質疑応答
質疑・応答をご覧になる方へ
福岡県薬会報に掲載している「情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介」事例です。
回答はその時点での情報による回答であり、また紹介した事例が、すべての患者さんに当てはまるものではないことにご留意ください。
県民の皆様は、ご自身の薬について分からなくなったなどの場合には、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。相談しやすい“かかりつけ薬局”を持っておくのがよいでしょう。
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グルコース6リン酸脱水素酵(G6PD)欠損症患者に使用できない薬剤は何か?(薬局)
副作用、中毒、妊婦・授乳婦 |
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年月 | 2022年6月 |
グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PD)は、五炭糖(ペントース)リン酸回路において、NADPをNADPHへ還元し、還元型グルタチオン量を一定に保つことによって赤血球内の蛋白を酸化から防御するため、赤血球膜細胞の完全性を保つ、還元反応に必要な酵素である。
G6PD欠損症は最も一般的な赤血球代謝疾患で、赤血球が酸化ストレスを受けやすくなる。発熱、急性のウイルスまたは細菌感染、ヘモグロビンおよび赤血球膜の酸化を引き起こす薬剤の曝露等の酸化ストレスを受けると、赤血球の溶血を起こす。G6PD欠損症患者に禁忌の薬剤には、次の4つがある。
一般名(主な商品名) | 禁忌の理由 |
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スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤 (バクタ配合錠・ミニ配合錠・顆粒) |
サルファ剤は酸化能を有するため、G6PD欠損症患者では、ヘモグロビンや赤血球膜の酸化を引き起こし、溶血を発現する可能性がある。 |
プリマキンリン塩酸塩 (プリマキン錠15mg「サノフィ」) |
本剤投与により、活性酸素による酸化的ストレスにより赤血球細胞膜が障害される。G6PD欠損症患者では、この活性酸素を除去しきれないため、赤血球が損傷され、血液毒性(メトヘモグロビン血症、溶血等)を起こす可能性がある。 |
メチルチオニニウム塩化物水和物 (チレンブルー静注50mg「第一三共」) |
本剤は生体内で、NADPH存在下でNADPH還元酵素によりロイコメチレンブルーに還元され、ロイコメチレンブルーがメトヘモグロビンをヘモグロビンに還元することにより、メトヘモグロビン血症を改善する。NADPHはG6PDを介して、ペントースリン酸経路から産生されるため、G6PD欠損症患者では本剤は効果を示さない。そのため、本剤が正常ヘモグロビンを直接酸化し、メトヘモグロビン血症の増悪および溶血を起こす可能性がある。 |
ラスブリカーゼ(遺伝子組換え) (ラスリテック点滴静注用) |
本剤はがん化学療法に伴う高尿酸血症に使用され、尿酸を酸化してアラントインと過酸化水素に分解することで、血中尿酸値を低下させる。G6PD欠損症患者では、過酸化水素による赤血球の酸化を防ぎきれずに、溶血性貧血を起こす可能性がある。 |