公益財団法人福岡県薬剤師会

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薬剤師ってどんな仕事?

薬剤師とはどんな職業か?

病気の治療や予防、健康の維持などのために、薬は私たちの生活に欠かせないものになっています。病気やけがで、病院や診療所(医院)にかかって薬をもらったり、体調がすぐれないときに町の薬局・薬店で大衆薬を購入したことがきっとあると思います。

こうした薬が製薬企業で作られ、医療機関や薬局等を経由して消費者の手に届くまでのすべての過程で、薬学を基礎とした専門的な立場から関与しているのが薬剤師です。

薬剤師の任務は、薬剤師法という法律で「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」と規定されています。

薬剤師綱領

(昭和48年10月制定 日本薬剤師会)


一.薬剤師は国から付託された資格に基づき、医薬品の製造・調剤・供給において、その固有の任務を遂行することにより、医療水準の向上に資することを本領とする。

一.薬剤師は広く薬事衛生をつかさどる専門職としてその職能を発揮し、国民の健康増進に寄与する社会的責任を担う。

一.薬剤師はその業務が人の生命健康にかかわることに深く思いを致し、絶えず薬学・医学の成果を吸収して、人類の福祉に貢献するよう努める。



薬剤師行動規範

( 平成30年1月制定 日本薬剤師会)


前文


薬剤師は、国民の信託により、憲法及び法令に基づき、医療の担い手として、人権の中で最も基本的な生命及び生存に関する権利を守る責務を担っている。


この責務の根底には生命への畏敬に基づく倫理が存在し、さらに、医薬品の創製から、供給、適正な使用及びその使用状況の経過観察に至るまでの業務に関わる、確固たる薬(やく)の倫理が求められる。


薬剤師が人々の信頼に応え、保健・医療の向上及び福祉の増進を通じて社会に対する責任を全うするために、薬剤師と国民、医療・介護関係 者及び社会との関係を明示し、ここに薬剤師行動規範を制定する。


1.任務

薬剤師は、個人の生命、尊厳及び権利を尊重し、医薬品の供給その他薬事衛生業務を適切につかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって人々の健康な生活を確保するものとする。


2.最善努力義務

薬剤師は、常に自らを律し、良心と他者及び社会への愛情をもって保健・医療の向上及び福祉の増進に努め、人々の利益のため職能の最善を尽くす。


3.法令等の遵守

薬剤師は、薬剤師法その他関連法令等を正しく理解するとともに、これらを遵守して職務を遂行する。


4.品位及び信用の維持と向上

薬剤師は、常に品位と信用を維持し、更に高めるように努め、その職務遂行にあたって、これを損なう行為及び信義にもとる行為をしない。


5.守秘義務

薬剤師は、職務上知り得た患者等の情報を適正に管理し、正当な理由なく漏洩し、又は利用してはならない。


6.患者の自己決定権の尊重

薬剤師は、患者の尊厳と自主性に敬意を払うことによって、その知る権利及び自己決定の権利を尊重して、これを支援する。


7.差別の排除

薬剤師は、人種、ジェンダー、職業、地位、思想・信条及び宗教等によって個人を差別せず、職能倫理と科学的根拠に基づき公正に対応する。


8.生涯研鑽

薬剤師は、生涯にわたり知識と技能の水準を維持及び向上するよう研鑽するとともに、先人の業績に敬意を払い、また後進の育成に努める。


9.学術発展への寄与

薬剤師は、研究や職能の実践を通じて、専門的知識、技術及び社会知の創生と進歩に尽くし、薬学の発展に寄与する。


10.職能の基準の継続的な実践と向上

薬剤師は、薬剤師が果たすべき業務の職能基準を科学的原則や社会制度に基づいて定め、実践、管理、教育及び研究等を通じてその向上を図る。


11.多職種間の連携と協働

薬剤師は、広範にわたる業務を担う薬剤師間の相互協調に努めるとともに、他の医療・介護関係者等と連携、協働して社会に貢献する。


12.医薬品の品質、有効性及び安全性等の確保

薬剤師は、医薬品の創製から、供給、適正な使用及びその使用状況の経過観察に至るまで常に医薬品の品質、有効性及び安全性の確保に努め、また医薬品が適正に使用されるよう、患者等に正確かつ十分な情報提供及び指導を行う。


