〔医薬品一般〕
Q:「ブジー施行」とはどういうことか?(薬局) |
ブジー(bougie)とは,診断や治療に用いる弾力性のあるゴムまたは金属等でできている管状の細長い棒状の器具のことで,主に管腔になった臓器(耳管,涙管,食道,腸,胆管,子宮頸管,尿管など)が狭窄により通過障害を起こしている部分を拡張するために用いるが,その行為をブジーとも言う。用途,対象器官に応じて,種々の形状,性状,材質のものがあり,ゾンデ(消息子)として用いたり,管腔内への薬物塗布などにも用いられる。 |
Q:男性不妊症に,クエン酸クロミフェン(クロミッド™)を使うことはあるのか?(薬局) |
抗エストロゲン製剤のクロミッド™(25〜50mg/日)は,視床下部のエストロゲンレセプターに競合的に結合し,ネガティブフィードバックを抑制して内因性のゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)分泌を亢進させる。女性不妊症には排卵誘発剤として用いられるが,精巣からのテストステロン分泌を亢進させて精子数を改善することが報告され,男性不妊症に保険適応外使用される。効果が発現するまで最低でも数ヶ月の投与が必要である。 |
Q:オスグッド・シュラッター病とは?(卸) |
膝関節の前面下部の骨突出部(脛骨粗面)の骨軟骨炎で,スポーツをしている10〜15歳の成長期の男児に多く発症する。成長期には脛骨粗面に成長軟骨帯があり,飛んだりはねたりすると大腿四頭筋の収縮により脛骨粗面が強く引っ張られ,この軟骨部位に炎症や剥離が生じるために起こる。症状は脛骨粗面に軟骨性隆起が生じ,疼痛,腫脹,圧痛を訴え,運動により増悪し,正座や膝の屈伸が困難となる。片側性や両側性で,全身性障害はない。X線検査で脛骨粗面骨端の骨化異常が認められるが,運動の中止で疼痛は改善し,通常は数週間〜数ヶ月以内で自然に解消する。スポーツ(激しい運動),特に深い膝の屈曲を避ける。処置は痛みの緩和,まれにギプスによる固定,副腎皮質ステロイドの病変内注入,膝蓋腱内の骨片や粗面部の骨隆起の外科的除去等が必要となる。 |
Q:糖尿病関連の臨床検査で,GAとは何か?(薬局) |
GAとは,血液中のタンパク質の主要成分アルブミンがブドウ糖と結合した糖化タンパクのグリコアルブミン glycoalbumin(glycated albumin,糖化アルブミン)のことである。アルブミンの生体内半減期が17〜23日であることから,過去1〜2週間の比較的短期間の血糖コントロール状態を反映する。ちなみにグリコヘモグロビンHbA1cは赤血球の寿命120日から考えて過去1〜2ヶ月の血糖コントロール状態を反映する。GAはHbA1cに比べ生成速度が4〜6倍と早く,血中半減期が短いことから,血糖値の変動に比較的速やかに応答して推移するので,治療効果の把握や投薬量の適否の判断に有用である。基準値は12.4〜16.3%で,これより高値は血糖値が高い状態が続いていることを示す。 |
Q:耳鼻科で行われるグリセロールテストとは?(薬局) |
グリセロールテストとは,メニエール病の主病態である内リンパ水腫(蝸牛,前庭の内リンパ腔内に見られるリンパ液の貯留)を診断するための試験である。グリセロール(グリセリン)の利尿作用により水腫を改善させて,聴力の改善の有無により評価する。予め絶食させ,純音聴力検査後直ちに1.3g/kgのグリセロールに同量の生理食塩液を加え服用させる。3時間の安静臥床後,再度純音聴力検査を行う。簡易的に10%グリセロール500mLを2時間かけて点滴静注し,その前後の純音聴力検査の結果を比較する方法も用いられる。判定基準は聴力図による全7周波数のうち,2つ以上の周波数について10dB以上の改善をみた時は陽性,また3周波数(250,500,1000Hz)で平均5dB,1周波数について10dB以上の改善を示した時は偽陽性とする。 |
