薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2007年11月)

〔医薬品一般〕

Q: のどの肉腫にプロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方されているが,どうしてか?(薬局)

A:

喉頭肉芽腫の主訴は嗄声,咽喉頭違和感,咽喉頭痛,咳嗽等である。その原因は多岐にわたり,咽喉頭手術に起因するもの,気管内挿管後に発生するもの,声の酷使や力み発声によるもの,原因が特定できないものなどである。最近,胃食道逆流症(GERD)に合併する喉頭肉芽腫も報告されており,GERDが原因の場合にはPPIの効果が期待される。

Q:薬剤誘発性ジスキネジアにビタミンEの大量使用は効果があるか?(薬局)

A:

有効性は確立されていない。薬剤誘発性ジスキネジア(主に口の周囲の持続的不随意運動)に,経口摂取で有効性を示唆する報告と,遅発性ジスキネジア患者に1日1,600IU,1〜2年間追跡による無作為化プラセボ比較試験で有意差なしという否定的な報告がある(「健康食品」の安全性・有効性情報より)。

Q:子供が蟯虫症なので家族全員で駆虫したいが,駆虫薬の入手は?(一般)

A:

蟯虫症は集団生活により感染し,容易に再感染するので,虫卵保有者の家族も感染者と同時に駆虫が必要となる。医療用医薬品のパモ酸ピランテル(コンバントリン™錠・ドライシロップ:佐藤製薬)は「処方せん医薬品」で,購入には医師の処方せんが必要となる。一般用医薬品には,パモ酸ピルビニウム(パモキサン™錠:佐藤製薬)が市販されている。

Q:インスリンの皮下注射は,どこに打つと吸収速度が速いか?(薬局)

A:

インスリンの吸収速度は,部位別では,腹部>上腕部の外側>臀部>大腿部の上半分外側,の順に速い。また,注射部位を強くもんだり,入浴後等の体温上昇時,大腿部注射直後のジョギング等の注射部位の運動で吸収を速めることがある。

Q:インフルエンザワクチンのウイルス株はどのようにして決めるのか?2007/2008冬シーズンのワクチン株は?(薬局)

A:

わが国のインフルエンザワクチン製造株は,厚労省健康局の依頼により国立感染症研究所(感染研)が検討し,これに基づき厚労省が決定し,5〜6月に通知される。感染研では,全国の感染症発生動向調査事業により得られた流行状況,および約5,000株の分離ウイルスの抗原性や遺伝子解析の成績,感染症流行予測事業による住民の抗体保有状況調査の成績などに基づき,次年度シーズンの予備的流行予測を行い,ワクチン候補株を選択する。さらにこれらについて,発育鶏卵での増殖効率,抗原的安定性,免疫原性などのワクチン製造株の適格性を検討する。年が明けた1月下旬から,前シーズンの成績,およびその年のインフルエンザシーズンにおける最新の成績を検討して,次シーズンの流行予測を行う。さらにWHOにより2月中旬に出される北半球次シーズンに対するワクチン推奨株とその選定過程,その他の外国における諸情報を総合的に検討して,3月末までに次シーズンのワクチン株を選定する。2007/2008冬シーズンのインフルエンザワクチン株は,Aソ連型:A/ソロモン諸島/3/2006(H1N1),A香港型:A/広島/52/2005(H3N2),B型:B/マレーシア/2506/2004である。

Q:1日1回投与の降圧薬を服用している患者が海外旅行に行くが,服用方法は?(薬局)

A:

1日1回の薬は,@日本で服用してから24時間ごとに服用する方法と,A現地時間に合わせて服用する方法がある。@は薬を服用する時刻が睡眠時間帯に重ならなければ比較的容易である。Aは長期の渡航に向いている。1日2回服用する薬は12時間ごと,1日3回の薬は8時間ごとに服用すればよく,飛行機の中でも同様である。

〔安全性情報等〕

Q: 高齢者に使いやすい筋弛緩作用の弱い睡眠薬は何があるか?(薬局)

A:

入眠障害に使うゾルピデム(マイスリー™),ゾピクロン(アモバン™等),中途覚醒に使うクアゼパム(ドラール™等)は,催眠鎮静作用を示すベンゾジアゼピンω1受容体選択性が高く,転倒などの原因となるベンゾジアゼピンω2受容体に由来する筋弛緩作用が少ない。また,非選択的ベンゾジアゼピン受容体作用ではあるが,筋弛緩作用が少ないリルマザホン(リスミー™等)やロルメタゼパム(エバミール™,ロラメット™)も高齢者には使いやすい。さらにロルメタゼパムはグルクロン酸抱合による代謝なので,腎障害・肝障害のある場合にも使用しやすい。

Q:インフルエンザの予防接種を受けたら,抗アレルギー薬を服用してはいけないか?(薬局)

A:

抗アレルギー薬は免疫機能には影響しないので,特に問題はない。ただし,アレルギー症状の急性期には予防接種は避け,症状がコントロールされた状態で接種する。

Q:妊婦への日本脳炎ワクチン接種の可否は?(医師)

A:

日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンで,先天感染や奇形を生じる恐れは考えられない。ただし,母体の全身反応,発熱,あるいはショックによる流早産の可能性はあるが,通常,不活化ワクチンで生じることはない。したがって,十分なインフォームド・コンセントを行い,利点があれば接種可能である。

〔行政・保険・その他〕

Q:現在の薬剤師総数は?(薬局)

A:

厚生労働省は医師・歯科医師・薬剤師調査を2年毎に実施しており,平成18年12月31日現在の薬剤師の届出数は,252,533人。

Q:薬局の開設にあたり,どのような書籍を備えつけておかなければいけないか?(薬局)

A:

日本薬局方およびその解説に関するもの〔例:第15改正日本薬局方(解説つき),日薬会員版「第15改正日本薬局方−条文と注釈−」〕,調剤技術等に関するもの〔例:調剤指針,調剤業務指針〕,薬事関係法規に関するもの〔例:薬事衛生六法,衛生行政六法〕,当該薬局等で取り扱う医薬品の添付文書に関するもの〔例:日本医薬品集,取り扱う医薬品の添付文書をまとめて添付文書集としたもの〕,薬局製剤に関するもの(薬局医薬品製造業の許可を受けている薬局)〔例:薬局製剤業務指針〕。

Q:個人情報保護法において,薬局が取り扱う個人情報には何が該当するか?(薬局)

A:

処方せん,調剤録,薬歴,医療機関からの診療情報提供文書,レセプトコンピュータなどの調剤に係るもの,介護保険に係るケアプラン,一般用医薬品等に係る顧客データなどが該当する。法の施行前に取得した情報も,法の規定やガイドラインを遵守する。

Q: こんにゃくを作るときに使用する洗いソーダとは何か?(薬局)

A:

凝固剤の炭酸ナトリウムのこと。無水,1水塩,7水塩,10水塩があり,洗いソーダ(洗濯ソーダ)は10水塩の通称で,速やかに水に溶け,昔から綿布の洗濯に用いられていた。食品添加物の炭酸ナトリウムは無水が使用される。

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