13.医療及び介護提供体制への貢献

薬剤師は、予防、医療及び介護の各局面において、薬剤師の職能を十分に発揮し、地域や社会が求める医療及び介護提供体制の適正な推進に貢献する。


14.国民の主体的な健康管理への支援

薬剤師は、国民が自分自身の健康に責任を持ち、個人の意思又は判断のもとに健康を維持、管理するセルフケアを積極的に支援する。


15.医療資源の公正な配分

薬剤師は、利用可能な医療資源に限りがあることや公正性の原則を常に考慮し、個人及び社会に最良の医療を提供する。

薬剤師の代表的業務

 薬剤師の最も代表的な業務は調剤です。「調剤」の定義としては、大正6年3月19日の大審院(現在の最高裁判所に相当)判決で

「一定ノ処方ニ従ヒテ一種以上ノ薬品ヲ配合シ若クハ一種ノ薬品ヲ使用シテ特定ノ分量ニ従ヒ特定ノ用途ニ適合スル如ク特定人ノ特定ノ疾病ニ対スル薬剤ヲ調製スルコト」


とされています。しかし、現在では、医師の処方せんどおりに薬を正確かつ迅速に調製するだけでは十分とはいえません。薬の有効性、安全性を確保して適正な使用を推進するために、処方された薬に関する副作用や併用している薬との相互作用などについて、患者の体質やアレルギー歴、これまでの服薬状況等をまとめた記録(薬剤服用歴の記録)と照合したり、患者との対話で疑問点があれば処方医に照会したうえで調剤することが必要となっています。調剤した薬はそのままでは単なる物ですので、そのものが薬としてが適切に服用されるためには、個々の患者に合わせた服薬指導を行わなければなりません。また、処方医にも必要な情報を提供することが求められるようになってきており、こうした業務を遂行するに当たって、薬に関する最新情報の収集と整理も重要な業務となっています。
また、最近では、病院勤務薬剤師の場合、薬剤部門内での調剤業務に加えて、医師が適切な投与量を判断するために、投与している薬の成分について血液中の濃度を測定したり、医師や他の医療スタッフと供に入院患者の病床に赴き、薬剤師が直接患者に、使用している薬についての服薬指導や注射薬の管理などを行う臨床活動も活発になっています。町の薬局でも、薬局の調剤室内での調剤業務に加えて、寝たきり老人など在宅患者の家を訪問し服薬指導や薬剤管理指導などを行う在宅医療業務も増えています。 

薬剤師の職種と動向

薬剤師の資格を有している人が働く職場は、薬局や医療機関での調剤業務、製薬企業での医薬品等の研究開発・製造、流通、販売、行政機関における許認可・監視指導・試験検査、教育機関など多岐にわたっています。

令和4年12月31日現在における全国の届出薬剤師数は323,690人で、薬局の従事者が190,735人(総数の58.9%)、病院・診療所の従事者は62,463人(総数の19.3%)となっています。
ちなみに同日現在の全国の届出医師数は、343,275人です。なお、厚生労働省ホームページに、「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」が掲載されています。

薬剤師になるには

薬剤師になるためには、薬剤師国家試験に合格しなければなりません。受験資格は薬剤師法によって6年制の大学で薬学に関する正規の課程を卒業した人に限定されているので、薬学を勉強できる大学に入学し、6年間勉強して卒業しましょう。また、薬学部の6年制過程では病院と薬局でおよそ5ヶ月間の病院薬局実務実習が行われています。


