〔医薬品一般〕
Q: 高プロラクチン血症の治療にドパミン作動薬が使われるのはなぜか?(薬局) |
脳下垂体前葉から分泌されるプロラクチンは視床下部由来の放出抑制因子(Prolactin-release Inhibiting Factor:PIF)と放出促進因子(Prolactin Releasing Factor:PRF)により調節されている。生理的条件下ではPIFによる抑制の方が優位となっており,主なPIFはドパミンで,プロラクチンとドパミンにはフィードバック機構が存在している。したがって高プロラクチン血症に対し,ドパミン作動薬のブロモクリプチン(パーロデル™),テルグリド(テルロン™),カベルゴリン(カバサール™)を使用すると,プロラクチンの分泌が抑制される。 |
Q:リン酸コデインをがんの疼痛に使いたいが,どのように使ったら良いか?(医師) |
弱オピオイド鎮痛薬のリン酸コデインは,代謝されて約10%がモルヒネとして作用する。鎮痛作用はモルヒネの1/6,アスピリンの10〜20倍で,軽度〜中等度のがん性疼痛(WHO3段階除痛ラダーの2段階)にNSAIDと併用される。開始量は1回20〜30mg,4〜6時間毎,効果を見ながら30〜50%をめどに漸増する。有効限界量は1日300mgで,それを超えると副作用が多く見られるようになり,2〜3回の増量で疼痛が軽減しない場合はモルヒネへ切り替える。 |
Q:尋常性白斑にプロトピック™軟膏が処方されているが,使用することがあるか?(薬局) |
尋常性白斑は,メラノサイトの消失あるいはメラニン色素生成機能の停止により色素脱失する後天性の皮膚疾患である。A型(汎発型と限局型を含む)とB型(神経分節型)があり,原因は明らかでないがA型はT細胞を介した自己免疫性の病態とされているため,T細胞活性化を抑制する免疫抑制薬のプロトピック™軟膏(局所用タクロリムス)が使用されることがある(保険適応外使用)。無作為二重盲検比較試験では,白斑を有する小児20例の左右対称の病変に対して,0.1%プロトピック™軟膏と0.05%プロピオン酸クロベタゾールクリーム(strongestの強さの副腎皮質ステロイド)が投与された。タクロリムスはクロベタゾールと同等の効果を示し,副作用では,周囲の色素増強,皮膚萎縮,毛細血管拡張などは認められなかった。 |
Q:線維筋痛症でリボトリール™錠を服用しているが,どのような効果があるのか?(一般) |
慢性疼痛に対し,鎮痛薬(NSAID,オピオイド等)だけでは痛みのコントロールが困難な場合に鎮痛補助薬として用いられる(保険適応外使用)。抗けいれん薬のクロナゼパム(リボトリール™,ランドセン™)はGABA受容体作動薬で,脊髄レベルでの興奮性アミノ酸の分泌抑制,神経の過分極をもたらして痛みを軽減する。 |
Q:肥満で中性脂肪が高いが,薬を飲んでも効果がない。病院からリパーゼに作用して肥満に効果がある薬の治験についての話があった。どのような薬か?(一般) |
脂肪分解酵素の膵リパーゼの働きを阻害して,食事からの脂肪吸収を抑制することにより抗肥満作用を示す薬剤にゼニカル™(一般名:オルリスタット)がある。肥満症に対して有効で,外国ではすでに市販されている。日本ではまだ認可されておらず,肥満症および肥満性糖尿病治療薬として現在治験が行われている。 |
Q:フェニルアラニンはうつ病に効果があるのか?(一般) |
フェニルアラニンは必須アミノ酸で,主に肝臓でチロシンに変換後,諸臓器で利用される。脳内では神経伝達物質(ドパミン,エピネフリン,ノルエピネフリン)の前駆体として働き,精神神経系疾患(うつ病,パーキンソン病,注意欠陥多動症など)への効果が期待されるが,異性体により効果は異なり,ヒトでの有効性を示す科学的データは不十分である。 |
Q:悪夢を見て,寝ている間に横の人を叩いたりするらしいが,治療薬はあるか?(薬局) |
悪夢はParasomnias(睡眠時随伴症)の1つで,レム睡眠の時に生じる。寝言や悪夢でうなされたり,夢の内容に一致して寝ている時に横の人を突然叩いたり蹴ったりする,レム睡眠中の異常行動(筋肉活動が低下しないために叩いたりする)はレム睡眠行動障害(RBD:REM sleep Behavior Disorder)と呼ばれ,50歳以上の男性に多い。治療には抗けいれん薬のクロナゼパム(リボトリール™,ランドセン™)が使用される(保険適応外使用)。 |
Q:トリガーポイント注射とは?(薬局) |
A:
トリガーポイント(Trigger Point)とは,直訳すると「ひきがね点」という意味で,慢性的な筋疲労が持続した時や外傷により,骨格筋あるいは筋膜内の索状硬結内に出現する発痛点である。針の刺入,加熱または冷却などにより関連痛を引き起こす過敏点でもあり,痛みを自覚する疼痛部位から離れた位置に存在することもある。トリガーポイントの血液循環が悪くなるとさらに過敏化したり,発痛物質を放出して,痛みやしびれを発生させる。トリガーポイント注射とは,このトリガーポイントに生理食塩液や局所麻酔薬を筋肉注射し痛みを取り除く治療法で,ペインクリニックなどで行われている。また注射針を刺入しただけで効果が見られることもある。 |
〔安全性情報等〕
Q:ダイエットで寒天を毎食前に食べる患者がいるが,医薬品との相互作用は問題ないか?(薬局) |
A:
寒天はマクサ(テングサ)やオゴノリ,その他の同属植物または紅そう類から得た粘液を凍結乾燥したもの。成分は食物繊維の水溶性多糖類アガロース(60〜80%),アガロペクチン(20〜40%)で,ヒト体内で消化・吸収されにくく,腸管の蠕動運動を促すので,慢性便秘や低カロリー食品としてダイエットに利用される。一般に医薬品を服用している場合,吸収が低下し作用が減弱する可能性があるので,大量に摂り過ぎないようにする。 |
Q:ゲル剤を他の軟膏剤と混合しても問題はないか?(薬局) |
A:
ゲル基剤は,pHの変化,塩や界面活性剤の添加,および温度変化などにより相分離を起こし粘度が低下するため,他の軟膏剤(油脂性,水溶性,O/W型,W/O型,ゲル)との混合は避ける。 |
〔行政・保険,その他〕
Q:処方せん,薬歴,調剤録の保管期間は?(薬局) |
A:
処方せんは調剤完了の日から3年,薬歴,調剤録は最終の記載の日から3年。 |
Q:患者が処方せんをFAX送信した後に紛失した場合,どうしたらよいか?(薬局) |
A:
FAX処方せんによる調剤は,あくまでも正規の処方せんに基づく調剤のための準備行為であり,無処方せん調剤はできないため,処方せんを再発行してもらわなければならない。処方せんの再発行にかかわる費用は患者の自己負担である。 |
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