薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2006年2月)

〔医薬品一般〕

Q:肝排泄型の抗菌薬には何があるか?(薬局)

A:

一般に目安として,尿中未変化体排泄率が50%以上を腎排泄型,50%以下を肝排泄型と言い,40〜60%を肝腎排泄型と言うこともある。主な肝排泄型の抗菌薬には,マクロライド系,テトラサイクリン系,テリスロマイシン,一部のセフェム系(セフトリアキソン,セフピラミド,セフォペラゾン),クロラムフェニコール,クリンダマイシン等がある。

Q:花粉症の減感作療法で,舌下投与の方法があるらしいが?(薬局)

A:

皮下注射法による減感作療法は副作用としてアナフィラキシーの発現や通院回数の多さ等が問題となるため,抗原エキスを口に含み粘膜吸収を利用した舌下免疫療法(Sublingual Immunotherapy:SLIT,スリット)が,現在注目されている。皮下注射法に比べ大量の抗原投与が可能で,副作用が少ないため家庭内投与が可能であり,良好なコンプライアンスが得られる。抗原エキスを一定時間口に含んだ後に吐き出す「舌下吐き出し法」と,嚥下してしまう「舌下嚥下法」の2種類があるが,厚労省の研究班では舌下に入れたパン屑などに抗原エキスを滴下し,約2分間保持した後に吐き出す方法をとっている。また獨協医科大耳鼻咽喉科気管食道科では,スギ花粉標準抗原を一定量含有したグミ剤を調製し,それを舌下に約20〜25分間保持した後に嚥下する方法を考案している(保険適応外使用)。

Q:帯状疱疹は一度かかると,二度はかからないか?(一般)

A:

多くのヒトは子供の頃に水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus:VZV)により水痘に罹患し,終生免疫を獲得するが,水痘治癒後も一部のウイルスは三叉神経節や脊髄後根神経節に潜伏している。老化や過労,ストレス,放射線療法など免疫機能の低下などにより身体の抵抗力が低下してウイルスが再活性化した時には,再感染して帯状疱疹を発症し,同様の状況が発生した時には繰り返し発症することがある。

Q:肺炎球菌ワクチンの接種回数は?(薬局)

A:

肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス™,萬有製薬)は市中肺炎のうち最も多い原因菌である肺炎球菌に対する23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンである。肺炎球菌には80種類以上の型があるが,感染機会が多い23種類に対し効果を有し,有効率は約60〜80%である。その効果は約5年間継続すると言われているが,5年経過後も効果は残っている(個人差あり)。再接種時の副反応(主に注射部位の腫れや痛みなど)が初回より強く現われることがあるので,日本での再接種は認可されておらず,接種回数は1回である。しかし,安全性に問題はないとする意見も多い。欧米では65歳以上の高齢者等には,5年以上の間隔をあければ局所反応の頻度が多少増加するものの,安全性にほとんど問題ないことが確認され,1回のみ再接種が認められている。「2歳以上の脾臓摘出患者の肺炎球菌による感染発症予防に対する接種」以外には健康保険が適用されないので,自己負担となるが,自治体レベルで一部負担をする所もある。

Q:BNPとは何か?(薬局)

A:

脳性ナトリウム利尿ペプチド(Brain/B-type Natriuretic Peptide:BNP)は,豚の脳由来のナトリウム利尿因子として見出されたことから「脳性」と呼ばれているが,その後の研究で,心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial /A-type Natriuretic Peptide:ANP)と同じく心臓で分泌されていることが明らかとなった。ANPが主に心房から分泌されるのに対し,BNPは主に心室から分泌される。両者とも血管拡張作用,ナトリウム利尿作用,交感神経系およびレニン・アンジオテンシン系の抑制作用を有し,体液量や血圧の調節に重要な役割を担っている。心不全,急性心筋梗塞,狭心症,腎不全,本態性高血圧症,急性肺障害などで増加する。

Q:子どもが点眼薬をいやがる。うまく点眼する方法は?(薬局)

A:

方法@:子どもを寝かせてお腹の上にまたがり,両足(太股)で頭部まで固定して点眼する。
方法A:足を開いて座り,その中に子どもを寝かせて,子どもの両手の脇に足を伸ばし,頭を押さえて点眼する。
点眼時に目をつぶってしまう子どもの場合,目の周りを拭いてから,目頭付近に点眼し,まばたきをさせる。
寝ている時に点眼するのも一つの方法。泣いている時は,涙で目薬が流されるので避ける。         

Q:廃用症候群とは?(薬局)

A:

廃用症候群(Disuse Syndrome)とは,寝たきりなどの状態で,心身の不使用・不活発(体や頭を使わないこと)によって起こる全身あるいは局所の身体的・精神的機能低下のことで,運動不足病,不動症候群とも呼ばれる。筋肉,骨・関節,皮膚,呼吸器,知的活動など多くの部分に様々な症状が生じ,相互に影響する。安静による下肢筋肉の低下は1週目で20%,2週目で40%,3週目で60%にも及ぶ。一度低下した筋力を回復するためには,1日の安静では1週間,1週間の安静だと1ヶ月かかると言われる。特に高齢者で起こりやすく,若年者に比べ回復も遅く,「寝たきり老人」を作る原因となる。

Q:不妊症の治療にプロゲステロン腟坐剤を使うそうだが,調製方法は?(薬局)

A:

不妊症の治療では,採卵・胚移植後に子宮内膜の状態を整えて着床・維持しやすくするために,黄体ホルモンの補充を目的にプロゲステロンの注射や腟坐剤が用いられる。腟坐剤の調製方法:(1個150mg,200個)プロゲステロン30gを乳鉢にとり,少量のマクロゴール400で結晶をすりつぶし,水浴上で加熱溶解したポリエチレングリコール6000 188gの中に入れ,残りのマクロゴール400(全量は252mL)を加えて混和溶解する。溶解後,凝固点(48〜49℃位)近くまで温度を下げ,坐剤コンテナ(2.25mL)に充填する。遮光,冷所保存。

Q:輸液のボトルに油性マジックで患者の名前等を記入した場合,マジックの成分が容器内に移行することはあるか?(病院)

A:

油性マジックの成分のキシレンやメトキシプロパノール,消去時の消去用溶剤のベンジンやエタノールが,ポリエチレンおよびエチレンビニル酢酸製の輸液ボトル内に透過するかを調べた試験で,いずれの成分も透過が検出された報告がある。検出された各成分は微量で,人体への毒性は問題ないと考えられるが,直接容器に記載することはできるだけ避け,調剤ラベル等を使用することが望ましい。

〔行政・保険・その他〕 

Q:検査のために使用する医薬品を院外処方せんで交付できるか?(薬局)

A:

検査のための医薬品(検査薬)を処方せんで投与することは,保険請求上なじまないものと解釈されている。診療報酬の医科点数表では,検査薬の費用(薬剤料)については算定可能とされているが,処方料,調剤料,処方せん料,調剤技術基本料などの技術料の算定は認められていない。処方せんによる検査薬の投与については,その行為が禁止されているわけではないが,検査は医療機関の中で完結するものなので,基本的に院内投与が前提と考えられている。そのため,保険薬局においても検査薬に係る調剤料などの技術料の算定は認められていない。(調剤と情報 12(2),187,2006.より)

Q:浸煎薬,湯薬とは?(薬局)

A:

浸煎薬とは生薬を浸煎し,液剤として製したもの。湯薬とは2種類以上の生薬(粗切,中切または細切したもの)を混合調剤し,患者が服用するために煎じる量ごとに分包したものをいう(保医発第0227001号,平成16年2月27日)。

 

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