薬事情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介(2009年12月)

〔医薬品一般〕

Q:インフルエンザウイルスの感染を防止するのに最適な湿度は?(薬局)

A:

室内温度を20℃以上,および適度な相対湿度(50〜60%)に保つことは気道粘膜への加湿のほか,インフルエンザウイルスを不活化させる効果がある。また最近は絶対湿度(乾燥した空気1m中に含まれる水蒸気の重量 g)を指標とし,絶対湿度が11g/m以下になるとインフルエンザウィルスの感染の危険度が増し,7g/m以下で流行が大きくなることが確認されている。

Q:子どもにタミフル™カプセル(オセルタミビルリン酸塩)を飲ませたらすぐに吐いた。また飲ませても良いか?(一般)

A:

服用後約30分以内に嘔吐した場合,薬物が血液中に吸収されていない可能性があるので,15分くらい様子をみて,吐気が治まっていたら同量のタミフル™を飲ませる。また服用30分以後に吐いても,嘔吐物に明らかなカプセルが見られる場合は飲ませる。ただし,2回目の服用後にも吐いてしまったら受診し,制吐薬を処方してもらうか,吸入剤のリレンザ™(ザナミビル)に変更してもらう。

Q: 関節リウマチに用いる免疫抑制薬プログラフ™(タクロリムス)カプセルが1日1回夕食後服用だが,なぜか?(薬局)

A:

関節リウマチの症状に朝のこわばりがあり,関節を動かし始める時にこわばって動かしにくく,使っているうちにだんだん楽に動かせるようになる。朝,起きた時に最も強く感じるため「朝のこわばり」と呼ばれ,関節やその周囲のこわばりは1時間以上持続する。この朝のこわばりの症状を軽減するために,夕食後に服用する。

Q: 抗リウマチ薬リウマトレックス™(メトトレキサート)の服用を忘れた時,どう指導したら良いか?(病院)

A:

服用を忘れたことに気づいて,本来の服用間隔や休薬期間より極端に短い間隔で服用したり,次回服用時にまとめて服用したりすると,副作用が現れる恐れがある。忘れた分は服用せずに飛ばして決められた時間に次の薬を服用し,勝手に別の時に服用したり,まとめて服用しないよう指導する。

(週3カプセル:月曜の朝・夕と火曜の朝に服用)
月曜の朝の分を服用し忘れた場合,月曜の夕と火曜の朝の分だけ予定通りに服用し,服用し忘れた分は服用しない。 

(週2カプセル:月曜の朝・夕に服用)
全部服用し忘れた場合,その週の服用はせず,翌週の月曜から予定通り服用する。服用量が減少することにより治療効果が低下する可能性は否定できないが,安全性を優先し上記の指導を徹底する。

Q:C型肝炎でレベトール™(リバビリン)を服用中の女性にエビスタ™(ラロキシフェン塩酸塩)が追加されたが,併用効果があるのか?(薬局)

A:

高齢女性のC型慢性肝炎において,ペガシス™(ペグインターフェロン-α-2a),レベトール™併用療法の効果が低いことが報告され,エストロゲン濃度の低下がその一因として推測されている。骨粗鬆症治療薬のエビスタ™は,エストロゲン受容体と結合し組織選択的にエストロゲン作用を発現する。肝臓においてはエストロゲン作用薬として直接的な肝細胞保護作用を有し,肝線維化抑制作用を発揮している可能性がある。九州大学病院で閉経後骨粗鬆症のC型慢性肝炎女性35例を対象としたペガシス™,レベトール™とエビスタ™の併用療法の効果と安全性を検討した。35例中12週以降の治療は22例で,その22例中のHCVの血漿消失率は,4週目22.7%,8週目31.8%,12週目40.9%,16週目42.1%,20週目57.1%,24週目83.3%,28週目100%であった。治療4週および12週以内の血漿消失率は低率だが,12〜24週以降の後期HCV血漿消失率は比較的高率に認められた。

Q:徐放性製剤などの名称にR等のアルファベットが付いているが,どういう意味か?(薬局)

A:

徐放性や持続型の製剤の名称にはCR(Controlled Release),LまたはLA(Long Acting),R(Retard),SR(Slow Release)などの徐放や持続を意味する単語の頭文字をとったアルファベットが付けられているものが多い。

〔安全性情報〕

Q: 牛乳アレルギーの人に乳糖は使えないか?(薬局)

A:

牛乳アレルギーは牛乳蛋白(カゼイン,β-ラクトグロブリン,α-グロブリン等)をアレルゲンとする食物アレルギーで,消化器症状(下痢,血便,嘔吐等),皮膚症状(蕁麻疹,かゆみ等),呼吸器症状(くしゃみ,鼻水,呼吸困難等)など多彩な症状を示し,乳糖分解酵素ラクターゼの活性が低下・欠損した乳糖不耐症とは異なる。しかし,牛乳アレルギー患者(主として小児)においては乳糖不耐症の頻度が高く,また乳糖不耐症の患者においては牛乳蛋白に対するアレルギーが存在したとする報告や,乳糖に牛乳蛋白が混入している可能性があるとする報告があるので,牛乳アレルギー患者に乳糖を使用する場合は慎重にする。

Q: 副腎皮質ステロイド軟膏を目の周りに塗って,緑内障にならないか?(一般)

A:

副腎皮質ステロイドの眼瞼への塗布により眼圧上昇,緑内障が起こることがある。眼圧上昇作用は用量依存性で,投与量や投与期間に相関する。抗炎症作用が強いベタメタゾンやデキサメタゾン,プレドニゾロンで起こりやすく,トリアムシノロンやフルオロメトロンでは起こりにくい。投与中止により眼圧は正常化するが,眼圧上昇が持続すると不可逆性の視細胞や視神経の変化が起こる。自覚症状に乏しく眼圧上昇があっても異常を訴えないことが多いので,眼瞼を避けるように塗布し,定期的な眼圧管理を行う。

〔その他〕

Q:薬局製剤で感冒剤14号A(かぜ薬8-@)の原料で,酒石酸アリメマジンが製造中止になったが,何を使用したら良いか?(薬局)

A:

薬局製剤指針の一部改正(薬食発第0127003号 平成21年1月27日)で,かぜ薬8-@の製造方法を改め,アリメマジン酒石酸塩に替えて,アリメマジン酒石酸塩1%散を用いてもよいとなった。アリメマジン酒石酸塩1%散は,幸栄化学産業Xの医薬品原末販売センターなどが取り扱っている。

Q:硝酸カリウムを一般の人に販売してもよいか?(薬局)

A:

硝酸カリウムは毒物・劇物取締法には該当せず,食肉製品の発色剤などを目的に食品添加物としても認められており,販売は可能であるが,爆発物の原料となり得る化学物質である。こうした化学物質を使った爆発物の製造使用の事件が相次いだため,厚生労働省は平成21年12月2日,毒物及び劇物取締法,薬事法に基づき適切な保管・管理を行うとともに,譲渡・譲受先及び交付制限の厳守や盗難,紛失時の警察署への届け出等を行うように通知するとともに,薬局やネットによる以下の11種類の化学物質の販売時には,購入者の連絡先や本人確認,使用目的を確認し,販売名,数量,その他販売記録の書面の保存を要請した。

アセトン,塩酸(劇),過酸化水素(劇),硝酸(劇),硝酸アンモニウム,尿素,硫酸(劇),塩素酸カリウム(劇),塩素酸ナトリウム(劇),硝酸カリウム,ヘキサミン


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