薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2007年4月)

〔医薬品一般〕

Q:脚がムズムズするのでビ・シフロール™錠(プラミペキソール)という薬をもらったが,本で調べたらパーキンソン病の薬となっているが?(一般)

A:

ビ・シフロール™は選択的D受容体作動性の抗パーキンソン病薬だが,レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群,むずむず脚症候群)への有用性が認められている(0.125〜1.5mg/日)。レストレスレッグス症候群の一因として,脳内でのドパミンの機能低下が示唆され,欧米では中等症から重症のレストレスレッグス症候群に適応症を有している。日本では未承認で保険適応外使用であるが,適応追加のための第3相臨床試験が2006年10月に開始された。

Q:甲状腺機能亢進症で抗甲状腺薬のメルカゾール™が投与されている人に,今回甲状腺ホルモン剤が併用されているが,どうしてか?(薬局)

A:

甲状腺機能亢進症の薬物療法では抗甲状腺薬を投与するが,投与量は血液中の甲状腺ホルモン値を見ながら調節し,徐々に減量して中止する。抗甲状腺薬の用量の調節が難しい時などには,過剰の抗甲状腺薬により甲状腺ホルモンの産生を抑制しながら,血中甲状腺ホルモン値を正常化するために,甲状腺ホルモンを併用する療法が行われることがある(block & replace療法)。

Q:アクトス™の説明でMRが「ピーパーガンマ」といっていたが,何のことか?(薬局)

A:

PPARγ(Peroxisome proliferator-activated receptor γ:ペルオキシゾーム増殖促進受容体)のことで,主として脂肪細胞やマクロファージに発現する。チアゾリジン誘導体のアクトス™(ピオグリタゾン)はインスリン抵抗性改善薬で,PPARγのアゴニストとして作用し,その活性化により脂肪細胞の分化を促進して小型脂肪細胞を増加させ,さらに脂肪細胞やマクロファージからの種々のアディポカインの分泌を調節し,インスリン抵抗性,脂質代謝異常,炎症を改善する。

Q:外国の薬でMeclizine25mgは何の薬か?同じ成分の医療用医薬品はあるか?(薬局)

A:

メクリジンは抗ヒスタミン薬で,制吐作用が強く,動揺病等に用いられる。日本では一般用医薬品(鎮うん薬)のセンパア™,タイザー™,トラベルソフト™等に含まれる。医療用医薬品では以前ボナミン™が市販されていたが,現在は薬価基準から削除されている。

Q:臨床検査値でヒアルロン酸が高値を示すのはどんな時か?(薬局)

A:

ヒアルロン酸(HA)はN-アセチルグルコサミンとD-グルクロン酸が重合した高分子量の酸性ムコ多糖類で,細胞間質に多い。結合組織中に広く分布し,とくに硝子体,関節液,皮膚,軟骨に存在する。その合成は主に線維芽細胞で行われ,基質の分解により遊出したHAはリンパ節の上皮細胞で代謝され,残りがリンパ管を経て血中に入り,肝臓の内皮細胞で異化される。血中HAが上昇する原因として,炎症性刺激による合成の促進,基質における分解の亢進,肝臓における代謝の異常などがあり,線維化マーカーとして臨床的意義がある。正常値は50ng/mL以下で,肝硬変,慢性肝炎(活動性),関節リウマチ(活動性),強皮症,中皮腫,癌の結合組織への浸潤などで高値を示す。

Q:臨床検査値のIPとは何か?(薬局)

A:

血液中のリン(P)は主に無機リン(IP:Inorganic Phosphorus)として存在し,基準値は2.5〜4.5mg/dLである。副甲状腺ホルモンおよびビタミンDにより調節され,副甲状腺機能亢進症,ビタミンD不足(くる病,骨軟化症),栄養障害等で低値を示し,副甲状腺機能低下症,腎不全,横紋筋融解症等で高値となる。

〔安全性情報等〕

Q:ニコチン酸誘導体で起こる顔面潮紅や頭痛の改善にアスピリンを使用するか?(薬局)

A:

ニコチン酸誘導体の副作用として,血管内皮細胞のプロスタグランジン(PGI)生成促進等による末梢血管拡張作用により,顔面潮紅や頭痛等が現れることがある。少量より開始し漸増することで耐性が得られ,少量のアスピリン等を併用することである程度予防できる。また,食事中あるいは食直後に内服する。

Q:ヒ素の慢性中毒の症状は?(薬局)

A:

ヒ素は大気や水質・土壌,食品中などにも含まれる微量元素で,ヒ素による急性・慢性中毒はほとんどない。一般にヒ素化合物では有機ヒ素より無機ヒ素の方が毒性は強く,特に三酸化ヒ素(俗称:亜ヒ酸)による中毒が多い。慢性中毒の症状は,食欲不振,腹痛,下痢,嘔吐,肝障害,貧血,汎血球減少症,多発性神経炎,爪の変形,皮膚の色素沈着,角化症,皮膚や肺の発がんリスクの上昇等が現れる。水質基準のヒ素およびその化合物の基準値では,ヒ素の量に関して,0.01mg/L以下と定められている。

〔行政・保険〕

Q:dl-塩酸メチルエフェドリンは覚せい剤原料か?(薬局)

A:

10%を超えるdl-塩酸メチルエフェドリンは覚せい剤原料である。

Q:配置販売業者は学校や事業所に配置薬を配置してよいか?(支部)

A:

配置販売業は個々の消費者に対する行商形態の販売業であるから,学校および事業所などは,配置対象とは認められない (昭和38年11月26日 薬事第93号 厚生省薬務局薬事課長通知)。

〔その他〕

Q:オリゴ糖の作用は?(薬局)

A:

オリゴ糖とは,単糖類(ブドウ糖や果糖など)がグリコシド結合で結ばれたものの総称で,甘味をもつものが多い。オリゴとはギリシャ語で「少ない」を意味し,従来は単糖が10個以下とされていたが,大きさについては明確な規制はない。オリゴ糖は人工的にも作られるが,本来は動物や植物に存在し,腸内ビフィズス菌の増殖促進作用,便通の改善,高脂血症の改善,たんぱく質の消化吸収改善等の特有な働きや機能を持っている。消化性と難消化性に分類され,ビフィズス菌を増やして腸内の環境を良好にしおなかの調子を整える特定保健用食品(いずれも難消化性)として,イソマルトオリゴ糖,ガラクトオリゴ糖,キシロオリゴ糖,大豆オリゴ糖,乳果オリゴ糖(ラクトスクロース),フラクトオリゴ糖などの製品が市販されている。

Q:皮膚科の処方せんに「○○軟膏2本 aa 5g」と書いてある。「aa」の意味は?(薬局)

A:

ギリシャ語anaの略で,「それぞれ,各々,同量に」を意味する。

Q:携帯用測定器で「パルスオキシメーター」とは何か?(薬局)

A:

経皮的動脈血酸素飽和度測定器(SpO:Oxygen saturation by pulse oxymetry)のこと。動脈血酸素分圧(PaO:arterial oxygen tension)を測定する代わりに,動脈血液中のヘモグロビンの何%が酸素と結合しているかを表す動脈血酸素飽和度(SaO:arterial oxygen saturation)と脈拍数を,非侵襲的,連続的かつリアルタイムに測定する医療機器。センサーで指先を挟み,指に波長の異なる2種類の光を当て,透過した光の量を測定することにより,動脈血酸素飽和度(SaO)を算出する。麻酔や集中治療のモニター,循環不全や呼吸不全患者の管理,在宅酸素療法等で使用される。

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