薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2006年3月)

〔医薬品一般〕

Q:ザイバン™(Zyban™)という禁煙薬があるらしいが,何か?(一般)

A:

ザイバン™(成分:塩酸ブプロピオン,メーカー:グラクソ ウエルカム)はニコチンを含まない禁煙治療薬。ブプロピオンは抗うつ薬としても使用されている。作用機序は不明だが,ニューロンの再取り込みを阻害して,ノルアドレナリンやドパミンの作用を増強すると推測されている。欧米では処方せん薬として用いられているが,日本では未承認である。インターネット等で個人輸入して使われているが,英国で因果関係の否定できない死亡例が報告されていることから,厚労省は平成14年1月18日付で注意喚起している。

Q:胃を切除した患者にホモクロミン™やペリアクチン™が処方されているが,なぜか? (薬局)

A:

胃切除後の患者ではダンピング症候群(食後30分くらいの間に出現するセロトニン,ブラジキニン,ヒスタミン等の血管作動性物質の分泌等に関係した早期ダンピング症候群と,食後2〜3時間後に出現する低血糖に関係した後期ダンピング症候群がある)が患者の約20〜45%に出現すると言われている。早期ダンピング症候群の治療として,これらの血管作動性物質に対し食前に抗ヒスタミン・抗ブラジキニン作用のホモクロミン™(塩酸ホモクロルシクリジン)や抗ヒスタミン・抗セロトニン作用のペリアクチン™(塩酸シプロヘプタジン)などが投与される(保険適応外使用)。

Q:インスリンの自己注射の時,消毒はしなくていいと医師は指導しているようだが?(薬局)

A:

消毒が面倒で外出時のインスリン注射を拒否する患者もいる。欧米では,消毒を省略しても感染は認められず,衣服の上から注射しても安全と報告され,実践されてきた。日本でも不要と指導する専門家も多く,インスリン注射時における消毒は患者の選択に任せることも多い。

Q:PEGとは何か?(薬局)

A:

PEGとは経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:PEG)のことで,胃内視鏡を使って腹部の壁と胃の壁を通して小さな穴(胃瘻)を造り,その穴にチューブを入れる,開腹手術を行わない侵襲が少ない手術である。脳血管障害等の後遺症で意識障害や嚥下障害があり,食事や服薬等の経口摂取ができない患者や誤嚥性肺炎を繰り返す患者等に,全身状態の改善を目的として,中心静脈栄養や経鼻栄養に変わり,そのチューブを通して栄養補給を行う。患者の苦痛や介護者の負担が少なく,長期使用できる。経口的に十分に栄養摂取が可能となり胃瘻が不要となった場合は,チューブを抜くだけで数時間で胃瘻の穴は閉じる。

Q:薬物の水溶性,脂溶性の判断は何でするのか?(薬局)

A:

n-オクタノール(油)/水 分配係数により判断する。1より大きければ脂溶性,1より小さければ水溶性と分類することができる。通常,分配係数は対数をとり,logPで表され,脂溶性は+,水溶性は−となり,脂溶性が高いほど数値は高くなる。


〔安全性情報等〕

Q:ぶどう膜炎による緑内障には,なぜ縮瞳薬は使われないのか?(薬局)

A:

結膜血管拡張作用と血液-房水柵の透過性の亢進により炎症を助長し,また縮瞳状態での虹彩後癒着,瞳孔遮断などを起こしやすく,視力障害を助長するので禁忌である。

Q:膀胱炎でミノサイクリンが処方された。めまいがするが,薬のせいだろうか?(一般)

A:

副作用でめまいが現れることがある。動物実験(ヒト常用量の15倍相当量,6週間連続投与)では,蝸牛の外毛細胞の消失とコハク酸脱水素酵素の活性消失が認められ,平衡感覚を司る前庭器官では一部に卵形のう斑の変化が認められた。一方,1〜2週間の短期投与では変化がみられず,臨床用量では内耳毛細胞に不可逆的障害を残すものではないと言われている。女性,投与1〜2日目に多く発現。通常,最終投与後3〜12時間で消失する。


〔行政・保険・その他〕

Q:医薬品に使用期限が書いてあるものと書いてないものがあるが,なぜか?(薬局)

A:

薬事法第50条第10号により,厚生労働大臣の指定する医薬品(製造販売後適切な保存条件のもとで3年以内に性状および品質が経時変化を起こす恐れのある有効成分を含有する医薬品)は使用期限の表示が義務づけられている(昭和55年9月26日 厚生省告示第166号)。有効期間・有効期限が記載されている医薬品および記載が義務づけられている医薬品でも,3年以上の安定性が保証できる医薬品は,使用期限表示の義務はない。また同じ成分の医薬品でもメーカー間の製剤技術の差により期間が異なることもある。ただし,使用期限表示の義務がない医薬品でも,メーカー独自で自主的に使用期限を表示しているものもある。

Q:4月から領収証の発行が義務付けられるが,保険薬局の領収証の内容はどの程度の記載が必要なのか?(薬局)

A:

調剤報酬については,点数表の各節単位で金額の内訳が分かるものを発行することとなっている。平成18年4月1日より施行だが,個別の費用毎に区分した領収証の発行が困難な場合は,6ヶ月間の経過措置が設けられている(ただし,早急な体制整備への努力が求められる)。

Q:一般家屋におけるアスベストの危険性は?(薬局)

A:

建築物では,@耐火被覆材等として吹き付けアスベスト,A屋根材,壁材,天井材等としてアスベストを含んだセメント等を板状に固めたスレートボード等が使用されている可能性がある。アスベストは,その繊維が空気中に浮遊した状態にあると危険であると言われており(昭和63年環境庁及び厚生省通知),露出して吹きつけアスベストが使用されている場合は劣化等によりその繊維が飛散する恐れがあるが,板状に固めたスレートボードや天井裏・壁の内部にある吹付けアスベストからは,通常の使用状態では室内に繊維が飛散する可能性は低いと考えられる。戸建て住宅では通常,吹き付けアスベストは使用されていない。マンション等では,駐車場などに使用されている可能性があり,販売業者や管理会社を通じて建築時の工事業者や建築士等に使用の有無を問い合わせてみるなどの対応が考えられる。
(厚労省ホームページ アスベスト(石綿)についてQ&Aより
        http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/07/tp0729-1.html#13

Q:内服するという意味を略してPOと言うのか?(薬局)

A:

POはラテン語per os(経口で)の略語。

 

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