質疑応答
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福岡県薬会報に掲載している「情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介」事例です。
回答はその時点での情報による回答であり、また紹介した事例が、すべての患者さんに当てはまるものではないことにご留意ください。
県民の皆様は、ご自身の薬について分からなくなったなどの場合には、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。相談しやすい“かかりつけ薬局”を持っておくのがよいでしょう。
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肺MAC症の3剤併用化学療法で、間欠投与することはあるか?(薬局)
疾病・治療法 |
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年月 | 2022年10月 |
非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)は、結核菌群とらい菌以外の抗酸菌の総称で、本邦の肺NTM症の9割がMycobacterium aviumとM. intracellulareの2菌種(一括してMycobacterium avium complex:MAC)によるもので、肺MAC症と呼ばれている。肺MAC症には、線維空洞(FC)型と結節・気管支拡張(NB)型がある。
(標準治療)
リファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシンの3剤併用連日療法で、必要に応じてストレプトマイシンあるいはカナマイシンの筋注を追加する(表)。空洞のないNB型で、週3回の間欠投与が行われることがある(重症は除く)。
投与期間は、英国胸部学会のガイドラインでは2年間の薬剤投与を推奨し、「排菌陰性化後約1年」に加え、半年から1年程度治療期間を延長することが日常診療で行われている。しかし、副作用を心配して自己判断で中断する患者もおり、副作用軽減対策として、米国では週3回の間欠療法が推奨されている。
(間欠投与の効果)
米国と韓国での後ろ向き研究では、間欠療法と連日療法の間で排菌陰性化率に統計学的有意差が認められないこと、間欠療法では明らかに副作用が少なくアドヒアランスが向上することが報告されている。さらに韓国において、初回治療が成功した肺MAC症の再発に対する連日療法と間欠療法の排菌陰性化率にも有意差を認めないことが報告された。日本では2022年2月現在、間欠療法と連日療法のランダム化前向き比較試験が進行中である。
表 肺MAC症の化学療法
画像所見による病型 | 治療レジメン |
---|---|
空洞のない結節・気管支拡張(NB)型 (重症は除く) |
A法またはB法のいずれかを用いる A法:連日投与 ・クラリスロマイシン800㎎またはアジスロマイシン250㎎ ・エタンブトール 10~15㎎/㎏(750㎎まで) ・リファンピシン 10㎎/㎏(600㎎まで) B法:週3日投与 ・クラリスロマイシン1,000㎎またはアジスロマイシン500㎎ ・エタンブトール 20~25 ㎎/㎏(1,000㎎まで) ・リファンピシン 450~600㎎ |
・線維空洞(FC)型 ・空洞のある結節・気 管支拡張(NB)型 ・重症の結節・気管支 拡張(NB)型 |
A法+治療初期(3~6ヶ月)に以下を併用する ・ストレプトマイシン15㎎/㎏以下(1,000㎎まで)週2~3回筋注 あるいは ・アミカシン15㎎/㎏連日または15~25㎎/㎏週2~3回点滴、 TDMで調節 |
難治例 (標準的な他剤併用療法を6ヶ月以上実施しても細菌学的効果が不十分な場合) |
A法+以下のいずれかを併用する |
長谷川直樹:医学のあゆみ280(6),707,2022.2.5.より引用