重層法とはどのような方法か?(薬局)

A:

通常は2種類の薬剤を重ねて外用する方法で,よく用いられるのは副腎皮質ステロイド剤と亜鉛華軟膏の重層法である。副腎皮質ステロイド剤の適応病変で,湿潤し,痂皮,鱗屑が付着しているような病変に対して,まず副腎皮質ステロイド軟膏を病変部に塗布した後,リント布にのばした亜鉛華軟膏などの油脂性軟膏を貼付する。重層法により副腎皮質ステロイド剤の経皮吸収が高まり,使用量も少なく,低いランクへの使用も可能となる。さらに亜鉛華軟膏の効果で鱗屑,痂皮が軟化し,きれいに取れ,保護作用で上皮化が促進され病変が乾燥化する。

Q: 眼科受診の患者さんが原田病と言われたらしいが,どのような病気か?(薬局)

A:

原田病はぶどう膜炎の1つで,日本人を含む東洋人に多く,白人に少ない。20〜30歳代に多くみられる。症状は,網膜と脈絡膜の間に水がたまるために網膜剥離が生じ,また視神経に腫れが生じ,これらによって急な視力低下や,眼がかすんだりする。同時に,めまい,嘔吐,頭痛,耳鳴り,難聴などが起こり,1〜2ヶ月すると皮膚や頭髪,眉毛,睫毛が白くなることがある。初期には9割以上に髄液内細胞増多が認められる。症状は3〜6ヶ月で治まり,視力も回復することが多いが,なかには2〜3年にわたりぶどう膜炎が続き失明したり,治まった後に再発することもある。治癒後の眼底の色が特徴的で,赤く明るく見えることから「夕焼け眼底」と呼ばれる。これらの症状は正常なメラノサイト(色素細胞)が自己免疫の作用によって破壊されるために起こる自己免疫疾患と考えられている。治療には副腎皮質ステロイド剤(点滴による大量投与)や散瞳薬が用いられる。

Q:レビー小体型痴呆(DLB:dementia with Lewy body)とはどのような病気か?(薬 局)

A:

大脳皮質から脳幹の神経細胞の中に特異な変化(レビー小体)が出現し,痴呆を主症状とする病態である。アルツハイマー型痴呆,脳血管性痴呆とともに3大痴呆の疾患と言われ,日本では痴呆の約2割を占めると報告されている。進行性の認知機能障害が必須症状で,中核症状として,アルツハイマー型痴呆に類似する認知機能の動揺,幻視(人物や小動物像が反復性に出現),パーキンソニズム(末期まで目立たないことがある)の3項目が挙げられる。


〔副作用・相互作用・安全性情報〕

Q:NSAIDsによる高血圧の発症機序は?(薬局)

A:

NSAIDはシクロオキシゲナーゼ阻害によりプロスタグランジン(PG)合成を阻害する。腎におけるプロスタブランジン(PGE,PGI)は血管拡張作用を持ち,水・Na利尿を促し,昇圧系PGの作用とのバランスにより血圧調節・維持に関与している。またPGE2,PGIは神経終末からのノルエピネフリン放出を抑制し,アンジオテンシンKやバソプレッシン等の血管収縮ホルモンによる収縮作用を減弱させる。したがってNSAIDsの使用によりPGE,PGIの合成が阻害されると,水・Na貯留に傾き,末梢血管抵抗を増大させることにより,血圧が上昇すると考えられている


Q:緑内障でキサラタンTM点眼液を使用したが,目が赤くなるので点眼したくない。(一般)

A:

キサラタンTM点眼液(成分:ラタノプロスト)で目が充血することがあるが,次第に慣れてくる。気になるようであれば,就寝前に点眼したらよい。


Q:テオフィリンを服用している気管支喘息の患者が,禁煙するためにニコチネルTMTTS を処方された。相互作用で気をつけることは?(薬局)

A:

喫煙による肝薬物代謝酵素誘導でテオフィリンの代謝が促進し,血中濃度が低下するため,喫煙者のテオフィリン最適用量は通常より多いことがある。したがって禁煙により,血中濃度が上昇し中毒症状が発現する可能性がある。また禁煙しても肝薬物代謝酵素誘導は数ヶ月続くことがあるので,血中濃度モニタリングを行い,用量調節を行う必要がある。


〔保険・行政・その他〕

Q: ダン・リッチTMはいつまで使用できるのか?

A:

経過措置品目で,使用期限は平成17年3月31日まで。


Q:メチルスルフォニルメタンとは何か?(薬局)

A:

メチルスルフォニルメタン(MSM)は自然界に広く存在する有機イオウ化合物である。肉,魚,牛乳等の動物性たんぱく質やニンニク,ニラ,ネギ等の野菜類に含まれるが,洗浄や加熱などの調理により破壊されやすい。軟骨等の形成や修復に必要な成分でヒト体内にも存在するが,年齢とともに減少する。関節痛の軽減等の効果が注目され,グルコサミンやコンドロイチン等とともに健康食品として販売されている。


Q: 芳香剤の成分中に環境ホルモンが入っているらしいが,どのようなものか?(薬局)

A:

環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)は現在100種類以上挙げられており,芳香剤に含まれているものとして,ベンゾフェノン,4-エチルフェノールなどがある。


close