〔医薬品一般〕
Q:手に負傷して病院に行ったら,破傷風の予防注射をされた。必要あるのか,また破傷風の症状は?(一般) |
破傷風は,土壌中に生息する嫌気性芽胞形成グラム陰性桿菌の破傷風菌(Clostridium tetani)が産生する神経毒素(破傷風毒素)による感染症である。5類感染症で,ヒト-ヒト感染はない。転倒などの事故,熱傷,土いじり等による受傷部位からの感染が多い。感染部位で侵入した芽胞が発芽・増殖して毒素を産生する。特徴的な症状は強直性痙攣で,光や音の刺激で増強する。潜伏期間(3 〜21日)の後に局所性症状(顔面筋の痙攣による痙笑,咬筋の痙攣による開口障害,嚥下困難など)から始まり,全身性症状(呼吸困難や後弓反張など)に移行し,自律神経障害(発汗,血圧変動等)をきたし,重篤な患者では呼吸筋の麻痺により窒息死することがある。破傷風菌の芽胞は極めて些細な創傷部位からでも侵入可能で,侵入部位が特定されない報告事例も多い。定期予防接種の対象者である若年者の接種率は70%を上回るが,成人の多くは十分な破傷風抗体を保有していない状況である。事故などで発症の恐れがある患者の予防処置としては,予防接種歴に応じて沈降破傷風トキソイドの接種を行う。定期予防接種が完全に行われてから10年以内であれば,患者は十分な抗体を保有しているが,それ以外の場合では沈降破傷風トキソイドを接種し,創傷の程度により抗破傷風人免疫グロブリンも投与する。 |
Q:唾液分泌過多症の治療法は?(薬局) |
唾液分泌過多症(流涎症)は実際に唾液分泌が亢進している真性のものと,唾液分泌は亢進していないが嚥下障害に起因して唾液が口腔内に貯留して流涎となる仮性のものがある。真性の唾液分泌過多症は原因不明の特発性と口内炎,義歯不適合,脳炎,てんかん,パーキンソン病,心身症,水銀やヒ素などの中毒,胃炎,膵炎などの様々な疾患を背景とする続発性に分類される。続発性であれば原因疾患の治療を優先する。口腔環境の整備に努め,アズレンでの含嗽,カンジダが確認されればミコナゾールが有効である。その他,精神安定薬,トフィソパムなどの自律神経調整薬が有効なこともある。唾液分泌の抑制に抗コリン薬のロートエキスや硫酸アトロピンを使用するが,緑内障や前立腺肥大症に注意する。舌炎や口内炎時の痛みが唾液分泌の刺激となっている場合は,塩酸リドカインのゼリーあるいはビスカスの塗布や含嗽が有効である(保険適応外使用)。 |
Q:GIST(ギスト)とはどんな病気か,治療法は?(一般) |
GIST(消化管間質腫瘍:gastrointestinal stromal tumor)とは,食道・胃・小腸・大腸などの消化管の粘膜ではなく,壁にできる粘膜下腫瘍の一種で,消化管間葉系腫瘍である。GISTの腫瘍細胞は,消化管壁の下にある筋肉層の特殊な細胞(カハール介在細胞)と同じ起源から発生したものだが,胃癌や大腸癌などのいわゆる「癌」は粘膜から発生するので,発生の仕方や再発・転移の特性が異なる。症状が出にくく,発見された時は既に大きくなっている。完治が難しく,抗がん薬や放射線療法はほとんど効果がない。初発で手術可能な場合は外科手術が最も有効で,第一選択となる。完全切除できれば他の消化器癌と比べて比較的治癒率が高い。ただし,再発や手術で切除できない場合は,分子標的薬のイマチニブ(グリベック™)による治療が行われるが,2年以内には40%以上の人が耐性になると言われ,イマチニブ抵抗性の場合はスニチニブ(スーテント™)が適応となる。 |
Q: 胃炎・胃潰瘍治療薬のガスロンN™を口腔疾患に使用することはあるか?(薬局) |
ガスロンN™(マレイン酸イルソグラジン)は,胃粘膜表層上皮細胞のギャップジャンクションチャネルの開口を促進し,細胞間結合を強化して粘膜の修復,保護作用を示す。ギャップジャンクションは口腔粘膜にも存在し,口腔粘膜の創傷治癒を促進すると考えられ,アフタ性口内炎や歯周病に使用されることがある(保険適応外使用)。 |
