薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2009年4月)

〔医薬品一般〕

Q: 肺結核に使われる薬にはどんなものがあるか?(薬局)

A:

現在わが国で使われている抗結核薬は下記の3群に分類される。

First-
line
drugs
(a)
リファンピシン(RFP)

またはRFP使用困難の場合
のみリファブチン(RBT)

イソニアジド(INH)
ピラジナミド(PZA)
最も強力な抗菌作用を示し,菌の撲滅に必須な薬剤で,RFP,PZAは滅菌的,INHは殺菌的に作用する。
RFPは多くの薬剤と相互作用があり,特にHIV患者で抗ウイルス薬を投与する場合は,RFPの代わりにRBTの使用を検討する。
First-
line
drugs
(b)
ストレプトマイシン(SM)
エタンブトール(EB)
First-line drugs(a)との併用で効果が期待される薬剤で,SMは殺菌的,EBは主に静菌的に作用する。
Second
-line
drugs 
カナマイシン(KM)
エチオナミド(TH)
エンビオマイシン(EVM)
パラアミノサリチル酸(PAS)
サイクロセリン(CS)
レボフロキサシン(LVFX)
フルオロキノロン系薬のLVFXの代わりに同系統のシプロフロキサシン,モキシフロキサシン,スパルフロキサシンに代えることができる。ただし,いずれも保険適応外使用である。

 治療は,患者が感染している菌に感受性があり,作用点が異なる薬剤を初期には少なくとも3剤以上組み合わせた多剤併用方式で,必要な期間(最短でも6ヶ月間)継続投与することが不可欠である。初回治療の標準的投与方法は,原則として,PZAを含むA法:RFP + INH + PZAにSM(またはEB)の4剤併用で2ヶ月間治療後,RFP + INHで4ヶ月間治療を行う。PZAが使用できない場合に限り,B法:RFP + INHにSM(またはEB)の3剤併用で2ヶ月間治療後,RFP + INHで7ヶ月間治療する。なお,抗結核薬以外に,重篤な滲出性病変を主体とする肺結核等の場合は副腎皮質ステロイド剤を併用する。治療脱落と多剤耐性結核を防ぐため,DOTS(directly observed treatment, short‐course:直接服薬確認療法 )により,服薬終了まで治療監視を行う。

Q:レスピラトリーキノロン(Respiratory Quinolone)とは何か?(薬局)

A:

フルオロキノロン(ニューキノロン:NQ)系抗菌薬の中で,呼吸器感染症の主要起炎菌(特に肺炎球菌)に対し優れた抗菌活性を有し,薬剤の肺組織への移行性が高いNQ薬のことをレスピラトリーキノロン(呼吸器系キノロン)という。ガレノキサシン(ジェニナック™),シタフロキサシン(グレースビット™),スパルフロキサシン(スパラ™),トスフロキサシン(オゼックス™),モキシフロキサシン(アベロックス™),レボフロキサシン(クラビット™高用量必要)がある。

Q:脱水時などに使う経口補水液はどんなものがあるか?家庭でも作れるか?(薬局)

A:

経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は,経口補水療法(ORT:Oral Rehydration Therapy)において,水・電解質を素早く補給することを目的として,糖・電解質等の濃度を調整した液体飲料で,発展途上国のコレラ等の下痢による脱水症の治療のためにWHOが開発した。今日では先進国でも小児の急性胃腸炎等の脱水症の治療に使用されている。医薬品にはソリタ™T顆粒2・3号,厚労省認可・特別用途食品の個別評価型・病者用食品にはOS-1オーエスワン™,乳幼児用飲料にはアクアライト™・同ORS,ビーンスタークポカリスエット™などがある。
〔家庭で作る方法〕
水1Lに白糖40g,食塩3gを溶かし,グレープフルーツやレモンなどの果汁を加えると飲みやすくなり,カリウム補給にもなる。嘔吐があればスプーンかスポイトを用いて,5分ごとに約5mLを,繰り返しゆっくり輸液をするような気持ちで飲ませる。

〔安全性情報〕

Q: 自動車用のガソリンが入った缶が近くにあり,ガソリン臭がする。毒性は?(一般)

A:

蒸気は空気より重く,地面あるいは床に沿って移動することがあり,遠距離引火の可能性があり,空気と混合すると爆発性ガスを形成する。蒸気の吸入,経皮,経口摂取により暴露する。気化すると,空気が汚染されてきわめて急速に有害濃度に達することがある。眼,皮膚,気道を刺激し,液体を飲み込むと,肺に吸い込んで化学性肺炎を引き起こす危険がある。許容濃度のACGIH(American Conference of Governmental Industrial HygienistisのThreshold Limit Values)は,時間加重平均(TWA)値では300 ppm(通常の1日8時間労働または週40時間労働にわたって時間平均値を求めた許容できる暴露濃度),短時間暴露限界(STEL)値では500ppm (労働者が短時間の間に連続的に暴露した時に刺激や慢性又は非可逆的な臓器損傷を受けずにすむ濃度。一般的には,15分間)である。動物実験で発がん性が確認されているが,ヒトとの関連は不明。短回暴露で肺,腎障害を起こし,麻酔性があり,長期・反復暴露で神経・血管の障害を起こす。

Q:糖尿病患者にシロップ剤を投与した場合,血糖コントロールに影響するか?(卸)

A:

例えば,1mL中に白糖250mgを含有するシロップ剤を1日10mL投与した場合,白糖1gは4kcalなのでカロリーは10kcalとわずかである。厳密なカロリー制限がされていない限り,製剤化に用いる程度の糖質によって血糖値が左右されることは考えられない。ちなみに単シロップは1mL中に白糖850mgを含有し,カロリーは1mLが3.4kcalとなる。

〔行政・保険・その他〕

Q: 一般用医薬品販売において,薬局における販売従事者の区別はどうするのか?(薬局)

A:

薬事法施行規則第15条の2で,「薬局開設者は,薬剤師,登録販売者または一般従事者であることが容易に判別できるようその薬局に勤務する従事者に名札を付けさせること,その他必要な措置を講じなければならない」と規定されている。具体的には,「薬剤師」「登録販売者」と記載した名札を着用し,それ以外の者は「一般従事者」と記載するか,あるいはその旨の記載をしないこととし,名札は必ず購入者から見えるように着用,裏返したり,上から衣類を着用することがないように努める。また販売従事者の着衣は,流通している衣類の形態が多様化している現状を踏まえると,一律に規定することは困難であるが,専門家ではない者が白衣を着用する等,購入者から見て紛らわしい着衣は適当ではない。

Q: 薬学共用試験でCBT(Computer Based Testing)とあるが,何か?(その他)

A:

CBTはコンピュータを利用した試験で,受験者がディスプレイに表示された問題についてマウスやキーボードを用いて解答する方式である。薬学供用試験は薬学生が実務実習を始める前に受ける試験で,知識および問題解決能力を評価する客観試験のCBTと,実技試験を用いて技能・態度を評価する客観的臨床能力試験OSCEに分けられる。

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