〔医薬品一般〕
Q:ジプラシドン(ziprasidone)は日本で発売されているか?(病院薬局) |
A:
ジプラシドンは非定型抗精神病薬のセロトニン・ドパミンアンタゴニスト(SDA:Serotonin-dopamine antagonist)で,ドパミンD2受容体およびセロトニン5-HT2A受容体拮抗作用を有する。米国ではファイザーより商品名 Geodon™で市販され,統合失調症と双極性障害の適応を有しているが,日本ではラクオリア創薬が治験中。2009年8月現在,PhaseJが完了し,薬物動態および安全性に関して欧米人と日本人間で民族差がないことが確認された。 |
Q:双極性障害に用いる治療薬は何か?(一般) |
双極性障害(躁うつ病)の基本となる治療薬は気分安定薬のリチウム,カルバマゼピン,バルプロ酸ナトリウムで,躁状態,うつ状態,安定期を通じて服用を継続する。躁状態の不穏や興奮が激しい場合は非定型抗精神病薬のオランザピン,クエチアピン,アリピプラゾール,リスペリドン等を用い,再発予防効果や抗うつ効果も認められるが,症状が改善したら漸減中止する。気分安定薬の単独投与が原則であるが,うつ状態でやむを得ない場合,抗うつ薬のSSRI(フルボキサミン,パロキセチン,セルトラリン)やSNRI(ミルナシプラン)などを用いる。躁転したり,躁うつを繰り返す危険性があるので,抗うつ薬だけの単独投与は行わず,気分安定薬と共に用い,躁状態になったら中止する。 |
Q: 海外でランブル鞭毛虫症と診断されたらしいが何か?治療法は?(薬局) |
ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)は消化管寄生虫のランブル鞭毛虫によって起こる原虫感染症で,5類感染症(全数把握疾患)である。世界中でみられるが,特に熱帯・亜熱帯地方に多い。ランブル鞭毛虫は,ヒトや動物(ネコ,イヌ,ウシ等の哺乳動物)の腸管に寄生し,その便により汚染された食品や水に含まれるシスト(嚢子)の摂取によって感染する。また男性同性愛者の性的接触で感染することもある。感染しても無症状のことが多いが,2〜8週の潜伏期の後に発症すると,下痢(非血性で水様または泥状便。脂肪便もある),食欲不振,吐気・嘔吐,腹痛等を起こし,長期化すると体重減少,まれに胆管や胆嚢に炎症を起こすこともある。感染者の多くは無症候性シスト排出者となり,シストは排出直後から高い感染性を有するので注意する。シストは塩素消毒に抵抗性を示し,飲用水は1分間以上煮沸して飲用する。治療にはメトロニダゾールやチニダゾールを用いるが,薬剤耐性があり,その時にはニタゾキサニド(熱帯病治療薬研究班保管)やパロモマイシン(熱帯病治療薬研究班保管)やアルベンダゾールを用いる。いずれも保険適応外使用となる。 |
Q: アイピーディ™カプセル(トシル酸スプラタスト)を間質性膀胱炎に使うことはあるか?(薬局) |
A:
間質性膀胱炎は膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い,頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱不快感・膀胱痛などの症状があり,約90%が女性である。通常の膀胱炎は細菌感染によって膀胱粘膜の表面が炎症を起こすので尿に異常が出るが,間質性は粘膜の深い所で病変が起こるので尿検査で通常は異常を認めない。間質性膀胱炎の明確な原因は不明だが,膀胱上皮に接着した炎症性サイトカインが炎症の遷延に関与している可能性がある。抗アレルギー薬のアイピーディ™は,ヘルパーT細胞(Th2)サイトカインからのインターロイキン4(IL-4)および IL-5産生抑制作用等を有し,アレルギー性炎症の改善作用があるため,使用することがある(保険適応外使用)。ただし,大鵬薬品が間質性膀胱炎の適応追加で国内での第III相比較臨床試験を進めてきたが,間質性膀胱炎の症状スコアの改善量において,プラセボ投与群と比較して優越性を検証できず臨床試験を中止している。 |
