薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介（2009年6月）

炭酸リチウムは双極性障害に対する第１選択薬で，興奮や易刺激性を正常化する気分安定薬である。最近，新しい作用として認知症予防効果や自殺予防効果が期待されている。

認知症予防効果：動物実験でアルツハイマー型痴呆の病理的変化（老人斑形成や神経原線維変化）の抑制効果が報告されている。また炭酸リチウム投与による双極性障害患者の気分エピソードの再発回数の低下が，認知症発症率を抑制することが示唆されている。

自殺予防効果：双極性障害患者の炭酸リチウム投与群は非投与群に比べて自殺関連行動の発生率が有意に低いという調査結果がある。さらに大分大学・広島大学が大分県民を対象に実施した研究で，「飲料水中のリチウム濃度が最も高い地域では他の地域に比べて自殺率がはるかに低い」と報告され，英医学誌「British Journal of Psychiatry（精神医学）」 2009年５月号に掲載された。ただし，さらなる研究が必要で，飲料水へのリチウム添加は提唱していない。

Ａ：

統合失調症の病期が安定期に入り症状が安定していても，抗精神病薬の服用を中止すると１年以内に60〜70％は再発するので，再発を減少・防止して社会機能レベルを維持するためには服用を継続する必要がある。ただし，少数ではあるが中止可能な患者も存在し，その場合は注意深く観察しながら少量ずつ漸減する（月に10％程度ずつ減量）。中止後も長期的なフォローアップが必要で，一定期間は通院して症状が悪化していないか診察を受ける必要がある。

Ａ：

パッチテスト（貼付試験）は接触性皮膚炎などの遅延型アレルギー反応の判定に用いられる。抗原による接触アレルギーが存在する時は，全身の皮膚が一様に感作されているので，皮膚炎のある部位だけでなく，それ以外の部位で抗原由来の接触性皮膚炎が誘発される。パッチテストは，この原理を応用して種々の物質に対する個体の接触アレルギーの抗原を検索する方法である。ただし偽陽性反応や偽陰性反応を呈することがあり，診断には IｇＥ抗体試験管内測定法やヒスタミン遊離試験など，他の検査を組み合わせて判定する。

梅毒血清反応のひとつであるワッセルマン（Wassermann）反応のこと。梅毒は梅毒トレポネーマによる性感染症で，感染すると生体にはトレポネーマの抗体ができ，その診断には梅毒血清反応が用いられる。脂質抗原試験（スクリーニング検査）と梅毒トレポネーマ抗原試験（特異的検査）があり，脂質抗原試験では感染初期２〜３週間に陽性となり治療効果とも相関するので効果判定に有用であるが，生物学的偽陽性（麻疹等のウイルス性疾患，結核，妊娠，膠原病など）を認めることがあるので，梅毒トレポネーマ抗原試験と組み合わせて診断する必要がある。梅毒トレポネーマ抗原試験では感染後４〜５週間で陽性となり，治癒しても陰性化しない。

脂質抗原試験：牛からとった梅毒抗原活性がある脂質抗原のカルジオリピンと血清中の抗体反応を調べる方法で，ワッセルマン反応，緒方反応，ガラス板法などがある。

梅毒トレポネーマ抗原試験：梅毒の病原体そのものを抗原とし，血清を加えて反応をみる方法で，ＴＰＨＡ法やＦＴＡ-ＡＢＳ法などがある。

Ａ：

カタリン™Ｋは一般用医薬品ではなく，医療用医薬品（非処方せん医薬品）で薬局医薬品に該当する。薬局医薬品は一般用医薬品のような陳列はできず，調剤室以外の場所に貯蔵・陳列してはならない。ただし，一般用医薬品を通常陳列し，または交付する場所以外の場所（倉庫等の薬局の従事者のみが立ち入れる場所，または従事者のみが手に取ることができる場所を指す）に貯蔵する場合はこの限りではない。