薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2005年5月)

〔医薬品一般〕

Q:治験薬でNS-21は何の薬か,1日1回服用するらしいが?(卸)

A:

過活動膀胱治療薬のウレスパンTM(塩酸テミベリン)で,日本新薬が申請中。抗コリン薬で膀胱平滑筋(排尿筋)に分布するムスカリンM受容体に選択的に作用するので,副作用が少ない。カルシウム拮抗作用も有する。

Q:炭酸ランタンはいつ頃に発売される予定か?(病院)

A:

現在,バイエル薬品が治験中(PhaseU)。希土類元素ランタン(La)の炭酸塩で,末期腎疾患患者の透析中に発生しやすい高リン血症の治療薬。胃酸により解離したランタンイオンがリンと結合して,消化管からのリン吸収を抑制する。

Q:ぎょう虫駆除薬で医療用医薬品のコンバントリンTM錠(パモ酸ピランテル)が処方せん医薬品に指定されたが,一般用医薬品でぎょう虫駆除薬はないか?(薬局)

A:

佐藤製薬よりパモキサンTM液・錠(パモ酸ピルビニウム)が発売されている。パモ酸ピルビニウムの医療用医薬品は,ポキールTM(三共)が発売されていたが,1989年6月末販売中止(以後薬価基準より削除)となっている。

Q:リウマチの治療でリウマトレックスTMカプセル(メトトレキサート2mg)と一緒に,フォリアミンTM錠(葉酸5mg)が1T,1×で処方されているが,1週間に1錠だけで良いか?(薬局)

A:

メトトレキサートの副作用を軽減するために葉酸を投与することがあるが,投与量,投与期間についての明確な基準はない。一般的には,週に1回,メトトレキサート最終服用24〜48時間後に葉酸5mgを内服,あるいは毎日葉酸1mgを内服する方法がある。

Q:血小板減少症の患者さんが,H・ピロリ菌を除菌すれば症状が改善すると医師から言われたそうだが?(薬局)

A:

H・ピロリ菌陽性の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の患者で,H・ピロリ菌の除菌後に血小板数が増加した報告がある。機序は明確にされていないが,ITPは自己免疫疾患で,H・ピロリ菌の感染は免疫応答に影響を及ぼす可能性があると示唆されている。

Q:成人スティル病とは?(薬局)

A:

スティル病(スチル病とも言う)は,Stillが報告した全身症状を伴う若年性関節リウマチだが,同様の症状が成人にも認められたことから,成人スティル病という病名がつけられた。特定疾患で,20〜40代に多い。臨床症状は発熱(38℃以上),関節症状,皮疹(サーモンピンクの紅斑)を3主徴とし,咽頭痛やリンパ節腫脹,肝脾腫も見られる。検査所見では,白血球数増加,血清CRP高値,肝機能障害等を認め,血清にフェリチンが著増する。リウマチや膠原病で陽性になることが多いリウマトイド因子や抗核抗体などの自己抗体は一般に陰性である。原因は不明で,ウイルスなどの病原微生物感染が引き金となり,それに免疫異常がからんで発症するのではないかと考えられている。基本的治療薬はNSAIDsと副腎皮質ステロイドで,ステロイド治療抵抗例には免疫抑制薬を併用し,また関節炎が持続する時には抗リウマチ薬を併用する。予後は一般に良好とされるが,難治例も存在する。


Q:後発医薬品(ジェネリック医薬品)の承認申請時に必要な資料は何か?(薬局)

A:

後発医薬品は,通常,新薬(先発医薬品)の再審査期間(有効性・安全性について再確認を行う期間)および特許期間の満了後に市場に出される医薬品である。承認申請には,有効性・安全性について先発医薬品で確認されていると仮定され,安定性試験・生物学的同等性試験等を実施して基準をクリアすれば,先発医薬品と同等であると科学的に評価され,製造承認される。したがって承認申請時に必要な書類は,「規格および試験方法」,「加速試験」,「生物学的同等性試験」,「製造方法」(個々の医薬品により判断される)である。


〔安全性情報〕


Q:カンゾウ含有製品による副作用の低カリウム血症は,1日何g以上服用の時に注意が必要か?(薬局)

A:

カンゾウの量として1日2.5g(グリチルリチン酸100mg)を超えると,低カリウム血症を起こしやすくなる。


Q:前立腺肥大症だが,総合かぜ薬を服用しても良いか?(一般)

A:

総合かぜ薬に含まれる抗ヒスタミン薬の抗コリン作用により,尿道抵抗が増強し,排尿障害(排尿困難,残尿感,尿閉等)が生じることがあるので,前立腺肥大症の症状が悪化する可能性がある。

Q:光線過敏症を起こす可能性がある医薬品を用いる時,予防の方法は?(薬局)

A:

長時間強い光線を浴びる日光浴や海水浴を避け,長袖,長ズボンの着用やつばの広い帽子,手袋,サングラス,日傘などの使用,サンスクリーン剤(UVA領域も遮断するもの。朝のみならず昼も塗り替え,耳介,頸部,前胸部,手背にも塗布)の使用などがある。白色や薄地の衣類は光を通すので避けたほうが良い。また気象庁のホームページに紫外線情報が掲載されているので,外出時には参考にすると良い。
http://bosaidata.kishou.go.jp/uv/u_uv.html

Q:杏仁水を誤って5mLくらい飲んだが,対処方法は?(病院)

A:

杏仁水はシアン化水素を0.09〜0.11%含有する。第11改正日本薬局方までは,極量1回2mL,1日6mLを超えないと記載されている。シアン化水素のヒト致死量は30〜40mgである。中毒症状は,経口,吸入の場合,直ちに呼吸困難,呼吸停止,チアノーゼ,心房細動,心停止,代謝性アシドーシス,錯乱,意識喪失,激しい痙攣,瞳孔散大などが発現し,大量の場合は1〜15分で死亡する。経口,経皮,吸入で軽症の場合,めまい,過呼吸,嘔吐,顔面紅潮,頭痛,頻脈等が発現する。経口の場合の処置は,心肺蘇生,アシドーシスの補正,亜硝酸・チオ硫酸療法(亜硝酸アミルの吸入,3%亜硝酸ナトリウムの静注,10%チオ硫酸ナトリウムの静注),胃洗浄,下剤の投与,対症療法等を行う。

Q:アスベリンTMシロップ(ヒベンズ酸チペピジン)とアクディームTMシロップ(塩化リゾチーム)の配合は問題ないか?(薬局)

A:

配合7日後で,外観,分散性,pH等の変化は見られない。


〔行政・保険・その他〕


Q:毒物および劇物取締法施行令で「劇物たる家庭用品」とは,どんな品目か?(薬局)

A:

毒物劇物を原料として製造されたもので,例えばトイレの洗浄液など,一般消費者が日常の生活用品として使用するもの。@塩化水素又は硫酸を含有する製剤たる劇物(住宅用の洗浄剤で液体状のものに限る),Aジメチル−2・2−ジクロルビニルホスフェイト(別名DDVP)を含有する製剤(衣料用の防虫剤に限る)がある。

Q:低血糖発現時に服用するゼリー状のブドウ糖があるらしいが,何か?(卸)

A:

アークレイマーケティング鰍フグルコレスキューTM(1包25g中ブドウ糖10g含有)がある。


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