薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2009年10月)

〔医薬品一般〕

Q:高度な血圧の上昇を降圧したい場合,内服薬は何が良いか?(薬局)

A:

高度な血圧の上昇により脳,心臓,腎臓など標的臓器の急速な障害が生じる高血圧緊急症(高血圧性脳症,頭蓋内出血,不安定狭心症,急性心筋梗塞など)の場合は入院治療が原則で,経静脈的な降圧により直ちに血圧を下げる必要がある。一方,臓器障害の急速な進行がなく,数時間以内の降圧が望まれる高血圧性切迫症の場合は,内服薬によりコントロールできる場合が多い。作用発現が比較的速いカルシウム拮抗薬(短時間・中間型作用薬),ACE 阻害薬,α β遮断薬のラベタロール,β遮断薬,病態によってはループ利尿薬を併用する。なお,以前はカルシウム拮抗薬のニフェジピンカプセル内容物の投与やニカルジピン注射のワンショット静注を行っていたが,過度の降圧や反射性頻脈をきたすので行わない。

Q:小児の片頭痛発作の治療薬は何を使うか?(医師)

A:

小児の片頭痛発作の急性期治療にはイブプロフェン(5mg/kg,ただし成人の最高用量,200mg/回,600mg/日を超えない)またはアセトアミノフェン(10mg/kg,ただし成人の最高用量,500mg/回,1,500mg/日を超えない)が用いられる。アセトアミノフェンの方がわずかに効果発現が早いが,鎮痛作用はやや弱い。これらの鎮痛薬に抑吐薬(ドパミン受容体拮抗薬)のドンペリドンやメトクロプラミドを併用すると効果が高い。トリプタン系薬の内服は,他の治療で効果が認められない重症の片頭痛発作に対して,体重40kg以上,12歳以上の小児には成人と同量,25kg以上 40kg未満の小児には成人の半量,体重25kg未満の小児にも錠剤を粉砕し使用可能と考えられているが,15歳未満等への投与の安全性は未確立で保険適応はない。

Q: 腸管出血性大腸菌O-157の治療に用いる抗菌薬は何が良いか?(薬局)

A:

腸管出血性大腸菌(EHEC)O-157は毒力の強いベロ毒素を産生する。感染すると全く症状がないものから軽い腹痛や下痢のみで終わるものもあるが,多くの場合は3〜8日の潜伏期の後,頻回の水様便,激しい腹痛,著しい血便を生じ,小児や老人では溶血性尿毒症(HUS)や脳症(けいれんや意識障害など)の重症合併症を引き起こしやすく,死に至ることもある。EHECの抗菌療法は現在国内外で一致した見解は得られていないが,国内では感染早期の抗菌薬の投与が重症化の予防に有効との見解が強く,原則として経口投与をできるだけ速やかに行う。感染から長期間経過した場合やHUS発症後は抗菌療法の適応はない。小児にはホスホマイシン,ニューキノロン系抗菌薬のノルフロキサシン(5才未満の幼児には錠剤が服用可能なことを確認して慎重に投与, 乳児等には投与しない),カナマイシン,成人にはニューキノロン系抗菌薬,ホスホマイシンを用いる。

Q: 急性膀胱炎の標準的な治療法は?(薬局)

A:

急性膀胱炎の原因菌の大半は大腸菌である。標準的治療法は確立されていないが,耐性菌の抑制,再発防止等を考慮した抗菌薬の使用が必要である。単回投与法,3日間投与法,7日間投与法などが検討されているが,単回投与法は再発率が高くなるため推奨されない。長期間投与法(7〜14日間)は,最近の尿路感染症の既往がある患者,糖尿病患者,症状が1週間以上続く患者に対して適応する。ペニシリン系薬や第1世代セフェム系抗生物質は使用しない。ニューキノロン系抗菌薬や新経口セフェム系抗生物質が使用される。
    処方例:クラビット™錠(500mg)1回1錠,1日1回,3日間
            バナン™錠(100mg)    1回1錠,1日3回,7日間 

〔安全性情報〕

Q:季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンを接種する場合,間隔を あけなければならないか?(一般)

A:

季節性インフルエンザワクチンと他のワクチンとの接種間隔は,生ワクチンについては27日以上,不活化ワクチンまたはトキソイドは6日以上間隔をあけるが,十分検討した上で医師が必要と認めた場合は同時に接種を行うことができる(季節性および新型インフルエンザワクチンはいずれも不活化ワクチン。混合しての接種は不可。)。同時接種の際は両ワクチンはある程度離れた場所にすることが勧められる。ただし,海外から輸入するアジュバント入りワクチンとの同時接種については,海外等の情報を踏まえた別途の検討が必要であり,当面の間差し控えることが望ましいと考えられる。

Q:インフルエンザウイルスの大きさはどのくらいか?(薬局)

A:

インフルエンザウイルスは0.08〜0.12μm程度の大きさで,非常に微細で軽いためウイルス単独では外に飛ぶことができない。通常ウイルスが外に出る際には,唾液等の飛沫と呼ばれる液体とともに飛散する。飛沫の大きさは5μm程度である。

〔行政・保険〕

Q: 先発品から後発品に変更した時,変更内容を処方せんに記載するのか?(薬局)

A:

処方せんに記載する必要はないが,調剤録や薬歴には,実際に調剤した医薬品の銘柄を記載しなければならない。ただし,調剤済みの処方せんをもって調剤録として保存する場合には,実際に調剤した医薬品の銘柄を処方せんに記載することとなる。

Q: 血糖自己測定器のセンサー等を販売する時,薬局は医療機器販売業の届け出が必要か?(薬局)

A:
血糖自己測定器 高度管理医療機器 許可
穿

器具全体ディスポーザブルタイプ 管理医療機器 届け出※
針周辺部分ディスポーザブルタイプ 一般医療機器 届け出不要
針周辺部分ディスポーザブルタイプでない 一般医療機器
穿刺針 管理医療機器 届け出※
電極試験紙,センサー,チップ 体外診断用医薬品 薬局での販売可能

※薬局や高度管理医療機器の販売業の許可取得業者は,届け出は不要。

〔健康食品・その他〕

Q:キウイフルーツには酵素が含まれているとTVで言っていたが,何か?(一般)

A:

キウイフルーツの果実にはタンパク質分解酵素(protease)のアクチニジンが含まれ,キウイフルーツアレルギーのアレルゲンのひとつである。その名称はキウイフルーツの属名 Actinidiaに由来し,含有量は果心部よりも内・外果皮に多く,食肉軟化作用や肉の消化・吸収の促進,整腸作用を有する。また,舌苔のタンパク質成分を除去し,口臭原因物質のメチルメルカプタン濃度の減少が報告され,タブレット型の菓子が発売されている。

Q:栗を食べてアレルギー反応を起こすことはあるか?(薬局)

A:

栗により食物アレルギーを起こすことがある。また(天然ゴム)ラテックスアレルギーの人は栗やバナナ,アボカド,キウイフルーツ,パパイヤ,マンゴー等の食物のタンパク質がゴムの木のタンパク質と似ているので交差アレルギーを起こすことがあり,ラテックスフルーツ症候群(Latex Fruit Syndrome)と呼ばれている。 


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