薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2005年1月)

〔医薬品一般〕

Q:成人の気管支喘息で,副腎皮質ステロイドを内服するのはどのような病態の時か?(薬局)

A:

重症持続型で,コントロールが不良のため毎日症状が発現して日常活動も制限され,ピークフロー値が予測値の60%以下,変動は30%以上の時,短期的に副腎皮質ステロイドを内服する。処方例は,1日1回プレドニゾロン30mgを3日間内服し,奏効しない場合は7日間まで延長する。

Q: Hブロッカーとプロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用することはあるか?(薬局)

A:

重症の逆流性食道炎では,PPI投与中でも夜間に,胃内pHが4未満となる時間が1時間以上連続して認められる現象(NAB:Nocturnal Gastric Acid Breakthrough)を起こしやすい。この現象がみられる例の大半は,ヘリコバクター・ピロリ菌感染陰性患者である。NABではPPIの増量や夜間服用では効果が十分ではなく,PPI投与に加えて就寝前にHブロッカーを併用すると,NABの発現を抑制できるという報告がある。

Q:乳児の鼻閉に麻黄湯を使うことがあるのか,用法は?(薬局)

A:

乳児では強い鼻閉のために,哺乳困難や不眠,不機嫌等の症状が起こる場合が多い。生後6ヶ月までの乳児に麻黄湯を投与し,鼻閉の改善効果がみられた報告がある。かぜ症候群と診断された乳児(生後3ヶ月〜6ヶ月)58例を対象に,ツムラ麻黄湯エキス顆粒(医療用)を1回0.25g,1日4回,哺乳の30分前にほぼ6時間ごとに投与した。投与方法は,保護者の指先を白湯で濡らし,その指で麻黄湯を乳児の上顎に塗り付けた。有効率は58例中48例(82.7%)で,特に副作用は認めなかった。

(橋本 浩:漢方医学24(6),281,2000.より引用)

Q:プリックテストの方法は?(病院)

A:

プリックテスト(skin prick test)は即時型アレルギーの検査法で,IgEが介在するアトピー疾患やアレルギー性接触蕁麻疹等の診断に有用である。スクラッチテストより刺入されるアレルゲン量が少ないため,より安全で,刺激反応が少なく,反応が定量的で標準化しやすい。テストは前腕屈側で行う(多数のアレルゲンの場合は,上腕屈側,上背部でもテストする)。アレルゲン液を1滴ずつ置き,滅菌済みプリックランセットで皮面に対して90度の角度で,液滴を静かに貫き1度刺し,アレルゲンが混合されないように直ちにペーパータオルで液をふき取る。使用したランセットは1回で使い捨てる。15〜20分後に判定し,膨疹5mm以上または発赤15mm以上を陽性とする。最近では陽性と陰性の対照にヒスタミン液(10mg/mL)や生理食塩液を用いた比較評価法が行われている。

Q: ビュルガー病とは?(薬局)

A:

Leo Buergerによって1908年に報告されたことから,ビュルガー病(ドイツ語読み)あるいはバージャー病(英語読み)と名づけられた病気で,閉塞性血栓血管炎とも呼ばれ,特定疾患に指定されている。四肢の末梢血管が閉塞し,初期症状は指趾の冷感,しびれ,蒼白がみられ,間欠性跛行を訴える。次第にチアノーゼ,安静時疼痛,虚血性発赤,筋萎縮,脱毛がみられ,さらに進行すると指趾の虚血性潰瘍を形成し壊死に陥り,脱落する(脱疽)。若年男子に好発し,アジア人に多い。原因は不明で,発症や増悪には喫煙が強く関与している。治療は禁煙し,患部を保湿し清潔に保ち,軽症では,抗血小板薬,抗凝固薬,血管拡張薬などの薬物療法を長期間続ける。重症では薬物療法に加え,高圧酸素療法による高濃度の酸素供給,交感神経節ブロックや交感神経節切除術,血行再建術等が行われる。

〔安全性情報〕

Q:子供が市販のホウ酸入りゴキブリ団子を少しかじったらしい。ホウ酸の毒性は?(薬局)

A:

市販品のゴキブリ団子のホウ酸含有量は,5〜70%と製品により違いがある。ホウ酸は細胞毒性(特に尿細管上皮)および中枢神経抑制作用を有し,中毒症状として,悪心,嘔吐,下痢,激しい腹痛,出血性胃腸炎,青緑色便,皮膚症状(紅斑,落屑),頭痛,嗜眠,振戦,痙攣,脈拍微弱,頻脈,チアノーゼ,血圧低下,腎障害,尿細管壊死による乏尿,蛋白尿などが発現する。症状発現には数時間かかることがあり,消化器症状で始まる。経口致死量は乳児2〜3g,幼児5〜6g,成人15〜20g,経口中毒量は成人1〜3gだが,個人差が大きい。すぐに催吐,牛乳または水を飲ませ,医療機関を受診する。処置は,催吐・胃洗浄および対症療法(痙攣対策,電解質バランスの維持,呼吸・循環管理)が行われる。

〔調剤・製剤〕

Q:ノロウイルスの消毒に,5%次亜塩素酸ナトリウム液から200ppm液,1,000ppm液を1,000mL作りたい。希釈の方法は?(薬局)

A:

1%=10,000ppm。200ppm(0.02%)液は,5%次亜塩素酸ナトリウム液4mLに水を加えて,1,000mLにする(250倍希釈)。1,000ppm(0.1%)液は,5%次亜塩素酸ナトリウム液20mLに水を加えて,1,000mLにする(50倍希釈)。

Q: 耳垢水の作り方は?(薬局)

A:

炭酸水素ナトリウム5gを精製水に混和溶解し,グリセリン25mLを加え混和し,精製水を加えて全量100mLとする。滅菌済み点鼻用ポリ容器(5mL)に分注する。冷所保存。

Q:エリキシル剤は他の水溶液の製剤と配合してよいか?(薬局)

A:

アルコールを含有するフェノバールTMやジゴシンTMエリキシルは,水溶液製剤との配合で沈澱を生成,成分の分解を生じるため配合不適である。

〔食品・その他〕

Q: 尿酸値が高い。アルコール中のプリン体の含有量は?(一般)

A:

アルコール飲料100mL中の総プリン体含有量(mg)は,ビール3種:4.35〜6.86,地ビール(11種):6.78〜16.64,発泡酒(4種):2.83〜3.82,日本酒:1.21,ワイン:0.39,ブランデー:0.38,ウイスキー:0.12,焼酎:0.03である。痛風・高尿酸血症患者1回の飲酒適量は,ビールは500mL,日本酒は1合,ウイスキーはダブル1杯,ワインはグラス2杯,焼酎はお湯わり1杯程度で,週2回の休肝日を設けるように指導されている。

Q:処方用語で「v.d.S.」は何の略で,どのような意味か?(薬局)

A:

ドイツ語の「vor dem Schlafengehen」の略で,「就寝前」を意味する。


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