Q:輸血を継続的に行っている人は鉄キレート療法が必要らしいが,どうしてか?(一般) |
骨髄異形成症候群(MDS)や再生不良性貧血等の難治性慢性貧血で治療が奏効しない場合,支持療法として継続して赤血球輸血が行われる。生体の鉄代謝は半閉鎖系で,積極的な鉄の体外排泄は行われず,繰り返しの輸血により次第に鉄が体内に蓄積する。過剰な鉄はまず肝臓に蓄積し,さらに心臓や内分泌器官に蓄積し,進行性かつ不可逆性の臓器障害(心不全,肝硬変,糖尿病等)を起こす。したがって過剰な鉄とキレートを形成して鉄を体外へ排泄する鉄キレート療法が施行され,鉄キレート剤には注射剤デスフェラール™(メシル酸デフェロキサミン)や経口剤エクジェイド™懸濁用錠(デフェラシロクス)を用いる。 |
Q:糖尿病の自己血糖測定はいつ行えば良いのか?(薬局) |
血糖自己測定(Self-Monitoring of Blood Glucose:SMBG)により,日常生活での血糖パターンを知り,適切な治療計画が可能で,また,低血糖やシックデイ時に直ちに適切な対応をとることができる。インスリンの種類や打ち方,各々の患者の病態や目的に応じて測定回数と時間帯が決められる。SMBGの測定時間帯としては,毎食直前と毎食2時間後,また就寝前である。2型糖尿病は朝食前と就寝前の1日2回測定が導入しやすい。また毎食前と毎食2時間後,就寝前の1日7回を月に2〜3回行う方法もある。 |
〔安全性情報〕
Q: チーズと相互作用がある医薬品はあるか?(薬局) |
チーズにはモノアミンの一種のチラミンが含まれる。チラミンは生体内で生じることは少なく,主にチラミン含有食品に由来するが,通常はチラミンオキシダーゼ(MAO:モノアミン酸化酵素)により不活化される。しかし,MAO阻害薬により代謝が阻害されると腸管からそのまま吸収され,アドレナリン作動性神経終末に取り込まれ,蓄積されたノルアドレナリンの遊離を促進して高血圧発作(急な血圧上昇,顔面紅潮,発汗,動悸,頭痛など)を起こす可能性がある。MAO阻害薬にはセレギリン(エフピー™錠),MAO阻害作用を有する薬剤にはイソニアジド(イスコチン™等),プロカルバジン(ナツラン™カプセル),リネゾリド(ザイボックス™錠・同注射液)がある。 |
Q: ブタンガスを吸引して乱用することはあるか?(医師) |
ブタンガスは制汗スプレー等の各種スプレーの噴射剤や,ライター用ガスやカセットコンロ用ボンベの可燃性ガスの主成分として用いられているが,ポリ袋にブタンガスを入れて吸入する「ガスパン遊び」で乱用されることがある。麻酔作用により酩酊状態となり,幻覚や幻聴が起こり,妄想や激しい興奮状態を生じる。中毒症状には,頭痛,めまい,頻脈,嘔吐,視力障害,呼吸抑制等がある。ブタンガスは法律で規制されておらず,安価で入手しやすいのでシンナーの代用として乱用されやすいが,大変危険であり,吸引時の酸素欠乏,嘔吐物による窒息やガスへの引火により死亡することがある。 |
Q:B型肝炎(HB)ワクチンを妊婦に接種して良いか?(薬局) |
HBワクチンは不活化ワクチンであり,不活化ワクチンによる母体から胎児への胎内(垂直)感染はなく,また催奇形性もないと考えられている。妊婦でも感染リスクが高い場合は接種可能と考えられる。 |
〔行政・保険〕
Q:添付文書や箱の表示から「指定医薬品」の文字が削除されているが,なぜか?(その他) |
改正薬事法(平成18年6月14日法律第69号)により,「指定医薬品」の規制区分が廃止となった。本法律の施行(2009年6月1日)以降に製造する製品の添付文書,箱,ラベル等から順次に「指定医薬品」の表示が削除されている。「指定医薬品」は,改正前の薬事法第29条において薬種商が取り扱うことができない医薬品として規定されていた。今回の改正薬事法による医薬品の販売業の許可制度の見直しにより,「一般販売業」と「薬種商販売業」が「店舗販売業」に統合され,「薬種商販売業」が廃止となったことに伴い,「指定医薬品」も廃止となった。 |
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