〔安全性情報等〕
Q: H1-受容体拮抗薬(フマル酸ケトチフェン等)が痙攣を誘発するのはなぜか?(薬局) |
ヒスタミンは中枢神経系において神経伝達物質として様々な役割を果たしているが,そのうち抗痙攣作用は中枢のH1-受容体により仲介されることが動物実験で示唆されている。H1-受容体拮抗薬による催痙攣作用が幼弱動物で認められており,GABA(γ-アミノ酪酸)などによる中枢神経の抑制系が十分に発達していない乳幼児では,ヒスタミン系が神経の抑制系として働いているとされている。血液脳関門を通過し,脳内に移行したH1-受容体拮抗薬により,ヒスタミンニューロンによる抗痙攣作用が阻害され,特にてんかん素因のある小児や脳内の神経細胞の未熟な乳幼児では痙攣などが誘発すると考えられる。 |
Q:疥癬治療に使用する安息香酸ベンジルの作用機序,毒性は?(病院薬局) |
作用機序は不明だが,シラミやダニの神経系に作用して殺虫すると考えられている(保険適応外使用)。動物実験で皮膚1回塗布によるLD50は5mL/kg(ウサギ),反復塗布のLD50は2mL/kg/日で90日である。過量投与では水疱,瘙痒感,発赤,皮膚鱗片,排尿困難(尿もれ),攣縮,意識喪失などがみられる。 |
Q:1歳児が蚊取り線香を少し食べたらしいが,毒性は?(薬局) |
蚊取り線香は,ピレスロイド系殺虫剤(dl,d-T80アレスリンまたはアレスリン,ピレトリン等)を主成分とし,1巻(約13g)に0.2〜0.5%の殺虫成分を含有する。中毒量は乳児(5kg)で2巻,幼児(10kg)で3〜4巻,成人は20巻で,一般にひとかけら程度の誤食では中毒症状は出現しない。特別な処置は不要で,口をゆすいで様子を見る。大量摂取では,嘔気,嘔吐,下痢,口唇・舌のしびれ感,めまい,顔面蒼白,痙攣などが起こる。 |
〔行政・保険・その他〕
Q:薬局の薬剤師の員数は?(薬局) |
薬局における1日平均取り扱い処方せん枚数が40までは1とし,それ以上40またはその端数を増すごとに1を加えた数となっている。1日平均取り扱い処方せん枚数は,前年における総取り扱い数(眼科,耳鼻咽喉科および歯科の処方せん枚数×2/3+その他の診療科の枚数)を前年の業務実施日数で除して得た数とする。ただし,前年に業務を行っていないか,または3ヶ月未満の場合は,推定によるものとする(薬局および一般販売業の薬剤師の員数を定める省令,最終改正 平成16年7月9日 厚生労働省令第112号より)。 |
Q:ヤマビルとは?虫よけ剤(ディート)は効果があるのか?(薬局) |
ヤマビル(チスイビル)は環形動物(ミミズの仲間)ヒル綱,顎蛭目,ヤマビル科に属する。雌雄同体で,赤褐色で背面に3本の黒い縦線があり,体表は3〜5cmで伸びると5〜7cmになる。体の前後側面に吸盤を持ち,尺取り虫のように移動する。5〜10月(特に6〜7月)の気温が20〜25℃以上で雨が降っているとき,雨上がりに特に多く見られ, 11〜4月は越冬する(土壌,苔,落葉,石の下等)。水分の多い沢筋,吸血対象となる動物が通る歩道や獣道,作業のために人の出入りが多いスギ林などに生息している。吸血する際に唾液腺から分泌されるヒルジンは,血液凝固阻止作用,モルヒネ様の麻酔作用,毛細血管透過性亢進作用を有するので,吸血されてもほとんど気づかず,吸血されると出血は2〜3時間止まらない。虫よけ剤(ディート)はヒトなどが発散する炭酸ガスで誘引される吸血害虫触覚に作用して,炭酸ガスを感じなくさせて忌避効果を発揮するが,ヤマビルも炭酸ガスで誘引されるので,2〜3時間の短時間であれば効果がある。 |
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