薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2006年4月)

〔医薬品一般〕

Q:グリシルサイクリン系抗菌薬のチゲサイクリンとは何か?(薬局)

 

A:

チゲサイクリン(Tigecycline)はグリシルサイクリン系に属する新しいクラスの抗菌薬で,米国FDAが多剤耐性菌に起因する成人の複雑性腹腔内感染症および複雑性皮膚・皮膚組織感染症の治療薬として承認した静脈注射薬(Tygacil™,ワイス)である。in vitroでMRSAやVREなどを含む多くの薬剤耐性菌に対して活性を有する広域スペクトルの抗菌薬である。本剤はミノサイクリン誘導体で,構造的にテトラサイクリンに似ているため,作用機序も既存テトラサイクリン剤と同一で,蛋白合成阻害による静菌作用を有するが,リボソーム親和性が大きく,テトラサイクリン耐性菌にも有効である。本邦は未発売。

 

Q:OTC薬で不眠に使える薬は何があるか?(薬局)

 

A:

ドリエル™(塩酸ジフェンヒドラミン,エスエス製薬)〔一時的な不眠の症状(寝つきが悪い,眠りが浅い)の緩和〕,レスティ™錠・顆粒(抑肝散加芍薬黄連水製乾燥エキス:ブクリョウ・カンゾウ・サイコ・センキュウ・ソウジュツ・チョウトウコウ・トウキ・シャクヤク・オウレン,大正製薬)〔神経がたかぶり,気分がふさいで,不眠傾向にある次の症状:眠りが浅い,寝つきが悪い,めざめ易い,意欲減退,気分がふさぐ,いらいら,怒りっぽい,あせり,神経質〕などがある。

 

Q:キネダック™錠は食前投与となっているが,食後投与しても効果はあるのか?(薬局)

 

A:

キネダック™錠(エパルレスタット)はグルコースをソルビトールへ変換するアルドース還元酵素阻害薬で,ソルビトールの神経内細胞蓄積を抑制し,糖尿病性末梢神経障害に伴うしびれ感,疼痛等を改善する。健常成人男子10例に本剤50mgを食前30分,食後30分に単回投与した時,食前投与に比べ,食後投与では,Tmaxの遅延(1.05時間→1.45時間),Cmaxの約30%低下(3,896ng/mL→2,714ng/mL),AUCの低下(6,435ng・hr/mL→5,893ng・hr/mL)が認められた。食後投与ではエパルレスタットが有効血中濃度に到達する前にすでに血糖値が上昇してしまい,アルドース還元酵素阻害作用が十分に発揮されないと考えられる。

 

Q:ニンニク注射というものがあるのか?(卸)

 

A:

ニンニク注射は,本物のニンニクが入っているわけではない。医療機関により処方は異なるが,アリナミン™注(塩酸フルスルチアミン)に他のビタミンB群やビタミンC,ブドウ糖などを配合した注射が,ニンニクと同じような臭いがすることからニンニク注射と呼ばれている。疲労回復や体力増強にスポーツ選手などが利用しているが,保険適応外使用である。

 

Q:活性型ビタミンD3の外用薬をいぼ(疣贅(ゆうぜい))に用いることがあるか?(薬局)

 

A:

活性型ビタミンD3はカルシウム代謝調節作用以外に,表皮角化細胞の分化誘導作用や増殖抑制作用,アポトーシス誘導作用,皮膚免疫系細胞の調節作用を有する。半日密封包帯法(ODT)を用いて約3.5ヶ月で治癒し,カルシポトリオール(ドボネックス™),マキサカルシトール(オキサロール™)で同程度の有効性を確認した報告がある(保険適応外使用)。

 

Q:引経薬(いんけいやく)とは何か?(薬局)

 

A:

漢方で使われる用語で,他の薬を引っ張って特定の経絡や病変部位へ誘導する目的の薬を意味する。たとえば塩や酒は腎臓の引経薬である。


〔行政・保険・その他〕

Q:新薬や麻薬・向精神薬で投与期間に制限がある医薬品の場合,ゴールデンウィークには長く処方できるのか?(薬局)

 

A:

1回14日分を上限とされている内服薬・外用薬でも,ゴールデンウィーク,年末年始,海外への渡航の場合は,必要最小限の範囲において1回30日分を限度として投与することが可能である(厚労省保険局医療課長通知:保医発第0404001号 2002年4月4日付)。制限を超えて投薬する場合は,レセプトの摘要欄および院外処方せんの備考欄に,その理由の記載が必要である。

 

 

 

Q:ニコチン依存症の治療に用いる貼付剤のニコチネル™TTSの保険適用は?(薬局)

 

A:

2006年4月1日診療報酬改定により,ニコチン依存症管理料(禁煙指導)が新設され, ニコチン依存症は病気と位置付けられた。禁煙の補助として使われる医療用医薬品のニコチネル™TTSは6月1日より薬価基準に収載され,保険適用となった。

 

Q:シックハウス症候群の原因物質には何があるか?(薬局)

 

A:

シックハウス症候群は,住宅の高気密化や化学物質を放散する建材・内装材の使用等により,新築・改築後の住宅やビルにおいて,化学物質による室内空気汚染等により,居住者に様々な体調不良が生じる状態をいう。症状が多様で,症状発生の仕組みをはじめ未解明な部分が多く,様々な複合要因が考えられることから,シックハウス症候群と呼ばれている。症状は,目や鼻の異常,頭痛,喉の痛み,皮膚の障害,呼吸器障害,精神状態の不良,疲労感,倦怠感などである。室内において発生する代表的な化学物質として,ホルムアルデヒド,トルエン,キシレン,パラジクロロベンゼン,エチルベンゼン,スチレン,クロルピリホス,フタル酸ジ-n-ブチル,テトラデカン,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル,ダイアジノン,アセトアルデヒド,フェノブカルブの13物質があり,建材や施工用接着剤,塗料,防蟻剤などに用いられている。また室内空気中の総揮発性有機化合物量(TVOC)の暫定目標値が設定されている。厚労省ではこれらの室内濃度指針値を設定し,ホームページに掲載している。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/02/h0208-3.html  

 

 

 

 

 

close