質疑応答
質疑・応答をご覧になる方へ
福岡県薬会報に掲載している「情報センターに寄せられた質疑・応答の紹介」事例です。
回答はその時点での情報による回答であり、また紹介した事例が、すべての患者さんに当てはまるものではないことにご留意ください。
県民の皆様は、ご自身の薬について分からなくなったなどの場合には、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。相談しやすい“かかりつけ薬局”を持っておくのがよいでしょう。
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TPN輸液を薬局で調製した場合、細菌類は調製後どれぐらいで増殖するか?(薬局)
調製法等 |
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年月 | 2024年9月 |
TPN輸液は、薬液を吸い上げた後にワンショットで静注するのと比較し、調製してから約1日かけて投与するため、時間経過と共に輸液中で細菌や真菌などの微生物が増殖してしまう可能性があり、輸液調製時の汚染防止に留意する必要がある。注射剤の汚染は、調製時の環境、調製から投与までの時間、保管環境が関係しており、調製後の汚染に関する明確な時間的根拠はない。
病院感染原因菌の増殖に及ぼす各輸液の影響について、以下の報告がある。
(使用輸液)電解質輸液:ラクテック(LA)、ソリタT3号(SO)、アミノ酸輸液:ピーエヌツイン2号(PN)、アミノフリード(AM)、マックアミン(MA)、脂肪乳剤配合アミノ酸輸液:ミキシッドL(MX)、糖液:50%ブドウ糖液(GL)
(対象菌株)E.coil、S.marcescens、P.aeruginosa、S.aureus、S.epidernidis
(方法)各輸液100mLにそれぞれの菌液1mLを加え(最終菌液:3×102cfu/mL)、20℃に保存し、添加直後、6、24、48時間後に各0.1mLをSCD寒天培地に接種し、35℃、24時間培養後のコロニー数(cfu/mL)を計測した。
(結果)ほとんどの菌種で6時間後の菌数の増加は認められなかったが、E.coil(大腸菌)やS. marcescens(セラチア菌)で24時間後には増加が認められた。P.aeruginosa(緑膿菌)はMXのみで6時間までに増加した。GLはpH5.0、浸透圧12.0であることから、通常の細菌では増殖不可能であり、6時間以降にはいずれの細菌も検出されなかった。
大腸菌とセラチア菌の増殖変化のみを表に示す。
(考察)輸液にビタミン剤や微量元素などを混入する際、消毒などを十分に行わず細菌が混入した場合、アミノ酸および脂肪乳剤が配合された輸液では経時的に細菌が増殖する可能性が大きい。細菌の増殖には輸液の組成、pH、浸透圧に加え、細菌種の性質も関与すると考えられる。
表 各輸液にE.coil または S.marcescens を添加したときの増殖変化
輸液 | E.coil (大腸菌) | S.marcescens (セラチア菌) | ||||
6h | 24h | 48h | 6h | 24h | 48h | |
LA | - | 3.5×103 | 6.9×104 | - | 1.1×104 | - |
SO | - | - | 3.6×104 | - | 1.3×104 | 1.3×105 |
PN | - | 1.1×103 | ↓ | - | - | - |
AM | - | 1.3×105 | 4.9×108 | - | 1.2×104 | 1.7×105 |
MA | - | 1.6×104 | ↑ | - | 1.0×103 | - |
MX | - | 7.9×104 | 2.1×105 | - | 9.8×103 | 1.3×107 |
GL | ↓ | - | - | ↓ | - | - |
-:変化なし ↑:前の時間帯より増加 ↓:前の時間帯より減少 (単位:cfu/mL)
(白石 正ら:環境感染 22(3), 165, 2007. の実験データより作成)