薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2005年3月)

〔医薬品一般〕

Q: 医師から,Hydroxychloroquine Sulfateとは何かと聞かれたが?(薬局)

A:

硫酸ヒドロキシクロロキン。米国の製品でPlaquenilTMがあり,膠原病(慢性関節リウマチ,全身性エリテマトーデス等),マラリアに使用されている。

Q: オーストラリア人がパラセタモール,メタミゾールナトリウムという鎮痛薬を服用しているらしいが,何か?(薬局)

A:

これらは国際一般名称 INNであり,日本医薬品一般名称 JAN(和名)では,パラセタモールはアセトアミノフェン,メタミゾールナトリウムはスルピリンに該当する。

Q:エリスロマイシンが有するモチリン様作用とは?(薬局)

A:

モチリンとは,上部小腸(十二指腸,空腸)に最も多く存在するモチリン細胞で合成される22個のアミノ酸からなるペプチドホルモンである。膵液の分泌で十二指腸内がアルカリ化されることにより分泌され,胃・十二指腸・結腸の平滑筋収縮作用を示し,食後よりも空腹時の収縮運動を刺激する。エリスロマイシンはモチリンの分泌を促進し,さらにモチリン受容体(胃前庭部と上部十二指腸に最も高密度に分布)に直接作用し,消化管運動を亢進させる。この作用は,抗菌作用を発揮する量より少ない量で発現する。

Q: COMT阻害作用とは?(薬局)

A:

COMT(カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ)はカテコールアミンの代謝に関与する酵素で,脳を含め体内に広く分布し,特に肝臓と腎臓に多い。医療用医薬品でCOMT阻害作用を有するものには,肝胆道・膵疾患,尿路結石時の鎮痙薬であるフロプロピオン(コスパノンTMカプセル等)がある。COMT阻害作用により交感神経終末部におけるノルエピネフリン代謝を抑制し,交感神経作動性神経伝達を促進することに加え,抗セロトニン作用を発揮することで,消化管,膵胆道,尿路の平滑筋に対して鎮痙作用を発揮する。また,パーキンソン病治療薬として,L-DOPAの代謝を抑制して脳への移行の改善を目的としたCOMT阻害薬がある(エンタカポン等:本邦未発売)。

Q:CoQ10の健康食品から無承認成分イデベノンが検出されたと報道されたが,何
か?(薬局)

A:

イデベノンは脳代謝・精神症状改善薬として昭和61年に医療用医薬品として承認され,脳梗塞・脳出血後遺症に伴う慢性脳循環障害による意欲低下,情緒障害の改善に使用されていた。平成10年5月の再評価結果より有用性が認められないとされ,承認が取り消され,薬価基準削除となっている。海外では脳血管障害や認知症の治療薬として,現在でも医薬品として認めている国がある(フランス,イタリア等)。

Q: インフルエンザの潜伏期間はどれくらいか? (薬局)

A:

1〜5日(平均3日間)とされている。

Q:糖尿病患者は,風邪等の時に血糖値上昇や尿糖が陽性になるらしいが,なぜ
か?(薬局)

A:

感染症や熱性疾患,外傷などによる肉体的・精神的ストレスにより,インスリン作用に拮抗するグルカゴン,エピネフリン,成長ホルモン,コルチゾールなどのホルモンやサイトカイン分泌が増加する。その際,糖尿病でない人はインスリンも多く分泌されるが,糖尿病患者はインスリンが追加分泌されないため,血糖値上昇や尿糖が陽性となることがある。

Q: 室温や常温など,日本薬局方で規定されている温度は何℃か?(その他)

A:

標準温度は20℃,常温は15〜25℃,室温は1〜30℃,微温は30〜40℃,冷所は別に規定するもののほか,15℃以下の場所とする。


〔安全性情報(副作用・相互作用・妊婦等)〕

Q:鉄剤の吸収がビタミンC(アスコルビン酸)で促進されるのはなぜか?(薬局)

A:

鉄には2価鉄と3価鉄があり,3価鉄は2価鉄に比べ吸収が悪い。アスコルビン酸の還元作用により,3価鉄から吸収されやすい2価鉄への還元が促進されるために,吸収が促進すると考えられる。


Q:臨床検査でA/Gとは何か?(一般)

A:

血液総蛋白を構成する主な成分はアルブミン(A)とグロブリン(G)で,その比率アルブミン/グロブリン比(A/G)は健康な人では一定範囲内にある。正常値は1.2〜2.0(ビューレット・BCG法)。アルブミンは種々の原因で容易に減少するが,グロブリンの減少はまれで,むしろ増加することが多いので,A/Gは病気によって主に低値化し,高値化はまれである。低値は,ネフローゼ症候群,重症肝疾患,慢性炎症,M蛋白血症,栄養障害などを示す。ただしあくまでも簡便な指標であり,詳細な病態像を把握するには,蛋白分画や臨床所見と併せて判断する必要がある。


〔食品・健康食品など〕

Q: 健康食品についてインターネットで調べたいが,信頼できるデータベースはあるか?(その他)

A:

独立行政法人 国立健康・栄養研究所が運用する「健康食品」の素材情報データベースがあり,現時点で得られている科学的根拠に基づいた情報が掲載されている。

http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv.php

〔行政・保険・その他〕

Q: 管理薬剤師は他の薬局で勤務してはいけないか?(薬局)

A:

〔薬局の管理〕 新薬事法(改正薬事法)第7条第3項 薬局の管理者は,その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であってはならない。ただし,その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けた時は,この限りでない(ただし書きの規定として,薬局の管理者が非常勤の学校薬剤師を兼ねる場合,指定居宅介護支援事業の管理者又は介護支援専門員を兼務する等であって,薬局の管理者としての義務を遂行するに当たって支障を生ずるおそれがないと認められるときのみ許可される。この際であっても,その薬局の所在地の都道府県知事の許可が必要である。)。


close