質疑応答
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福岡県薬会報に掲載している「情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介」事例です。
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過活動膀胱治療薬における経口抗コリン薬の、抗コリン性副作用の違いは?(薬局)
薬効・薬理、体内動態 |
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年月 | 2023年7月 |
膀胱体部には、豊富なムスカリン(M)受容体があり、排尿時には副交感神経由来のコリン作動性神経から放出されたアセチルコリンが膀胱排尿筋のM受容体を介して膀胱収縮を起こす。抗コリン薬は排尿筋の不随意収縮(排尿筋過活動)を抑制し、膀胱容量を増やすため、過活動膀胱(OAB)に古くから使用され有効性は確率されているが、副作用として口内乾燥、羞明、便秘、排尿困難などがある。
抗コリン薬の効果と副作用に関係する因子として、M受容体のサブタイプ(M1~M5)選択性、代謝産物の活性などがある(表)。膀胱平滑筋にはM2、M3受容体が分布し、主に膀胱の収縮に関与しているのはM3受容体である。M3受容体は唾液分泌や腸管収縮にも関与し、抗コリン薬の副作用のほとんどは、M3受容体拮抗薬の副作用である。従って、M3受容体への親和性が高く、かつ膀胱への選択性が高い薬剤が望ましい。各薬剤の組織選択性については、以下の報告がある。
・膀胱収縮に対する阻害効果の強さは、イミダフェナシン>トルテロジン>オキシブチニン>プロピベリンであり、唾液分泌に対する阻害効果の強さは、イミダフェナシン>オキシブチニン>プロピベリン>トルテロジンである。
・膀胱容量を指標とした選択性では、イミダフェナシン、トルテロジン、ソリフェナシンの相対的な膀胱選択性は、唾液腺よりも15倍、2.5倍、1.7倍高く、結腸よりも150倍、9.2倍、1.9倍高かった。
また、M1受容体は中枢にも作用し、記憶力、認知能力にも影響する。オキシブチニンは血液脳関門を通過しやすく、M1拮抗作用も高いため、中枢性副作用に注意が必要である。経口オキシブチニンの肝代謝物N-desethyloxybutynin(DEO)はオキシブチニンと同様の薬理作用を有し、効果および副作用発現にも関与するが、経皮吸収型のオキシブチニン製剤は、初回通過効果によるDEOへの代謝を回避でき、抗コリン性の副作用軽減が期待できる。
表 OAB治療で使用する主な経口抗コリン薬
薬剤名 | ソリフェナシン | トルテロジン | プロピベリン | オキシブチニン* | イミダフェナシン |
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剤形 | 錠剤・OD錠 | カプセル剤 | 錠剤・細粒 | 錠剤 | 錠剤・OD錠 |
用法・ 用量 |
5~10mg 1日1回 |
4mg 1日1回 |
1回20mg 1日1~2回 |
1回2~3mg |
1回0.1~0.2mg 1日2回 |
M受容体サブタイプ選択性 |
M3>M1>M2 | 選択性なし | 選択性なし (Ca拮抗作用) |
M3>M1>M2 (平滑筋弛緩作用) |
M3≧ M1>M2 |
代謝物における 活性 |
あり | あり | あり | あり | なし |
山西友典ら:薬局72(7),2607,2021より引用改変
*経口オキシブチニン製剤の効能・効果は、「神経因性膀胱、不安定膀胱(無抑制収縮を伴う過緊張性膀胱状態)」だが、OABは効能・効果に対応する標準病名として判断されている。