薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2005年11月)

〔医薬品一般〕

Q:アスピリン製剤に川崎病が効能追加になったらしいが,用法・用量は?(卸)

A:

抗血小板薬として用いられているアスピリン製剤(末,81mg錠,100mg錠)に川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)の効能が追加された(添付文書改訂2005年11月)。用法・用量はアスピリンとして,急性期有熱期間は1日30〜50mg/kgを3回に分服,解熱後の回復期から慢性期は1日3〜5mg/kgを1回経口投与する。なお,症状に応じて適宜増減する。


Q:チュアブル錠の服用方法は?(薬局)

A:

チュアブル錠〔咀嚼錠:chewable tablet,chewableはchew(噛む)+ able(できる)から成る造語〕は水無しで服用できる錠剤で,口中で溶かすか,噛み砕いて服用する。小児や高齢者に適した製剤で,また携帯にも便利である。


Q:多形紅斑とは何か?(薬局)

A:

多形滲出性紅斑(Erythema Exsudativum Multiforme)とも言う。感染(マイコプラズマ,単純ヘルペス等)や薬剤による免疫アレルギー反応で,皮膚症状は浮腫性紅斑やtarget lesion(射撃の的のような同心円状で,中心の暗紅色斑の周囲に浮腫状の部分があり,さらにその外側に境界明瞭な紅斑を認め,ときに水疱を伴う)を呈し,新旧の紅斑が混在し多形を呈する。重症の粘膜病変を伴う場合はStevens-Johnson症候群と呼ばれ,さらに中毒性表皮壊死症に至ることがある。典型例は顔面,手背,足背,肘,膝に特徴的なtarget lesionを認め,通常2〜3週間で消退する。前駆症状として発熱や倦怠感,頭痛,関節痛を起こすこともある。感染が原因の場合は再発しやすい。治療は軽症例では副腎皮質ステロイド外用薬,抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服,感染の症状により,抗ウイルス薬,抗生物質の内服,重症例では全身管理と副腎皮質ステロイド薬の大量全身投与が必要となる。


Q:ウエスト症候群とは何か?(薬局)

A:

点頭てんかん,電撃・点頭・礼拝痙攣とも呼ばれる難治性のてんかん。先天性脳発達異常,無酸素性脳障害,中枢神経胎内感染症,先天性代謝異常など,種々の脳発達障害が原因となる症候群で,1歳未満に発症することが多く,多くは精神発達遅滞を伴う。発作型は,頭部前屈を主とし,上半身の前屈,上肢および下肢が軽く屈曲して挙上する短時間(1秒以内〜10数秒)の強直痙攣発作で寝つきや目覚めの時に起こりやすく,しばしば発作は反復して起こり,シリーズを形成する。成長に伴い他のてんかん型(Lennox症候群等)に移行する。治療はビタミンB大量療法,ゾニサミド,クロナゼパム,バルプロ酸ナトリウム,ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)筋注などを使用する。小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患で,認定基準に該当すれば医療費の一部が公費負担される。

Q:進行性乳癌の悪臭対策にメトロニダゾール軟膏を作りたいが,調製方法は?(薬局)

A:

進行性乳癌の腫瘍潰瘍部から放たれる悪臭は,偏性嫌気性菌の感染が原因と考えられ,0.8〜1%のメトロニダゾール軟膏が用いられることがある(保険適応外使用)。0.8%軟膏の調製方法:メトロニダゾール800mg(フラジールTM 内服錠250mg)を粉砕し篩過して微細粉末化し,マクロゴール400を20〜30g加えて泥状とした後,マクロゴール軟膏を少量ずつ加えながら十分に練合し,全量を100gとする。気密容器に充填し,冷所保存。


 

Q:最近のベビーパウダーにはアスベストは入っていないか?(薬局)

A:

1987年7月にベビーパウダーの原料に使用されているタルクの不純物としてアスベストが検出され,社会問題になった。 タルク(別名:滑石)は天然の含水ケイ酸マグネシウムで,皮膚に散布するとすべりが良くなり,乾燥させるので,皮膚疾患などに散布剤として,あるいは錠剤などの滑沢剤や賦形剤として用いる。現在,ベビーパウダーに使用されるタルクは,1987年11月に厚生省により通達された試験法において,アスベストの混入がないことを確認するよう義務付けられている。


〔行政・保険・その他〕

Q:毒物又は劇物の交付の制限は?(薬局)

A:

「毒物及び劇物取締法」第15条において,毒物又は劇物の交付の制限がなされている。@18歳未満の者,A心身の障害により毒物又は劇物による保健衛生上の危害の防止の措置を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定める者,B麻薬,大麻,あへん又は覚せい剤の中毒者には交付してはならない。また引火性,発火性又は爆発性のある毒物又は劇物であって政令で定めるものは,その交付を受ける者の氏名,住所を確認した後でなければ交付してはならない。


Q:調剤済みの薬を患者が紛失した場合,再交付してよいか?(薬局)

A:

患者が,薬剤の紛失や液剤の入ったビンの破損などにより,すでに調剤済みの薬剤の再交付を求めた場合,目前でビンを破損したなど,その事実が明らかな場合を除き,再発行された処方せんや処方医の了解を得た上でなければ,薬剤を再交付することはできない。特に麻薬の場合には処方せんの再発行が必要である。なお,再交付した場合には,その旨を調剤録などに記載しておく。また,それらに関わる費用は保険請求できず,全額患者の自己負担となる(調剤と情報 6(3),395,2000.より)。


Q:健康食品のビンカマイナー(和名:ヒメツルニチニチソウ)抽出物は,認知症に効果があるのか?(薬局)

A:

最近,ヒメツルニチニチソウの抽出物を配合し,「認知症(痴呆)やアルツハイマー病に効く」,「記憶力を向上する」等の効果を標榜した健康食品の流通が急増している。ヒメツルニチニチソウおよびその主成分であるビンカミンの脳循環代謝や認知機能に及ぼす影響については,医薬品製剤としてのビンカミン,あるいはその誘導体ビンポセチンなどを用いた研究はあるが,現時点では食品素材としての有効性・安全性について信頼できるデータが不十分である。医薬品としてのビンポセチンは,日本国内において,過去に医療用医薬品(脳循環改善薬)として脳梗塞および脳出血の後遺症に伴う慢性脳循環障害によるめまい,頭重,頭痛の改善などの目的に用いられていた。しかし再評価の結果,有効性が確認できなかったため2001年に市場より回収された経緯がある。



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