薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2008年7月)

〔医薬品一般〕

Q: むずむず脚症候群の治療薬で貼り薬があるのか?(一般)

A:

大塚製薬が,非麦角系ドパミン受容体作動薬(ドパミンD/D/D受容体)のロチゴチンrotigotineを成分とする貼付薬を,むずむず脚症候群(レストレス・レッグス症候群:RLS)およびパーキンソン病の治療薬として臨床試験中である。経皮吸収性に優れており,パッチを1日1回貼ると皮膚から一定の量のロチゴチンが吸収されて,24時間にわたり安定した効果が維持できる。

Q:ガバペン™錠がペインクリニックから処方されているが,何に使うのか?(薬局)

A:

抗てんかん薬のガバペン™(ガバペンチン)は鎮痛補助薬として,痛みのコントロールが困難な神経因性疼痛(帯状疱疹後神経痛,糖尿病性神経障害,三叉神経痛など)に使用される(保険適応外使用)。本剤はGABA(γアミノ酪酸)誘導体で,カルシウムチャネル遮断作用を有し,興奮性神経伝達物質のグルタミン酸の放出を抑制する。

Q:乳幼児の毛細血管性血管腫にプロプラノロールを使って効果があったらしいが,用量は?(薬局)

A:

乳幼児の毛細血管性血管腫の大半は自然退縮するので治療の必要はないが,視力障害や気道閉塞等がある場合は,副腎皮質ステロイドの内服が第一選択薬となる。副腎皮質ステロイドで改善の見られなかった乳児に,非選択性β遮断薬のプロプラノロール2mg/kg/日を投与して症状が改善した症例報告がある。作用機序としてプロプラノロールの血管収縮作用,血管新生因子のVEGEやbFGFの減少作用,毛細血管内皮細胞のアポトーシスの誘導作用が示唆されている(Christine L.L. et al. :N Engl J Med 358(24),2649,2008.より)。

Q: 骨粗鬆症の診断で,骨密度による診断基準は?(薬局)

A:

脆弱性骨折がない場合(原発性骨粗鬆症の診断基準:2000年度改訂版より)

骨密度値
脊椎X線での骨粗鬆化
診断
YAMの80%以上
なし
正常
YAMの70〜80%
疑いあり(骨萎縮度J度)
骨量減少
YAMの70%未満
あり  (骨萎縮度K度以上)
骨粗鬆症

YAM:Young Adult Mean(20〜44歳の若年成人平均値)
骨密度(BMD:Bone Mineral Density)は原則として腰椎の骨密度。高齢者で脊椎変形などで測定が困難な場合は大腿骨頭部あるいは他の部位。

Q:二分脊椎などの神経管閉塞障害の予防に葉酸の摂取が勧められるが,推奨される服用期間と服用量は?(薬局)

A:

妊娠を計画している女性には,神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するため,妊娠の1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間,葉酸をはじめその他のビタミン等を多く含む栄養バランスのとれた食事が必要である。葉酸は食事からの摂取に加え,1日0.4mgの栄養補助食品からの摂取が勧告されている。ただし,葉酸の過剰摂取はビタミンB12欠乏の診断を困難にするので,摂取量は1日あたり1mgを超えるべきではない。

Q:簡易懸濁法とは何か?なぜ55℃の温湯を使用するのか?(薬局)

A:

胃ろうや嚥下障害などで薬剤を粉砕して経管投与する場合,懸濁性やチューブのつまり等の問題が発生することがある。簡易懸濁法はこれらの問題を解決するために開発された投与法で,投与時に錠剤・カプセルをそのまま水に入れて崩壊・懸濁させる方法である。水に入れて崩壊しない錠剤は乳棒で数回叩いてコーティングを崩壊して水に崩壊・懸濁しやすくし,カプセルを溶解させるために約55℃の温湯に入れて自然放冷する。カプセルは,水50mLを加え37±2℃に保ちながらしばしば振り動かす時,10分以内に溶けるように日本薬局方で規定されている。簡易懸濁法では,55℃の温湯20mLを入れて常温で10分間自然放置すると,温度は時間とともに低下し,10分後には37℃付近になるため,最初の温度を55℃としている。なお,55℃で安定性に問題があるものや疎水性で水に懸濁しない医薬品等には適用できない。

〔安全性情報〕

Q: 殺鼠剤を屋根裏で使用する。成分がワルファリンと書いてあるが,ガスが出てネズミを殺すのか?(一般)

A:

クマリン系薬のワルファリンは,その血液凝固阻止作用を利用して殺鼠作用を現す。蒸散することはなく,ネズミが少量を4〜5日間連続して摂取すると,その後は摂取しなくても蓄積性毒作用により体内で徐々に出血を起こし,動作が緩慢となり,自然死に近い状態で死亡する。速効性はなく,連続して摂取しない場合は致死までの日数が延長するため,他のネズミに異常な警戒心を起こさせない利点もある。ワルファリン耐性のネズミには効果がないので,他の殺鼠剤の使用が必要となる。

〔保険・行政〕

Q:特定生物由来製品の使用記録の保存は?(薬局)

A:

特定生物由来製品を取り扱う医療関係者は,使用対象者の氏名・住所,製品名称・製造番号または製造記号,使用年月日,保健衛生上の危害発生・拡大の防止上に必要な事項を記録し,使用した日から起算して少なくとも20年間保存しなければならない(薬事法第68条の9第3項)。製品に添付された製品名,製造番号(製造記号)を記載したシールを貼付し記録に利用してもよい。

Q:外来服薬支援料を算定した場合,レセプトはどのように作成すればよいか?(薬局)

A:

対象薬剤の名称を記載する必要はないが,摘要欄に服薬管理を支援した日,服薬支援に係る薬剤の処方医の氏名および保険医療機関の名称を記載する。なお,外来服薬支援料に係るレセプトは,処方せんに基づく調剤分に係るレセプトとは別とし,単独のレセプトとする。

〔食品・健康食品〕

Q:プルーン(乾燥)で下痢をすることがあるか?(一般)

A:

乾燥したプルーン(西洋すもも)は食物繊維が他の食品に比べて豊富で,可食部100g中には水溶性食物繊維(SDF)を3.4g,不溶性食物繊維(IDF)を3.8g含む。SDFは水に溶けてゲル状となるので,食品移動が緩やかになり糖の吸収速度が遅くなって,血糖値の急激な上昇を抑え,また血中コレステロール低下作用や腸内細菌叢を改善して整腸作用も示す。IDFは水に溶けず水分を吸収して数倍に膨れ,腸を刺激してぜん動運動を促進するので,腸内の老廃物の排泄および緩下作用を示す。過剰摂取により下痢を起こすことはあるが,摂取適量には個人差があり確定はできない。

Q:スイカには体の血流を改善する成分が含まれているとTVで言っていたが,何か?(一般)

A:

スイカにはアミノ酸の一種のシトルリンcitrullineという成分が多く含まれている。シトルリンはスイカ,メロン,ニガウリ等のウリ科の植物に多く含まれ,日本人が1930年にスイカ果汁中から発見し,スイカの学名Citrullus vulgarisから命名した。2007年4月の食薬区分改正でL-シトルリンが化学物質,非医薬品リストに新規収載され,同年8月より一般食品としての利用が認められ,健康素材として利用されている。シトルリンは体内でNO(一酸化窒素)の生成を高めて血管を拡張して血流を促進するので,動脈硬化の予防,新陳代謝の活性化,筋力強化,疲労回復,冷え性改善,勃起不全の改善,美肌効果などさまざまな効果が期待されている。



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