〔医薬品一般〕
Q:新しい日本脳炎ワクチンと従来のワクチンの違いは何か?(薬局) |
A:
従来の日本脳炎ワクチンは,日本脳炎ウイルスを感染させたマウスの脳中でウイルスを増殖させ,高度に精製し,ホルマリン等で不活化したものであるが,接種後の副反応として重症の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の報告があり,マウス脳由来物質との因果関係が否定できなかったため,厚生労働省は2005年5月,このワクチンによる定期予防接種の積極的勧奨を行わないように各市町村に勧告した。しかし日本脳炎患者の発生がゼロではないことを考え(平成11年〜20年10月の10年間に58件),副反応の発現リスクがより低い新しいワクチンの開発が熱望された。新しいワクチン「ジェービックV™」はマウス脳由来物質の代わりに Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)を材料とした乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンで,2009年2月23日付けで製造販売承認を取得し,発売されている。 |
Q:関節リウマチの治験薬で新しい作用機序のCP-690550とは何か?(薬局) |
新たな抗リウマチ薬(DMARDs)として,炎症性サイトカインのシグナル伝達に必須のチロシンキナーゼである Janus kinase(Jak)を標的とした阻害薬の有効性が示唆されている。Jakファミリーには Jak1,Jak2,Jak3と Tyk2が存在する。関節リウマチ患者の滑膜組織中の樹状細胞では,Jak3の発現が上昇して抗炎症性サイトカインの IL-10の産生が抑制され炎症が増強している。CP-690550は Jak3阻害薬で,メソトレキサートや生物学的製剤(TNF阻害薬)に抵抗性を示す関節リウマチに対する有効性が報告されている。その他,移植拒絶反応,乾癬,クローン病,および喘息に対する効果が期待されるが,関節リウマチに対して臨床試験中である(ファイザー,PhaseK/L)。 |
Q: 2歳未満にも使える肺炎球菌のワクチンはいつ発売されるか?(薬局) |
生後6週〜5歳未満の乳幼児向け肺炎球菌ワクチンの「Prevenar™7」(ワイス)が,承認申請中である(2009年9月現在)。本ワクチンは90種類以上ある肺炎球菌の血清型から,小児における侵襲性肺炎球菌感染症を起こす可能性が高い7種類の血清型を選んで製造された7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV-7)である。また13価肺炎球菌結合型ワクチン「Prevenar™13」は臨床試験中(PhaseL)である。現在市販されている肺炎球菌ワクチンの「ニューモバックス™NP」(万有)は,成人の肺炎の原因となることが多い23種類に対して有効な23価莢膜ポリサッカライドワクチンで,免疫系が未熟な2歳未満は肺炎球菌莢膜血清型に対する抗体応答が一般に乏しいかまたは不安定であることが報告されており,接種対象を2歳以上としている。 |
Q: フェノバルビタールを高ビリルビン血症に用いることがあるか?(薬局) |
A:
フェノバルビタールは抗てんかん薬や催眠鎮静薬として用いられるが,高ビリルビン血症に保険適応外使用される。フェノバルビタールはビリルビンUDPグルクロン酸転移酵素の誘導作用を有する。したがって,ビリルビンのグルクロン酸抱合を促進し,ビリルビンの排出を高めると考えられ,ビリルビン値が高い場合に使用される。 |
Q:寝たきりの高齢者に副腎皮質ステロイドを使う。ステロイド性骨粗鬆症による骨折予防にビスホスホネート系薬を使いたいが,服用後30分横にならずに座位を保つことができない。何を使えば良いか?(薬局) |
ステロイド性骨粗鬆症予防の第一選択薬はビスホスホネート系薬であるが,使用できない場合は,活性型ビタミンD3製剤,ビタミンK2などを使う。閉経後女性に選択的エストロゲン受容体作用物質(SERM:Selective Estrogen Receptor Modulator)のラロキシフェン(エビスタ™錠)を使用することもあるが,エビデンスが不十分である。 |
Q:排卵日を3本線で判定する検査薬があるらしいが,何か?(薬局) |
黄体形成ホルモン(LH)の尿中濃度上昇により排卵日を知る排卵日検査薬で,3本線で判定するのはP-チェックLH(Xミズホメディー)である。医療用医薬品なので,薬局でしか販売することができない薬局医薬品である。 |
〔安全性情報〕
Q: 麻黄が入った漢方薬を服用しているが,尿が出にくくなることはあるか?(一般) |
通常,排尿時は副交感神経が優位の状態で,膀胱収縮により膀胱内圧が尿道内圧より高くなっている。麻黄の成分エフェドリンは交感神経刺激作用を有するので,尿道内圧が上昇して尿の排出路が閉鎖され,排尿障害が起こることがある。 |
Q: アンチトロンビンL欠乏症の人に,抗プラスミン剤のトランサミン™(トラネキサム酸)を使っても良いか?(薬局) |
アンチトロンビンLは分子量約65,000の糖タンパク質で,血管壁に存在するへパリン様物質と複合体を形成し,トロンビンをはじめ種々の活性凝固因子と結合して中和する生理的凝固阻止物質である。また,プラスミンは血管内でフィブリンを分解して血栓を溶解し,組織では炎症起炎物質のキニン遊離を促進するなど,血管透過性の亢進,アレルギーや炎症性病変等に関与しているが,トランサミン™は,このプラスミンの働きを阻止することにより臨床的に抗出血作用,抗アレルギー作用,抗炎症作用を示す。アンチトロンビンL欠乏症は血栓形成傾向状態にあるため,抗出血作用を有するトランサミン™は血栓を安定化する恐れがあり慎重に投与する必要がある。 |
〔保険・行政・その他〕
Q:研究者など免許を受けた者以外が大麻の栽培や所持等をした場合の罰則は?(薬局) |
大麻取締法第24条により,下記のように規定されている。 |
Q:おしゃれ用カラーコンタクトレンズは医療機器に指定されたか?(その他) |
視力補正を目的としないおしゃれ用のカラーコンタクトレンズによる健康被害(結膜炎,角膜炎,角膜上皮びらん等)が多数報告され,今まで「雑貨」として扱われていたが,2009年11月4日より薬事法上の「高度管理医療機器」として規制されることとなった。輸入または製造するためには製造販売業および製造業の許可が,販売するためには販売業の許可が必要となる。 |
Q:一般用医薬品販売時の安全使用のための「業務手順書」を作成したいが,参考資料はあるか?(薬局) |
日本薬剤師会が「一般用医薬品販売の手引き」第1版を公開しているが(会員のページ:http://nichiyaku.info/member/ippanyaku/pdf/20090710guide.pdf),「手順書」作成の参考資料は,まだ提供されていない(2009年9月現在)。 |
Q:女王蜂を捕まえたので,液に漬けて保存したいと客から聞かれたが,方法は?(薬局) |
昆虫は乾燥標本にすることが多いが,幼虫,水生昆虫や体が柔らかい昆虫など乾燥すると形がくずれやすいものは液浸標本にする。一般的には70〜80%アルコールの入った瓶(スクリュー管など口のパッキングがしっかりした密閉できる瓶)に虫体を入れるだけで良い。ただし幼虫はアルコールに直接浸すと色が黒色化することが多く,変色を防ぐために専門的にはKAAD液(ケロセン,アルコール,氷酢酸,ジオキサン配合液)等で固定処理する。 |
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