質疑応答
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福岡県薬会報に掲載している「情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介」事例です。
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抗うつ薬S-RIMのボルチオキセチンの特徴は?(一般)
副作用、中毒、妊婦・授乳婦 |
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年月 | 2024年9月 |
ボルチオキセチンはセロトニン5-HT3、5-HT7および5-HT1D受容体アンタゴニスト作用、5-HT1B 受容体部分アゴニスト作用、5-HT1A受容体アゴニスト作用およびセロトニントランスポーター(SERT)阻害作用を有している。複数の5-HT受容体への作用とSERT阻害作用を介して、セロトニン系、ノルアドレナリン系およびドパミン系等の複数の神経伝達系に関与することにより、セロトニンだけでなく、ノルアドレナリン、ドパミン、アセチルコリン、ヒスタミンの遊離を調節する。このことから、ボルチオキセチンはセロトニン再取り込み阻害作用・セロトニン受容体調節作用を有する抗うつ薬として、S-RIM(serotonin reuptake inhibitor and serotonin modulator)と呼ばれる。
ボルチオキセチンの各受容体への作用とその効果を表1に、新規抗うつ薬における副作用の発現頻度を表2に示す。
表1 ボルチオキセチンが作用するセロトニントランスポーターと受容体の効果
標的 | 作用 | 推定される効果 | |
トランス ポーター |
セロトニントランスポーター | 阻害作用 | ・抗うつ作用 ・抗不安作用 |
受容体 |
セロトニン5-HT3受容体 | アンタゴニスト | ・制吐作用 ・抗うつ・抗不安作用の可能性 ・記憶・学習への効果の可能性 |
セロトニン5-HT1A受容体 | アゴニスト | ・抗うつ作用 ・抗不安作用 ・性機能障害の副作用改善の可能性 |
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セロトニン5-HT7受容体 | アンタゴニスト | ・記憶・学習への効果の可能性 | |
セロトニン5-HT1B受容体 | 部分アゴニスト |
・モノアミン、アセチルコリン、グルタミン酸、GABAの放出調整 (臨床的影響は不明) |
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セロトニン5-HT1D受容体 | アンタゴニスト |
(薬局 75(4),81,2024.より引用)
表2 新規抗うつ薬における副作用の発現頻度
分類 | 一般名 |
悪 |
便 |
下 |
口 |
頭 |
め |
傾 |
不 |
発 |
食 |
体 |
男 |
SSRI | エスシタロプラム | + | + | ||||||||||
フルボキサミン | ++ | + | + | + | + | + |
+ |
+ | |||||
パロキセチン | + | + | + | + | + | + | + | + | + | + | |||
セルトラリン | + | + | + | + | + | + | + | + | |||||
SNRI | デュロキセチン | + | + | + | + | + | |||||||
ミルナシプラン | + | + | |||||||||||
ベンラファキシン | ++ | + | + | + | + | + | + | + | |||||
NaSSA | ミルタザピン | + | + | ++ | + | + | |||||||
S-RIM | ボルチオキセチン* | + |
記載なし:0~9% +:10~29% ++:30%以上 *:10mg投与時
SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬
SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
NaSSA:ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬
S-RIM:セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬
(Kennedy SH, et al: Can J Psychiatry 61(9),540,2016.より一部変更し作成)