薬剤師法 薬剤師国家試験の受験資格

  1. 学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)において、薬学の正規の課程を修めて卒業した者(薬科学ではない。)薬学の正規の課程は、2005年以前に入学した者は4年制、2006年以降に入学した者は6年制である。
  2. 外国の薬学校を卒業し、又は外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生労働大臣が1.に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有すると認定した者
  3. 学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)において、薬科学の正規の課程を修めて卒業した者で、以下の条件を満たした者これは平成29年度までの新4年制課程入学者への経過措置であり、全ての条件を入学後12年以内に満たす必要がある。
  • 大学院薬科学研究科修士又は博士課程を修了すること
  • 医療薬学に係わる科目の単位その他6年制との差分となる講義・実習単位の取得(薬局病院実務実習には専念義務有)
  • 厚生労働大臣の個別認定を受けること

薬剤師国家試験は、毎年3月に2日間の日程で実施されます。大学を卒業してこの試験に合格しないといけません。

薬剤師法第3条 薬剤師の免許は、薬剤師国家試験に合格した者に対して与える。 薬剤師法第4条 絶対欠格条項未成年者、成年被後見人又は被保佐人には免許を与えない。ただし視覚、精神機能の障害者の方は免許を申請するときに卒前に実務実習を終了したことが確認できる書類が必要です。

薬剤師国家試験に合格したら、免許の申請をして薬剤師名簿に登録されると薬剤師免許証が交付されます。

薬剤師法第7条 登録免許は、薬剤師名簿に登録することによって行う。

薬剤師の歩みと展望


「薬剤師」の名称が法令上明文化されたのは、西欧の医学・薬学制度の導入が図られた明治時代のことですが、その際に目的とされた、医師は診療に専念し、投薬については処方せんを発行し、その処方せんに基づく調剤は薬剤師が担当するという医薬分業制度はなかなか普及しませんでした。このため、薬剤師の主たる業務である調剤は、病院勤務薬剤師が担当する他は、町の薬局では少数の薬局で僅かに実績がある程度で、このような時代が昭和40年代まで長く続きました。
昭和36年に、医療保険が全国的に普及して国民皆保険が実現し、高度成長と相まって医療保険制度と医療提供体制が拡充されることとなりましたが、これに伴い病院診療所勤務の薬剤師は、昭和35年の9,575人から、平成30年の9,956人へと増加しています。昭和49年に医師の処方せん発行について医療保険上の評価が大幅にアップし、医薬分業が著明に進展しはじめました。さらに、ここ数年来の院外処方せん発行の急増を受けて薬局従事薬剤師も大幅な増加傾向を示しており、平成30年は180,415人となっています。
ちなみに、令和2年度における院外処方せんの発行枚数は7億枚を超えています。これは、薬が投与される外来患者のうち約2人に1人は、院外処方せんにより町の薬局で調剤してもらっていることになります。
病院勤務薬剤師の業務は入院患者に重点を移し、外来患者の薬は院外処方せんの発行に切り替えられる傾向が今後も続くと見込まれることや、本格的な高齢社会の到来を迎えて、地域社会の中での薬局薬剤師の業務として、処方せん調剤を通じた医療の分野だけではなく、保健、福祉、介護の分野までをも担当することが期待されていることから、薬局に従事する薬剤師の需要は更に増大しています。
薬学教育では、最近まで医薬品の研究・開発や分析等創薬に関する講義が主として行われ、医療に関する教育が充分とはいい難く、もっと充実すべきと指摘されてきました。しかし、患者志向の薬剤師業務が拡充する中で、薬学教育でも、医療薬学に対する取り組みや卒業前の実務実習の充実強化が行われつつあります。
また、社会的な問題となっているHIV薬害事故等を契機として、厚生省は薬の安全性確保対策を整備、強化することとなり、薬事法・薬剤師法の改正が平成8年6月に行われました。この改正により平成9年4月からは、薬剤師は調剤した薬剤について適正な使用のために必要な情報を患者に提供しなければならないことが義務づけられることになりました。
今後とも、高齢化社会の到来の中で薬の適正使用への貢献を中心とした役割が薬剤師に求められています。


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