Q:角膜真菌症に用いる抗真菌薬の点眼薬はあるか?(薬局) |
角膜真菌症は,草木による目の外傷後,副腎皮質ステロイドの点眼薬の長期使用やコンタクトレンズの不適切な使用により発症しやすい。治療は抗真菌薬の局所投与および全身投与である。市販の点眼薬にはピマリシン™5%点眼液・同1%眼軟膏(成分:ピマリシン,メーカー:千寿製薬)しかなく,フルコナゾール,ミコナゾール,ボリコナゾールなどの抗真菌薬の注射薬を用いて点眼薬を調製して用いることもある(保険適応外使用)。 |
Q:家庭用血圧計はどの部分で測定する血圧計が良いか?(薬局) |
手首や指先の末端の血圧は変動しやすく測定値に誤差が生じることがある。上腕がほぼ正確で,次いで手首用,指用の順となり,日本高血圧学会の家庭血圧測定ガイドラインでは,手首や指先より上腕で測定する血圧計を勧めている。 |
〔安全性情報等〕
Q: エパデール™を牛乳で飲むと吸収が促進されるのはなぜか?(薬局) |
エパデール™(イコサペント酸エチル)は脂溶性で,脂肪分や胆汁酸分泌により,腸からリンパ中への移行が促進される。したがって牛乳と一緒に服用すると,牛乳の脂肪分および牛乳による胆汁酸分泌の促進により吸収が促進される。 |
〔行政・保険〕
Q:特定保健指導に薬剤師も参画できるようになったが,何ができるのか?(薬局) |
A:
薬剤師は食生活の改善指導または運動指導に関する専門的知識および技術を有すると認められる者に含まれ,医師,保健師,管理栄養士または保健指導に関する一定の実務経験を有する看護師が作成する特定保健指導支援計画に基づき,これらの者の総括の下で食生活の改善指導および運動指導を実施する。ただし,実践的指導を実施するまでに,定められた研修を修了していることが必要である。 |
Q:歯科のインプラント治療の処方せんで,NSAIDと抗生物質が出ているが,保険適応はあるのか?(薬局) |
A:
歯科のインプラント治療は保険診療ができず,すべて自由診療となる。ただしインプラントが評価療養の中の先進医療の「インプラント義歯(顎骨の過度の吸収により,従来の可撤性義歯では咀嚼機能の回復が困難のものに限る)」に該当する時,手術や義歯等の先進医療に係わる費用は自費となるが,その他の通常の治療と共通する費用(診察,検査,X線,投薬,入院料等)については一般の保険診療と同様に扱うことができる。ただしすべての医療機関で行えるものではなく,先進医療(インプラント義歯)実施機関として認定されていなければならない。 |
〔その他〕
Q:オレンジジュースを飲んだら後味や香りが残るのはなぜか?(薬局) |
A:
香り(匂い)にはトップノート,ミドルノート,ラストノート(ディープノート,ベースノート)がある。トップノートは最初に感じる軽い感じの香り,ラストノートは時間がたって後から香ってくる最後まで残る重い香り,ミドルノートはトップノートとラストノートの間で長時間香る香りである。主な成分は,トップノートは揮発性の高い低沸点物質,ラストノートは高沸点物質である。オレンジジュースを飲む前の香りはトップノート成分で,飲んだ後に口中に残る香りはラストノートの成分が関与し,飲んだ後不快に感じることもある。 |
Q:土壌のpH測定法は?(薬局) |
A:
正確なpH値を知るには,土壌20gをガラスコップに入れ,蒸留水または純水(イオン交換水)を約50mL入れる。スプーンで5分間,土と水を攪拌する。水温が25℃に近いほうが正確な値が得られる。攪拌が終了したら2分程度静置して泥を沈ませ,上澄み液をpHメーターで測定する。直接土壌に挿入して測る土壌用pH計も市販されている。 |
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