〔医薬品一般〕
Q:アルツハイマー痴呆症の治療に用いられるNMDA受容体拮抗薬の作用は?(薬局) |
NMDA受容体拮抗薬は,脳内の興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体のひとつであるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体への拮抗作用を示し,グルタミン酸の過剰による脳内神経の障害や変性に保護的に働き,アルツハイマー型痴呆症の症状の進行を抑制する。ドイツのメルツ社が開発した塩酸メマンチンがすでに欧米で認可されており,日本ではアスビオファーマが軽度・中等度および高度アルツハイマー型痴呆症の臨床試験を行っている(2007年9月現在 Phase3)。 |
Q:解離性障害とは?(薬局) |
解離性障害は,心的外傷(トラウマ)や解決困難な心理的葛藤に曝された場合に,それらにまつわる観念や情動,記憶を切り離してしまうという無意識の防衛機構(解離)のために生じる。自分の経歴の一部や,自分に対する重要な記憶が突然失われたり(解離性健忘),家庭や職場から突然に予期せぬ放浪に出,過去を想起できずに,新しい土地で新しい人格(同一性)を身につけて生活したり(解離性とん走),2つ以上の人格が交代する(解離性同一性障害,以前は多重人格障害と呼ばれていたもの)などの症状を呈する。急激な不安にはベンゾジアゼピン系の抗不安薬を,強い不安には抗精神病薬を少量使って,不安・緊張を緩和してから精神療法を行う。環境に症状増悪のストレス要因があれば,環境調節により解決する。 |
Q:止血軟膏の組成は?(薬局) |
医療機関ごとに処方内容は異なり,下記のような処方例がある。 (Rp.1)塩化第二鉄2g,ホモスルファミン7g,塩化カルシウム3g,白色ワセリン88g (Rp.2)塩化第二鉄3g,塩化カルシウム2g,白色ワセリン95g |
Q:油脂性以外の基剤を使用した鎮痛薬の坐剤には何があるか?(薬局) |
インダシン坐剤(万有),インドメタシン坐剤「イセイ」(イセイ),レペタン坐剤(大塚)などで,これらの基剤は水溶性のマクロゴールである。 |
〔安全性情報〕
Q: ビオチンと卵白は何か相互作用があるのか?(薬局) |
卵白にはアビジン(糖タンパク)が含まれており,消化管でビオチンと強く結合してビオチン-アビジン結合体を形成する。したがって多量の生卵白の長期摂取により,ビオチンの吸収が阻害されてビオチン欠乏症を生じることがある。ただし加熱した卵白では,アビジンの立体構造が変化してビオチンと結合しないため問題はない。 |
Q: 1歳7ヶ月の小児が園芸用の固形肥料を食べたらしいが,処置は?(医師) |
肥料の主成分は,窒素,リン,カリウムである。その他にカルシウム,マグネシウム,イオウ,鉄,ビタミンなどを含有する肥料もある。ほとんど無毒で,少量の場合,症状は出現しない。水や牛乳を飲ませてしばらく様子を見る。多量の場合,嘔吐や下痢等の消化器症状が現れる可能性がある。硝酸塩含有品を多量,頻回の誤食時には胃腸炎の可能性があり,幼児ではチアノーゼを引き起こすことがある。多量誤食時は,一般的な中毒に対する処置と対症療法を行う。 |
Q:プロスタール™(クロルマジノン酢酸エステル)で耐糖能低下が起こるのはなぜか?(薬局) |
A:
クロルマジノン酢酸エステルは黄体ホルモン剤である。黄体ホルモンにより肝細胞や末梢細胞のインスリン受容体が減少,またはインスリン受容体に対する親和性が低下し,インスリン抵抗性が生じると考えられる。本剤投与中は,血糖値や尿糖に注意する必要がある。 |
〔行政・保険〕
Q:在宅訪問薬剤管理指導の届出は社会保険事務局にしているが,介護保険の居宅療養管理指導を行う場合には届出が必要か?(薬局) |
A:
保険薬局は介護保険において,指定居宅療養管理指導サービス事業者として「みなし規定」が適用されて自動的に指定されており,別途届出は不要である(介護保険法第71条第1項)。指定を不要とする場合には,都道府県知事に対し「別段の申し出」を行っておく必要がある。 |
〔その他〕
Q:DHEAとは何か?(薬局) |
A:
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン Dehydroepiandrosterone,別名:プラステロン)は,ステロイドホルモンであるテストステロンおよびエストラジオールの前駆体で,弱いアンドロゲン(男性ホルモン)作用を有する。ヒト体内では主に副腎皮質や肝臓,精巣で合成され,大部分は硫酸抱合体として血中に分泌されている。俗に「若返りのホルモン」「ダイエットによい」「うつによい」「男性の性機能改善」「筋肉をつける」「免疫によい」などと言われている。海外ではサプリメントとして市販されているが,日本では「医薬品の範囲に関する基準(食薬区分)」で「専ら医薬品として使用される成分本質」なので,健康食品としての販売は認められず,海外から個人輸入して利用される。作用が強いことから,自己判断での利用は注意を要する。 |
Q:カキドオシの薬効,用法は?(薬局) |
A:
カキドオシ(シソ科,Glechoma hederacea var.grandis)を春の開花期に,根ぎわから全草を刈り取り,陰乾してよく乾燥させたものが生薬の連銭草である。民間薬として子どもの疳の虫にも用いられ,カントリソウ(疳取草)とも呼ばれている。薬効は利尿,鎮咳,消炎,解毒。消炎,利尿薬として黄疸,胆石,腎炎,尿路結石に用い,糖尿病,子どもの疳の虫にも応用される。糖尿病や結石には1日量15gに水600mLを加え,約2/3量に煎じて1日3〜4回,口が乾いた時に飲む。子どもの疳の虫や虚弱体質には1日量6〜10gを煎じて1日3回に分けて食間に服用する。 |
Q:周産期医療とは何か?(薬局) |
A:
妊娠満22週から生後満7日未満までの期間を「周産期」と言う。この期間は,母体・胎児や新生児の生命に関わる事態(合併症妊娠,分娩時の新生児仮死など)が発生する可能性がある。周産期を含めた前後の期間における母と子の健康を守るための医療は,突発的な緊急事態に備えて産科医,小児科医,その他の医療スタッフの協力による一貫した総合的な体制が必要であり,特に「周産期医療」と表現されている。 |
close |